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足関節捻挫

 「捻挫」といえば足関節捻挫が創造されるくらい認知度の高いケガです。様々なスポーツで最も多い外傷としてあげられ、子供のころを思い出すと誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか?
ポピュラーな外傷ですが過去に捻挫をしたことが、膝や腰の不調につながることも多いので注意が必要です。私が担当しているクライエントにも過去に大きな捻挫をした方が多くいらっしゃいます。

足関節捻挫ってなに?

 過去の捻挫と身体のつながりの前に、まずは足関節捻挫を簡単に紹介させていただきます。以下、日本整形外科学会HPからの抜粋です。


捻挫とは、関節にかかる外力により非生理的運動が生じ、関節を支持している靭帯や関節包が損傷することです。足関節では図1の前距腓靱帯が損傷されることが最も多い病態です。
靭帯の損傷程度によって、捻挫の程度を三つに分けています。
靭帯が伸びる程度の損傷を1度捻挫、靭帯の一部が切れるものを2度捻挫、靭帯が完全に切れるものを3度捻挫と定義しています。

https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprain_of_ankle.html

重症度によって3段階に分かれていますが、1度捻挫で1~2週間湿布対応、2度捻挫で3週~6週間ばあいによってギプス固定、3度捻挫ではギプス固定+松葉づえor手術と大まかに分類されています。


過去の足関節捻挫が悪さをする

 2足歩行をするヒトにおいて足首は唯一地面と接する土台です。東京タワーをひっくり返したようなバランスで立っているヒトにとって、足の裏は面積当たりかかる荷重を支えるのはもちろん、体重の7分の1重量である頭部が上についてるため、揺らさないようにバランスを取らなくてはなりません。歩くたびに頭部が揺れていたら気持ち悪くて歩けません。
 体重を支える基礎としての役割に加え、バランスをとるためのセンサーとしての役割、つちふまずで衝撃を吸収する役割と歩く、走るといった移動に伴う最重要な足、その分ケガもしやすいので多くの方が捻挫の経験を持っています。
 そして痛みはなくなった後も捻挫による足首の機能不全は続いていて、支える力が落ちた人は腰や膝、股関節で足首の分体重を支えることになります。またある人はバランス機能が落ちて、肩を上げ首を固めて頭部のバランスをとります。ある人は腰を反らせて重心を前に移動させます。
 このようにして足首の既往歴が今起きている症状の引き金になることは往々にして起こります。



足関節の機能を回復させるには?

 私たちが最初に大切にしている足関節の機能は「背屈運動が正常にできるか?」という視点です。
リンク先にあるとおり関節の正常可動域は定義されています。これを基準に「固い」や「柔らかい」と表現しており、足関節の背屈については15-25度となっております。

https://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/publiccomment/4_rom_20140612.pdf

日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会より引用

 関節が動きすぎることもハイパーモビリティ、弛緩性といってトラブルになることもあるのですが、足首の背屈においては可動域が低下する問題が8割型ですので、慢性的な足首の対応にはまずは背屈運動を正常化させることが最優先と考えています。
 そして背屈の制限は足のアーチと密接に関わっています。内側にあるアーチの「土踏まず」は有名ですが、小趾のつけ根~踵の前方にある外側アーチ、母趾丘と小趾丘の間にある横アーチの3つのアーチが形成されるためには足首の背屈運動が必須になっております。足のアーチがなくなると天然のスプリングがなくなるので歩行効率が落ちて、歩くのが遅くなります。そしてすぐに疲れます。

日々のセルフケア

まずは鍛えるよりも…整えるためにケアのご紹介

1、脛をほぐす

 脛の筋肉である前脛骨筋は、足首を引き上げる筋肉&歩くときにブレーキになる筋肉です。背屈を阻害する大きな要因になるので日々のケアは大切です。脛前のセルフリリースを3種類お伝えします。
①脛に対するスマッシュ
②脛を内側へ回す
③脛のセルフマッサージ

2、足裏をほぐす

 前述のとおり足の裏は足首と密接に関わっています。そこをほぐすことで足首の背屈機能も変化し改善していきます。動画では下記の3つを紹介しています。
①足裏に対するスマッシュ
②足底筋のストレッチ
③趾のストレッチ

