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mixed book review:石の花(坂口尚)×伊勢崎賢治氏インタビュー(長周新聞)

【mixed book review】
ロシア・ウクライナ危機について、「読んで良かった」と思う2作品を、mixして紹介します。

1作品目:石の花(坂口尚,1983-86年の作品)

第二次世界大戦においてナチス独軍から侵攻されたユーゴスラビアの若者を描いた戦争群像劇。主人公のクリロは学生だが、戦禍に巻き込まれる中でパルチザン(ユーゴスラビア人民解放軍)に所属し、抵抗を続けることになる。生きるためには、守るためには、誰かを殺さなくてはいけない。凄惨な状況が続く中で、クリロは根本的な問いに直面する。

「平和を守るために、人を殺していいのか?」
「人々は本当に、戦争を嫌がっているのだろうか?」
「『わたしの国の人々を守る』という言葉は、信じられるのか?」
「真の平和は一度も訪れていないのに、どうして『その方法では現実的でないからダメだ』と言えるのか?」

全24話。3話まで試し読み可能です。https://note.com/aokishi/n/n6e80bcdcd65e

2作品目:ウクライナ危機に国際社会はどう向き合うべきか 緩衝国家・日本も迫られる平和構築の課題 東京外国語大学教授・伊勢崎賢治氏に聞く(長周新聞)
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/22976

2万字以上の長編ですが、必読です。現代のパルチザンへの言及など、紹介したい話題は満載ですが、「石の花」と重ねることで、特に下記の部分がぼくの胸を打った。

(伊勢崎)とにかく今国際社会が焦点とすべきことは早期停戦だ。それは一人でも多くウクライナの一般市民を助けるためであり、国際社会全体もそこに焦点を絞るべきだろう。

――本来ならばここで、平和憲法を持つ被爆国であり、原発事故の当事国でもある日本が、原発大国での戦争の危険性を真っ先に指摘し、停戦を呼びかけるべき立場にいるはずでは?

(伊勢崎)その通りだ。だが残念ながら今の政権には、たとえ無理なことでも正しいことをやろうという骨のある政治家がいない。外務省から画期的なアイデアが出たとしても、それを実現するために自分が泥を被るというような覚悟をもつ政治家が、かつてはいたが今はダメだ。だから外務省からも元気のある提案がなく、ひたすら守りだけだ。

昨日、ゼレンスキー大統領が、日本の国会で演説した。式次第には、演説の中身も分からないのに、「演説後にスタンディングオベーションすること」が記載されていて、一党を除いた全議員がそれに従ったそうだ。「石の花」で描かれたクリロの問いは、まさに現代の日本から生まれたかのようだと思った。

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