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白い砂のアクアトープから考える社会問題

はじめに

 ご無沙汰しております。
 今回は、アニメオタクである私がかねてからやりたかったアニメのレビューと、そこから私が考えた社会問題について書きたいと思います。

 本内容は、アニメのレビューと社会問題の2パートに分かれます。
 大勢の方、特にアニメオタクと呼ばれる方はおそらくアニメと社会問題も紐づけて視聴することはないと思います。私も今までそんなことはありませんでした。
 しかし、通っている大学で多くを学び、多くを考えるようになり、今こうして黙々とキーボードをたたいているわけです(笑)

 ご理解いただきたいのは、私は本文を通してアニメをそのような目で見てほしいと思っているわけではありません。アニメは楽しくみることに意義があります。
 しかし、社会にはいまだに多くの問題・課題があり、若者といわれる私たちは、どのような形でもいいので理解し、考える必要があると私は考えています。
 私の場合、それがアニメとの紐づけで成り立ったというだけです。
 本文を通して少しでも多くの方々が社会問題について考え、どのような結果でも理解を示していただければと思います。

 最後に、本文はネタバレを極限まで抑えようと努力しているため、一部言葉足らずになるかもしれませんがご了承ください。

  1. 作品のあらすじ

  2. 個人的レビュー

  3. 社会問題

  4. 個人的意見

  5. まとめ

作品のあらすじ


 まずは作品について説明をさせてください。
 「白い砂のアクアトープ」(以降:アクアトープ)は、P.A.WORKS制作の完全新作アニメーションであり、沖縄のちいさな水族館を舞台にした作品となっております。

 水族館で働く18歳の女子高生・海咲野くくる(みさきのくくる)は、東京で居場所をなくし、逃避行した元アイドル・宮沢風花(みやざわふうか)と出逢う。
 くくると風花はそれぞれの思いを胸に、水族館での日々を過ごすようになる。

 しかし、その大切な場所に、閉館の危機が迫りくる。

 少女たちの夢と現実、孤独と仲間、絆と葛藤―。
 きらめく新たなページが、この夏、開かれる。

白い砂のアクアトープHP

 HPの文を引用させていただきました。
 この作品を二言で表すと「百合」と「現実」ですね。
 アクアトープは二部構成となっており、第一部は引用通り、閉館目前の水族館を立て直そうと奮闘する二人の少女の話、第二部はその後日談となっており、新しくできた水族館で働いている二人を描いております。

 第一部は、アイドル事務所を退所し、行き当たりばったりで沖縄に向う風花と、学校に通いながら祖父が経営している水族館で働くくくるの二人の視点から始まります。
 風花は、自分の後輩のためにアイドルとしての大きなチャンスを手放してしまい、そこから人気も落ちて事務所を退所することになりました。東京から地元に戻る際、沖縄のポスターを見かけ、無心で沖縄に向いました。沖縄を歩いていると、横切ろうとした占い師に呼び止められ、「陽の沈むころに現れる射手座を目指しなさい」と助言をもらい、その通りに歩を進めました。途中彼女は海に立ち寄り、「なんとかなるさ」と一言こぼして眠りにつき、そこで1話の前半が終わります。
 場面は変わり、くくるは普段通り身支度を済ませて学校に向かい、友達の中村櫂(なかむらかい)と照屋月美(てるやつきみ)・通称うどんちゃんと補習授業を受けることになります。くくるは大の魚好きで、つつね日ごろから魚のことばかりを考えてしまう「魚オタク」です。そんな彼女は祖父が経営している「がまがま水族館」で飼育員として働いています。しかし、「がまがま水族館」は閉館の危機にあり、くくるは焦っていました。
 場面を戻しましょう。目を覚ました風花は再び歩を進めますが、あまりの暑さに倒れかけます。偶然通りかかった観光協会の久高夏凛(くだかかりん)に助けられ、彼女の勧めで「がまがま水族館」に行くことになります。夏凛に送ってもらい、水族館に着いた風花は魚を眺めながらチャンスを手放したときのことを思い出します。すると、風花に驚くべきことが起きます(すごく綺麗な描写になってますので是非アニメをご覧ください)。
 風花が我に返ると、そこにはくくるがおり、風花が見た光景についれて1話が終了します。

