【詩】水面に帰す

どうして、人は何かを失うと人から離れたモノになってしまうのだろう。

醜さは、刻一刻と深くなるのに、どうして、纏う空気は死臭に近い匂いがするのだろう。

分からない。

ただ、僕は、あの透明感を携えた空気が羨ましかった。

生きているのに、死を漂わせる、あの儚さが憎たらしかった。

意図せず、孤独に愛された人間。その、唯一性が妬ましかった。


だから、僕は一滴、毒を吐いた。


「死に損ない」


中途半端に、死ぬも生きるも出来ないモノが、

一番、死に近い匂いがした。


プールの底。僕らの棺桶。

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