3、最後にエクササイズを紹介

 リリースしたあとは使ってなかった神経に刺激を入れ、血流を上げていきましょう。身体の使っている部分は毛細血管が発達して血流が良くなっています。そして血流は神経による影響を受けています。神経に刺激をいれ使っていない筋を動かすことで機能を取り戻していきましょう。
①グー・チョキ・パー
②ショートフットエクササイズ
③カーフレイズ&トゥレイズ

わたし達ができること-施術方針とエクササイズ-

 優先する施術の方針に痛みのコントロールと足首の正常アライメントによる可動域の獲得が挙げられます。
 痛みは急性の痛み(炎症性の強い痛み)と慢性の痛み(響くような鈍痛)に大別することが出来、慢性痛の主たる原因は筋膜(fasia)の滑走不全、筋肉の張り、局所の神経興奮や血管が由来で痛みを感じている場合と大きく3つの要素から考えています。もちろん3つが複合している場合がほとんどですが、その中でも比率の大きいものを予測して施術にあたるようにしています。
 鍼灸は抗炎症作用もあるため、炎症性の痛み(急性の痛み)についても対応していますがまだ確度が低い部分です。今年は研鑽をかねて炎症性の痛みに対応できるよう努めていきます。

1、徒手でリリースする

 筋膜/Facia由来の痛みは滑走不全によることが多いため、組織の滑走性をだすことで改善しています。アナトミートレインやロルフィング、ファシアルマニュピレーションなど様々な手技がでていますが、基本は圧迫+組織のストレッチです。滑走不全のおきているポイントと方向性を見極めて手技を施しています。

2、鍼で痛みを鎮静する

 筋肉の張りによる痛み、筋膜由来の強い滑走不全については鍼の使用優先度を高くしています。押しても伸ばしてもダメなら刺してみろくらいの考え方です。鍼を刺した場所は毛細血管が拡張します、血流変化と神経刺激が起こるので痛みが鎮静していきます。治るというより痛みという信号を脳が感じなくなるという状態です。その状態になると患部の組織も回復が速まるので間接的には治ると言えるかもしれませんね。

3、骨の並び方(アライメント)を補正する

 慢性化した足首の痛みは骨の並びであるアライメントが乱れています。これは固くなったり緩くなった足首を、なんとか上手く使おうとしてきた結果の適応です。この乱れたアライメントを整えて足首がうまく動くようにしていきます。皮膚や神経反射、関節の特性を利用していくのですが、エクササイズと併用しないと直ぐに悪いアライメントに逆戻りしてしまいますので、後述する運動療法と組み合わせて行っています。

4、マテリアルの利用

 足首の機能を一時的に助けてくれるものとして、テーピングも併用しています。しかし持続時間は2-3日と少ないです。以前より品質向上していますが耐水性、皮膚のかぶれまで考慮すると使用に制限がかかります。その点、インソールは耐久性、持続性が高いですが靴ごとに作ることを考慮すると、コストパフォーマンスが良くありません。
 これらはあくまで治癒過程の補助としての利用に限りますので、最終的には自力で動かすという選択肢にしています。

5、エクササイズ

 足首の代表的なエクササイズにヒールレイズとトゥレイズがあります。これを丁寧にやっていくと上の動画のようになります。ポイントは踵を上げる局面で如何にアンコントロールな部分をつくらないか?というところ、それから膝、股関節を介して背骨や頭まで力を連動させられるか?の2点です。
 もうひとつ紹介しているのが足首を固めて使うトレーニングです。瞬間的に足首を硬化させることでアキレス腱反射を使います。足うら全体で地面をとらえて反発力をもらう練習です。繰り返すと無意識にできるようになるため効率的な歩き方ができるようになります。

まとめ

 足首の捻挫はスポーツで最も頻発する外傷として報告されています、また誰もが生涯に一度は経験するポピュラーなケガでもあります。たかが捻挫…ですがされど捻挫です。身体はとても上手くできていて、足関節の機能が衰えたら他の関節で補うように出来ています。これが俗に癖やゆがみと言われるものですが、私たちは身体の「適応」と考えています。
 それぞれの方がもってるこの「適応」部分に、ナラティブ)(ストーリー)が隠れていて、縦軸のストーリーと横軸のエビデンスで交点を見つけてひも解いていくのが日々の臨床だと考えています。
情報を整理して伝えていたつもりでしたが、オタク気質が要因で長文になりました。。。最後まで読んでいただきありがとうございました。


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