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『オレ、あの橋から飛び降りたんだ』…Kさんから学んだ逃げるが勝ち理論

10年以上前かな。Kさんとよく、港で話をしていた。Kさんは僕より9つ年上で統合失調症の病気をわずらっている。中肉中背で、髭は剃っているが口元はとても青白い。なぜか常にサングラスをかけ、服装は迷彩服だ。
以前、公園で待ち合わせたところ、人らしき物体がだんだん近づいてきて、半径3メールに来たときにやっとKさんだと気づいたことがある。迷彩服なので分かりづらい。
そんなKさんだが、二人で海を見ながら話をしていたら突然、
「実はオレ、あの橋から飛び降りたんだ」と言い出した。
「まじっすか?やばいぐらい高いじゃないですか!高さ30メートルはありますよ。よく助かりましたね!」
「え、ちがうよ。あの橋の真ん中じゃない。もっと左!」Kさんは目線を左にずらした。
「いや、それでもかなり高いですよ。10メートルはありますって」
「ちがう、もっと左」
「へ、?もっと左って橋の終わりじゃないですか?」
「そうだよ、橋の下のテトラポッドあるでしょ。あそこから海に飛び降りたんだ」
「はぁ?深いんですか、そこは?」
「ううん、海水が膝ぐらいの高さかな。」
つらい過去を経験しているKさんだが浅瀬の海に飛び降りてドヤ顔してる姿を想像すると殺意が芽生えてきた。
なんでこんなダサいことを堂々とカッコつけて言うのだろうか。

でもきっとKさんはこう言いたかったのだと思う。「逃げるが勝ち」だと


たまにKさんから崖から飛び降りそうだから助けてほしいと電話がある。
「やめてください。今どこにいるんですか?」心配そうに聞くと
「○○崖に向かう途中にコンビニがあるでしょ、そこで待っててほしい」と電話を切られた。
Kさんはやまらないでくださいよ。車を飛ばしてコンビニに付くと
「よっ!久しぶり。コーヒーおごるからちょっと待ってて」とコーヒーとメロンパンを持ってきて2人で近くの公園に行った。

死ぬ気ないじゃん
「久しぶり、体調どう?ちょっとオレの話を聞いてほしい30分だけでもいいから」 クレイジーケンバンドか!
なんだ、このおじさんは‥心配した自分がバカみたいじゃないか。
後日Kさんの兄に電話をして状況を説明したらこっぴどく怒られたらしい。

なにわともあれ、Kさんはたまに人に迷惑をかけるが、死にはしない。逃げるコツを知ってる笑
だからいやなことがあったらkさんのように

「コーヒーおごるからちょっと話きいて」

と言おう。

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