 ここまで1話の大まかな流れを話しました。ここから先、風花は「がまがま水族館」で働くこととなり、最初はくくると衝突するも一緒に働いているうち、過ごしていくうちにお互いを理解しあい、高めあっていく存在になっていきます。ここが「百合」パートですね。ぶっちゃけ、そこまでイチャイチャしているわけではありませんが、一言「尊い」と言いたくなるような描写が多いのも事実です。
 では「現実」とはいったい何なのか。
 アクアトープは、ファンタジーな要素も取り込みつつも、現実を突きつけるようなシーンが多く描写されているのも売りの一つです。ぜひそこはアニメを見て感じていただければとは思いますが、主人公2人にとってかなり残酷な結果が訪れたり、夢だけでは語れないシーンが多くあります。それは結果的に彼女たちの成長につながっているのは確かですし、アニメだからぼかされている表現もありますが、おおよそはリアルでも起こりえる描写だと思います。
 
 しかしながらアニメはアニメ。ファンタジーとリアルの調和が非常によくできています。きれいな作画、百合要素と現実的な描写、そして見事なストーリー構成こそ、アクアトープのウリだと私は考えています。

個人的レビュー


 では、ここからはわ私なりの感想をお話しします。
 文字だけだとわかりづらいと思いますので、まずは作画、ストーリー、キャラ、もう一度見たくなったかの4項目れぞれ10点満点で可視化してみましょう。

作画:10
ストーリー:7
キャラ:7
もう一度見たくなったか:5

 以上29点にしました。
 作画に関しては言うまでもありません。非常に画がきれいで作画崩壊も起こさない。描写1ページ1ページが丁寧で、先述した風花が体験した「驚くべきこと」は特にきれいで、感動すら覚えました。本作は水族館がテーマということもあり海、もっと言えば水の作画がとてもきれいに描かれており、光の反射、水の波紋、魚の動きのそれぞれをとっても非常に素晴らしい出来になっていると感じました。キャラクターも一人一人非常に丁寧に描かれており、アニメというのは基本的に漫画か小説が原作にあり、キャラの絵もあるので作りやすいと考えますが、アクアトープに関してはそのような原作がないため0からのスタートになったかとは思いますが、非常に表情豊かなキャラクターができあがったのではないかと思います。
 ストーリーは前述した通り、「百合」と「現実」要素が非常に濃い内容となっております。最近では、女子が多く登場する作品も増え、私が敬愛するラブライブ!シリーズをはじめ、今となっては百合要素は作品における一つのステータスになっているとも私は考えております。そもそも、「百合」という概念自体は視聴者個人が「風花×くくる」と言っているだけであって、制作サイドは決してこれを深くまで想定しているわけではないと思います。そのため、ストーリー内で時折感じられる「櫂君がくくるのことが好きなのでは?」といったところから「櫂×くくる」を楽しむのもよし、「夏凛×空也(がまがま水族館の飼育員)」の同級生コンビの関係を楽しむのもよしと、視聴者が「勝手に」楽しむことができるのがアクアトープの魅力の一つだと思います。
 しかしながら、キャッキャウフフだけでは終わらないのがアクアトープの上手かつ酷いところであります。俗に言われる「なろう系」みたいに主人公にとって都合の良い結末を迎えるわけではありません。主人公は無双しませんし、逆ハーレム状態にもなりません。仕事ものである以上、必死に働いている描写が主になりますし、主人公にとって理不尽な出来事も多く起こります。私は正直、悲しい内容のアニメが得意ではないため、素晴らしい内容であるということは重々承知しているのですが、やはり悲しい気持ちになってしまううえ、キャラにも深く感情移入してしまうため評価を少しだけ下げさせていただきました。
 キャラに関しては特にいうことはありません。全員がそれぞれの個性や事情があり、可愛かったりかっこよかったりと、見てて飽きないというのが率直な感想です。ちなみに、私は風花ちゃん激推しです(笑)。ではなぜ評価を7にとどめたかというと、それはもちろん尺の都合もあったのかと思いますが、もっと掘り下げてほしかったキャラがいたためです。特に「夏凛×空也」の同級生ペアはマジでくっついてほしかったです。女嫌いな空也君に夏凛ちゃんがずんずん関わっていこうとしていく姿勢に空也君が今後どう心持を変えていくのかを見ていきたかったです。おそらく、夏凛ちゃんは空也君のことを(恋愛的な意味で)好きというわけではないと思いますし、きっとただの世話焼きなんだと思います。しかし、アニメでは語られなかったアフターストーリーがあるのであれば、あの二人は徐々に距離を縮めて最終的にはゴールインするのではないのかなと思っております。てかそうであってくれ。
 さて、オタク特有の妄想を膨らませたところで、最後にもう一度見たくなったかですが、ここは私は5にしました。なぜかというと、前述した通り、私は悲しい内容が苦手なためです。もちろん、最後にはハッピーエンドになるため全部が全部悲しい内容になるわけではないですが、少しそこがネックになっているのと、繰り返し見るほど隠された伏線があるわけでもないからです。伏線が多い作品といえば、Fateシリーズやエヴァ、STEINS;GATEなどが有名だと思いますが、あのような作品は1周するだけでは内容が把握しきれない、もしくは2周以上することで作品の面白みをもっと深く味わうことができるため繰り返し見たくなります。アクアトープに限っては1周見れば基本的に内容は把握できますし、何周もしないと理解できないような伏線はないように感じました。もちろん、風花とくくるの掛け合いは何回見ても尊いものですが、繰り返し見たくなるかならないかを分ける「伏線」の量に関しては少ないため、この評価にとどめました。

