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本と私

小さい頃、信じられないくらい本を読んでいた。本当に、冗談抜きで、信じられないくらい。多分それは、物心ついた時から父親が私を市の図書館によく連れて行ってくれたことがすべての始まりだ。

一緒に外出するとなぜか物静かになりがちな父は図書館でも私を野放しにしたから、図書館の開拓は気づいたら全部自分でしていた。紙芝居も借りた。児童書の棚には常に入り浸っていた。こまったさんシリーズ、わかったさんシリーズ、もしかしたら名探偵シリーズ、かいけつゾロリも全部読んだ。たまにちょっと背伸びして、難しそうな本に手を出したりもした。毎週のように図書館に行って、家族全員分の図書館カードを使って本を借りるから、家は常に本で溢れていた。本で溢れた本棚がその時から大好きだった。

小学校4年生から、父親の転勤の関係で香港に行くことになった。私は毎週図書館に行く生活とお別れしなければならなかった。
でも、私の親は私のことをよく分かってくれていた。会社を通じてだったのだろうか、幼くてどういう制度かはわからなかったのだけれど、親は本に関してはお金に糸目をつけずに買い続けてくれた。届いた本を父が持って帰ってきてくれるのを、いつも心待ちにしていた。

その時の私のブームは、青い鳥文庫や角川文庫で、新潮文庫の本も読んだ。作者で言えば、はやみねかおるさんが一番好きで、本棚にはやみねかおるの本をずらりと並べてはにやにやしていた。都会のトムソーヤシリーズは不朽の名作。どんどん本棚が買った本でたまっていくので、それをきれいに収納しては「美女と野獣の本の部屋みたい」とうっとりしていた。

流行りのゲーム機も持っていなかったし、どこに行っても本を必ず常備していたので、時折周りの大人から「えらいね」などと評価されることもあった。けれどその時の私にとって、本はただただ最大のエンターテインメントだった。塾の模試が終わった後は、ベッドわきに本を積み重ねて好きなだけ読みふけるのが最高の幸せ。外出先では本を読み終わってしまうのが嫌でよく予備で2冊持って行ったりした。

あの時期、本と共に生きていた私は間違いなく幸せだった。コメディに一人で笑い転げたり、感動の余韻に浸ったり。すべてにおいて、圧倒的な支えだった。

今でこそ本を読む頻度やスピードは落ちてしまったけれど、本を持っていると安心するし、幸せな気分になるのは紛れもなくこのルーツがあるからだ。意味があるとかないとか関係なく、ただただ私の人生を幸せにするものとして、自分のそばに置いておきたい。そして、こんな風に趣味に没頭させてくれた親に深く感謝したい。

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