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掌編2021

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365篇、書けたらいいな。
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2021年1月の記事一覧

緑色の月

月蝕の夜。月は少し欠け始めていた。 月は全然黄色じゃないけど、光を受けて黄色く見える。 赤…

たつきち
3年前

雨宿り

急な雨だった。しかも大粒の雨だった。 朝から出向いた打ち合わせを終え、ビルの外に出ようと…

たつきち
3年前
1

理想の目玉焼き

「目玉焼きの黄身が緩い方がいいか?固い方がいいか?」 「なにそれ?」 「そのまんまの質問」…

たつきち
3年前

メロンソーダの休日

ポケット中に何かある。あぁ、そうだ。イベント景品の余りだ。 自分らが駄菓子屋でこれを買っ…

たつきち
3年前
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卵焼きを焦がす

お弁当の厚焼き卵。上手くまとまらないことは…10回に一度くらいはある。卵料理は案外難しい。…

たつきち
3年前

Nautilus 2

「オウムガイを見に行こうよ」 悠介を誘って一度は「うん」と言ったのに前の日になって「ごめ…

たつきち
3年前
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寄植え

高校生の久助が縁の欠けた茶碗をいつまでも使うので、久助の母は久助が学校に行っている間に、久助の茶碗に寄植えをした。 学校から帰ってきた久助は茶碗の変わり果てた姿に呆然とした。 久助の欠けた茶碗の隣には、やはり寄植えの鉢と化した、母のマグカップがあった。 母のマグカップも取手の上、決して口の当たらぬ箇所だが、そこが少し欠けていた。 最初は呆然とした久助だが、みっしりと寄せ合っている多肉植物を見ていたら、なんだか嬉しくなってきた。 それ以来、空き瓶などの空き容器、取手の外れかけた

かなしい気持ち

友人Tから電話があった。 「Nの親父さんが亡くなったって」 Nとは高校時代からの付き合いだっ…

たつきち
3年前
2

Nautilus

急な休日出勤の振替休日を急に言われて、休日にするつもりだった部屋の掃除を終えた。 平日の…

たつきち
3年前
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探偵は今日もいない

三日月ビルヂングにある探偵事務所の探偵は実に仕事のできる探偵らしい。 おかげでいつ行って…

たつきち
3年前
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目撃者探し

ときどき交通事故の目撃者探しの看板を見かける。 先週の事故なら「あ、あれか」と思い出すが…

たつきち
3年前
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三日月ビルヂング

三日月ビルヂングの話をしよう。 僕の街にある三日月ビルヂングは風変わりな建物で、まずは表…

たつきち
3年前

泣きたい気持ち

泣きたいような気持ちを抱えて家に帰る。 泣きたいような気持ちは比喩ではない。 会社のエレベ…

たつきち
3年前
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写し屋

表に出ない仕事の特集ですか? こういう仕事もあるんだと世間に知ってもらう? うーん、それって必要あるんでしょうかね? まぁ、上司がお受けしたなら仕方ないですね。 あ、失礼。仕方ないなどと。 えぇ、はい。では改めて宜しくお願いします。 私の仕事は古い時代に作成された文章を現代の表記で書き写すという…現代語訳ではありません。あくまでも、今の時代の文字や表記で書くだけで、言葉自体を変えることはないんです。 今の時代で使っていない文字、漢字の旧字とかひらがなも表記が変わっているものが