鶴瓶さんと映画デート

就職活動中は
大変な事ばかりだ
辛いこと嫌なことも多い

でも
そんな日々の中にも
もちろん

就職浪人して良かったと思える事もある

これは
人生の中でも
とても思い出深い出来事の話

僕は
学生時代
ラジオADバイトをしていた

大阪の毎日放送という放送局の
ラジオ部
通称「MBSラジオ」

ケンコバさん友近さんの
「ゴチャまぜ」という番組をはじめ

U.K.さんという
関西で有名なDJさんのラジオや
本当にたくさんの番組を担当させてもらった

就職浪人が決まり
もう一年学生をやる事になった時

「こたろー、もう一つこの番組ついてよ」と
誘ってもらった番組があった

それが
「笑福亭鶴瓶のMBSヤングタウン」

ラジオ好きなら誰もが知る
伝説のラジオ番組
「ヤンタン」である

担当させてもらうだけで
むちゃくちゃ
嬉しかった

鶴瓶さんが
毎週、ラジオのCM中
スタッフを楽しませる為だけに話してくれる
「電波に乗せられない話」
がとてつもなくおもしろく
楽しみで仕方なかった

受けても受けても受からない
「地獄の就職活動」

そんか地獄の日々が続くなか
その瞬間だけは
辛い思いを忘れることができた


僕にとって
メンタル回復剤なひと時

それが
笑福亭鶴瓶の
MBSヤングタウンの収録だった

そんな日々の中で
僕の人生の中でもベスト3に入る
「思い出深い時間」が
ある日突然やってきたのだ

ラジオ収録日

僕は収録前に
鶴瓶師匠の映画「おとうと」を
鑑賞しようと
大阪の梅田の映画館で
チケットを並んでいた

すると
並んだ列の「前の男性の靴」が
ふと目が入った

むちゃくちゃカッコいいナイキだった

どこかで見たことあるな？

と思っていたら

あ、鶴瓶師匠の靴と同じデザインだ！

すぐ思い出した

こんなおしゃれなナイキを
履いてるのは
どんな人なんだろう？
と目線をゆっくり上にやると、、、

なんと

鶴瓶師匠ご本人だった

僕は思わず「わっ、師匠！」

と言ってしまった

師匠も
すかさず振り返り

「おっ！おまえか！何してんねん？」

「いや、師匠の映画観ようと思いまして」

「え？あ、ホンマか！ありがとうな！
　よしゃ、ほな、一緒に観よか」

「奇跡」が起きた

まさかのまさか

映画の中に出ている主演の方と
その映画を一緒に観るなんて

奇跡以外の何物でも無い

師匠は続けた
「お腹すいてないか？一緒にホットドッグ食べよか？」

「は、はい！」

師匠に
ドリンクとホットドッグを奢ってもらい
映画館へ

とてつもない高揚感と緊張感が
ぐちゃぐちゃになりながら
映画は始まった

上映中

師匠は
思い出深いシーンになると

僕の耳元でヒソヒソ
話しかけてくれる

「吉永小百合さん、むっちゃキレイやろ？」
「ここのシーンはな、吉永さんが、俺にこんな事言うてくれてな、、」

とシーン解説＆裏話を
出演者ご本人がしてくれた

こんな贅沢な映画鑑賞は無い

今まで味わった事のないタイプの
超極上の幸せな時間だった

ゲー吐くような
辛いツラい就活の毎日に

いきなり現れた
「極上オアシスタイム」

僕にとって
一生の思い出になった

あの日
師匠と一緒に食べた
ホットドッグは

人生で食べたホットドッグの中で
ぶっちぎり
1番美味しいホットドッグだった

辛い日々を
がんばってるヤツを
神様はちゃんと見ててくれるもんなんだ

と思った

てか、
この僕の隣で
ニコニコ笑ってはる人こそが
「神様そのもの」なんじゃないか

とさえ思った