 総評すると、アクアトープは非常に作画がきれいで感動すら覚え、素晴らしいキャラやストーリーをもってかなりよくまとめられているとは思いますが、どうしても深堀しきれなかった内容があったり、悲しみを感じる描写がところどころあるため、好き嫌いが極端に分かれることはないとしても、伏線の少なさから繰り返し見たくなるとは思えない作品でした。しかしながら、1回見ればその世界に入ってくくるや風花の気持ちを肌で感じることができる素晴らしい作品だと私は思っております。
 
 もし少しでも興味を持っていただけたら、Prime videoやdアニメストアで見ることができますので是非ご視聴くださいませ。


社会問題


 さて、アクアトープの話で盛り上がりましたが、ここからは現在世界で議論が続いている社会問題についてみていきましょう。
 アクアトープは水族館がテーマの作品です。では、水族館で一番人気の生き物は何でしょうか?ふわふわ海中を漂うクラゲ?それとも、ぺちぺち歩いている姿が可愛いペンギン?違いますね。水族館で一番人気といえばイルカでしょう!

 2013年に発表されたgooランキングを見ても2位のペンギンに約2倍の差をつけて堂々の1位ですね。
 水族館に行ったら必ずイルカショーに行くくらい私もイルカが好きです。調教師との生きぴったりのショーは何度見てもすごいと思わされます。中には手を振ったりしてくれるイルカもいますし非常に可愛いですね。
 アクアトープでも、第二部の後半でイルカについて触れられており、水族館を語るにおいて外せない生き物だと言えるでしょう。

 そんなイルカですが、2000年代に入ってから社会問題の一つになっていることをご存じでしょうか?それが、日本のイルカの追い込み漁問題です。
 私がここで文字で詳しく書いてもわかりづらいと思いますので、日本のYoutuberである「たっくーTVれいでぃお」さんが簡潔にまとめておりましたので共有させていただきます。こちらから是非ご視聴ください。

