マスク

「マスクするのが当たり前になりましたよね」

彼が言った。

「マスクしてると息がしづらくて」

ずっと前から知っている。外したことなんてないぐらいだ。

「どんな顔しているのか分かりにくいですし」

僕のマスクの下の顔はどんな顔だっけ?何もないのではないか。

「マスク似合ってますよ」

彼は笑った。それはどういう意味だろう?冗談だろうか。どちらにしても良い気分ではない。

「ありがとうございます」

そう言って僕は笑った、またマスクを付けて。

「いつかマスクを外して生活できる日が来るといいですね」

果たして僕にそんな日が来るのだろうか。

「そうですね」この時だけは僕はマスクを付けなかった。




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