見出し画像

町工場しくじり先生、失敗から学んだブランディングの大切さ。(カタログ制作編)

初めまして、株式会社巽クレアティフの高柳 実と申します。私は和装バッグ製造工房のアトツギとして2010年に家業に入り、紆余曲折を経て今回アップサイクルブランド『TATSUMI』を2022年10月6日、マクアケさんにてローンチするに至りました。

OEM、所謂下請け製造していなかった町工場が、新たなブランドを生み出すということは、正直物凄くハードルが高く、当初は何をすればよいか全く分かりませんでした。『こんなに遠回りしなくても良かったな』今思えば失敗エピソードだらけです。そこで今回、noteにて失敗~気付きを得てブランディングに目覚めるまでを時系列で紹介していこうと思います。これから自社ブランド・自社商品の立ち上げをされる方々にとって、何かの参考になれば幸いです。

そもそもの背景、OEMと言う低収益構造そして後継者不足

自社商品作りを始めた背景として、和装小物業界における下請け企業の低収益構造があります。和装小物業界は流通経路が長く、伝言ゲームのような構造になっています。昔教室でやりましたよね伝言ゲーム。あの先頭がエンドユーザーさんで最後尾が職人さんだとイメージしてください。

ユーザーさんの支払ったお金は各プレーヤーに落ちていき、職人さんの手元に来る頃には微々たるお金しか残っておりません。個人事業主として働かれている職人さんの手取りは夫婦で月収25万円以下、休みは日曜日のみ。平均年齢70歳オーバー(2022年現在)これが現在の和装小物業界を取り巻く現実です。

高齢化が進む和装業界

『このままでは後継者がいなくなっていまう』私はこの状況を変えるためにも、高収益な新たな収入源を作りたいと考え、新事業を考えるに至りました。

力技で実現した模倣カタログ制作

弊社の前身(個人事業 BARONESS)のカタログ
デザインのモチーフとして何かのカタログをデザイナーさんに渡しました

『個人の方からOEM(セミオーダー)を取れば良いんだ』
私がまず最初に取り組んだのは、その為の自社カタログ制作でした。今思えば方向性は正解だったのですが、当時はカタログだけ作って頓挫しました。

それは『どのように販路を作って行くか』が全く見えていなかったからです。視界に入っているエンドユーザーさんは既に競合のサービスを利用されてますし、そもそも競合の二番煎じなので差別化の要素もありませんでした。また、下請けの現場作業をしながら新事業を回していく余裕も覚悟もオペレーションも当時の私にはなく、そこでも行き詰まりました。

その辺はまた別の話になるので後日別の記事としてまとめるとして、カタログ制作は以下の手順で取り組みました。

  1. 競合他社のカタログをベンチマーク

  2. 既存のロゴを活用し、残りのデザインは学生に依頼

  3. 知り合いの着付け教室の先生に持ちかけモデルになってもらう

  4. 知り合いのTVカメラマンにカメラを依頼・スタッフは大学の友人

  5. カタログの印刷はネットプリントに自分でデータ入稿

1.の競合他社のベンチーマークに関して、私は和装業界で既に個人向けに誂え(セミオーダー)をされている会社さんのカタログを参考にしました。『このカタログをちょっとお洒落にすれば売れるのではないか』当時はほんとそれくらいのことしか考えておらず、今思うとカタログをディレクションして作ること自体に興味が湧いていたような気がします(苦笑)

2.の既存のロゴに関しては、家業に戻った頃にフリーデザイナーさんに依頼して作って頂いたロゴがありました。それを活用し、カラーイメージを活かしながら、他のデザインは学生さんに依頼して作って頂くという作戦です。

当時の私がよく使っていた手法が『産学共同』。自社のデザインツールを学生さんに格安で作って頂き、学生さんはその成果物を自身のポートフォリオとして就職活動で活かすというものでした。この時は、前職の同僚でもあり、デザイナーになると一念発起して仕事を辞め、大阪市立デザイン研究所に通っていた友人にカタログをデザインして頂きました。

今見ても結構いい感じにデザインされているこのカタログの存在は、後々私がブランディングを確立していく伏線となっていくのですが、それはまた後の会で書こうと思います。

文章の構成は自分で考え執筆しました

3.のモデル撮影に関しては、知り合いの着付け教室の先生にお願いしてモデルさんを出して頂きました。『着付けを習っている方にとってモデルの経験は必ずプラスとなると思います』こんな感じの口説き文句で熱く語った気がします。

ロケは兵庫県の相楽園という和庭園。場所代として5万円かかりましたが、とにかくロケをやってみたいという一心で支払いました(笑)

読者モデル経験者だったこの方は自然と良い表情を出して下さいました

このロケをした際にモデルさんをまとめて下さった先生に聞かれたこと

『生徒さんにどんな着物(振袖・訪問着・留袖 等)着てきてもらったら良いですか?』

『どのバッグにどんな色目で合わせれば良いですか?』

この質問に当時の私は答えられず『何となくでお願いします』と答えたのですが、ブランディングを知った今思うと、これは完全に間違いでした(苦笑)

そして4.のカメラマンに関してですが、友人であるプロカメラマンに頼みました。私は大阪芸術大学放送学科卒だった為、友人に動画のプロカメラマンがいた為です。カメラを快く引き受けてくれた友人は、関西の準キー局で報道カメラマンをしていたプロ。然しながらな今思うと動画と静止画はノウハウが異なる上に、【報道=演出なし・モデル撮影=演出ありき】という畑違いの撮影依頼。無茶振りしてしまったなと反省しています。

特にポージング指導が出来るできるか出来ないかはモデル撮影において大きな違いを生みます。これも後になって知ったことですが、ブランディングから入るモデル撮影は、まず世界観を完全に作り込んで、ポージングも出来るカメラマンさんが入るのが定番なんですよね… とは言え、この撮影会は私に沢山の気付きと反省を与えてくれました。今となっては良い思い出です。

モデルになって下さった皆さん

5.最後にカタログの印刷ですが、ネットプリントに自分で入稿しました。プリントパックというサービスを使い、オンデマンドのカタログ印刷で、20部くらい印刷した記憶があります。印刷代だけなので50Pあるカタログ印刷が3万円もしなかったのではないでしょうか…ちょっと記憶が曖昧ですが何せ当時(2010年)の相場から考えると、超コストパフォマンスだったのを覚えています。

今回のまとめ

  • そもそもパクリから入ってもブランディング出来ない

  • 産学共同は意外と使える

  • ネットプリントに自分で入稿すると格安

  • ロケをするのであれば、まず写真を活用するツールの世界観を決めた上で『どんな雰囲気のモデルさんに・どんな服装をしてもらい・どんなアイテムと合わせる』かをカラーベースまで落とし込んで考えて置く必要がある

  • 素人モデルさんにはこちらからポージングを指示する必要がある

  • 物を作るだけでなく、どのように販路を開拓していくかが重要

・・・この町工場しくじり先生シリーズ、何だかよくわからない滑り出しとなりましたが、無計画にカタログ作ってもダメという教訓と、コストを掛けずに何か作るのであれば産学共同&素人モデルというある意味ノウハウをお届けする内容となりました。

次回以降、まだまだ失敗は続いて行きます。乞うご期待(苦笑)





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?