 ここでも簡潔に説明させていただきます。
 イルカの追い込み漁問題とは、2010年に米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ザ・コーヴ」によって世界的に注目されるようになった問題であり、和歌山県太地町で伝統的に行われていた漁がテーマとなっており、複数の漁船でイルカが嫌う金属音を立てて群れを湾内に追い込み捕まえる内容となっています。太地町で捕まえられたイルカは日本の水族館などに販売されたり、殺して食肉用として捌いたりされています。イルカが食肉として食べられているのは、賛成か反対かは別として驚きです。同じ日本国内でもまだまだ知らないことも多くあるものです。
 さて、「ザ・コーヴ」の上映後、これらの内容は世界的に注目されるようになり、反捕鯨団体「シー・シェパード」による抗議活動やキャロライン・ケネディ駐日米大使による「追い込み漁の非人道性について深く懸念」とTwitterで書き込むなど、度々批判されてきました。
 世間的にも「可哀そう」や「イルカのことを考えていない」などの声もあり、太地町は辛い立場にあります。しかし、太地町もだんまりを決め込んでいるわけではなく、公式見解を述べております。「ザ・コーヴ」で語られている内容の一部も事実ではありますが、これはどっちが悪いと一方的に語ることができないというのもまた事実です。
 では世界的にはどうなのか、海外ではイルカを食べられているのか、イルカをどう扱っているのかを見ていきましょう。
 海外でのイルカ漁ですが、調べたところ、デンマークでも太地町同様イルカ漁を行っているようですね。国内においては食料を確保するための伝統的な方法であるとされていますが、近年ではデンマーク内でも批判的な意見が多くなっているようです。
 ほかの国はどうでしょう。現在ではしているのかしていないのかは定かではありませんが、ソロモン諸島、キリバス、ペルー、台湾、カナダ、ハワイ、ギリシャ、ロシアはイルカ漁をしている、又はイルカ漁の歴史があったそうです。こう見ると、イルカ漁をしていたり、した過去がある国はそこそこ多いですね。日本だけではないというのがよくわかりました。
 では、他国のイルカの扱いはどのような感じでしょう?水族館や動物園で飼育されているのでしょうか?調べた感じ、スイス、イギリスなどイルカ飼育施設自体がない国も多くあるみたいです。アメリカなども法律で厳しく規制されているそうです。もちろん、日本だけが取り残されているわけではなく、日本のようにイルカを飼育できる国もあります。ただし、飼育されている多くは人工繁殖の個体が多く、自然から捕獲されて飼育される個体は少ないみたいです。
 ここまでをまとめると、イルカ漁や飼育を行っているのは日本だけでなく、他国もイルカ漁の歴史があったり、規制の中飼育している国も多くあるということです。

個人的意見


 ここからは個人の意見をお話しさせていただければと思います。
 単刀直入に言うと、「これが本当の多文化・多様性なのか?」です。
 これはイルカ問題に限られた話ではありませんが、自分の意見を押し付けるのが本当の多様性だとは私は思いません。確かに、自分の考えに合致しないものを受け入れられないのは仕方のないことかもしれません。私だって、鬼滅の刃や、呪術廻戦が好きだという人の気持ちはわかりませんし、たぶん周りのみんなはラブライブを超推している私の気持ちは到底理解ができないと思います。(Aqours 6th live最高でした)そういうことに関しては、人間として生活していたら絶対起こることです。
 しかし、理解ができないのと否定するのは全くの別物だと思っています。理解ができないだけであれば、さっきのアニメの例で行くと「あの人は鬼滅の刃がすきなのか。私はその気持ちよくわからないけど、いいんじゃない?」っていうのと「鬼滅の刃が好きとかありえない。ラブライブ以外はみるなよ」っていうくらい違います。
 なので無論私は「ザ・コーヴ」で語られている捕鯨反対の意図は理解できますし、否定するつもりは一切ありません。しかしながら、イルカ漁で生活している人間も少なからずいるわけです。もちろん、あらゆる内容の表現の自由は尊重されるべきですが、過度な表現は他人の生活を脅かす種にもなります。また、多文化・多様性とは決して他人に自分の意見を肯定させることではありません。同じテーブルでそれぞれが異なる意見を持ち、許容することが本当の多文化・多様性だと思います。


まとめ


 ここまでご覧いただきありがとうございました。
 アニメの内容から社会問題につなげるのはかなり飛躍していると感じましたが、やはり自分の興味のある分野からそういった社会問題に目を向けるのは非常に有意義だと感じます。特に娯楽が増えている現代だからこそ社会問題(それ以前にニュースなど)に目を向ける機会が減っていると私は感じました。
 「社会問題は他人事」と思う人も一定数いると思います。日本という平和な国で過ごしていたらそう感じるのも至極当然だと思います。しかし、実は私たちの見えない、あるいは見ないようにしているところには社会問題は数多くあり、それは最終的に自分も当事者になることがあると知ることが今の私たちに必要なことだと思います。はじめにもお話ししましたが、入り口は何でもいいと思います。アニメでもゲームでもスポーツでもファッションでも…..、あらゆる趣味からでも社会問題は垣間見えると思います。私の場合は「アニメ×社会問題」という切り口だったというだけです。しかし、私以外の誰かが社会問題に関心をよせてくれたなら私もこれを書き上げた甲斐があるというものです。

 今回は「白い砂のアクアトープ」からイルカ問題を取り上げてみましたが、次は「進撃の巨人、コードギアス、バトルスピリッツ(異界見聞録シリーズ)から考える人種差別」「シン・ゴジラ、GATEから考える自衛隊」のどちらかを書こうと思っていますので、是非期待せずにお待ちくださいませ。

 では、またお会いしましょう。


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