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【私の活動領域④】中小製造業支援

中小製造業を研究した2年間

2013年9月に入学した早稲田大学大学院商学研究科では、中小企業論の研究者である鵜飼信一先生の研究室に入りました。大学院に入る一番の動機は、商品企画業務で学んだことをアカデミックな視点で棚卸することだったので、首都圏の経営学系や商学系の大学院を色々と探索していましたが、中小企業診断士として活動するにあたり、中小企業を研究している研究室があればと思い探している中で、大田区や墨田区、川崎市など、首都圏の中小製造業の集積エリアを研究対象としている鵜飼先生を見つけ、受験することを決めました。

先生に初めてお会いしたのは大学院の面接試験でしたが、中小企業とは何の関係も持たない電機メーカーの社員がいきなり現れて、驚いている様子が面接で話している間にも感じられたのが、今でも印象に残っていますが、受け入れて頂いたことには本当に感謝しています。

大学院時代は、先生の大学の授業、ゼミ生の卒業研究活動にも参加して、沢山の優秀な町工場の現場を見学し、優れた経営者の話沢山聞くことができました。先生は、現場の様子や経営者の言葉を解釈するというよりは、見聴きすることから何かを感じてほしい、というスタンスだったので、訪問後にはメールなどですぐに感想や考察を送り、さらに意見をもらうようにしていました。メーカー勤務していたからゆえの私の視点を大変尊重して頂きながら、様々な角度からのディスカッションがあり、学びを頂きました。

鵜飼先生の授業では毎年、都内の多くの優秀な中小製造業の経営者を読んで講話をして頂いていましたが、退官のため2018年度が最終年度でした。そこで、すでに大学院を卒業して3年近く経っていましたが、授業にお伺いして講話を聴き、講義録を残しました。著名な経営者も多く、4年経った現在、さらに実績を残していらっしゃる方々ばかりです。

中小製造業の事業計画策定を支援する

大学院では、「中小製造業の自社製品開発」をテーマとした修士論文を制作しました。現在の事業においては、新規製品開発のみならず、新規事業開発まで範囲を広げ、中小製造業の支援を行っています。新規事業開発の支援においては、単に事業開発のアイデアを出す、ということに留まらず、事業計画の策定までの支援に努めています。

中小製造業において、事業計画を作成している事業者も少なくありません。事業計画を立てることを自分の責務と考えている経営者の方もいます。一方、そもそも事業計画の必要性を感じず、作り方が分からないという経営者の方もいます。

事業計画がなければ事業が継続できない、ということは必ずしもありません。ただし、計画を立てることによって、経営者としてやるべきことがより明確になったり、従業員に共有すれば従業員のモチベーションの向上につながるかもしれません(適したやり方で行う必要があります)。特に、新規事業を進めるうえでは、既存事業と同じ様な進め方で成果が出せるとは限らず、「道標」として事業計画を持つことは、大変意義があります。

「経営革新計画」の策定を支援する

新規事業の計画に重点を置いて、全社の事業計画を策定する上で有効な制度が「経営革新計画の申請」です。

経営革新とは「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」とされ、新事業活動に取り組む中小企業・小規模事業者の方が、「中小企業等経営強化法」に基づき「経営革新計画」を作成し、都道府県知事の承認するものです。計画が承認されると、計画期間中、政府系金融機関による低利融資や信用保証の特例など幅広い支援措置を利用することが可能となります。

そして、新事業活動は
1.新商品の開発又は生産
2.新役務の開発又は提供
3.商品の新たな生産又は販売の方式の導入
4.役務の新たな提供の方式の導入
5.技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動
のいずれかに当てはまるものとなります。

経営革新計画では、新事業活動の定義にあてはまるように、事業の「新しさ」を明確にしていく必要がありますが、この取り組みが、競合する事業者に対する差別化ポイントを洗い出し、自社の優位性を明確にしていくことにつながり、とても有意義であると思います。

ちなみに、新事業活動の類型1~4は、経済学者シュンペーターが「経済発展の原理」(1934年)において示した「イノベーション」の定義を参照しているものと思われます。
① 新しい財貨、新しい品質の財貨の生産
② 当該産業部門において実際上 未知な生産方法の導入
③ 当該国の当該産業部門が従来参加していなかった市場の開拓
④ 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
(⑤ 新しい組織の実現による独占的地位の形成、あるいは独占の打破)

優れた経営者からの学びを伝えたい

大学院時代以降、多くの優れた経営者にお話を伺う機会が得られていることは私にとって本当に大きな財産であり、そういった機会での学びを、今後の中小製造業支援を通じて伝えていきたいと考えています。

優れた経営者は、新しい取り組みにどのような姿勢で挑むのか。経営に迷ったとき、何を拠り所に意思決定するのか。自分の会社の未来をどのように描くのか。経営革新計画が求める「イノベーション」を、どのように成し遂げたのか。経営学的なセオリーが伝えることが適切な場合もありますが、優れた経営者の歩み方や言動によって、新たなヒントを提供できることもあります。過去の講演のメモや自分の論文を定期的に読み返し、学びを確認しています。



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