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翻弄されたリユース業【第24回マスクの向こう側】

<まえがき>緊急事態宣言が出されたあの日。お店を経営している方は、自分の店が休業要請の対象になるか、ならないか、やきもきしましたよね。今回は分類でいけば「古物商」。当初、休業要請の対象に入っていたものの、後から対象外になったという珍しい方にインタビューしています。

●「休業するより、営業した方がよかった」とは…
●「巣ごもり需要」の恩恵は受けた?
●コロナを良い風にとらえるなら…

―自己紹介をお願いします。
中古の釣り具を買い取って、ネットで販売しています。以前はリサイクルショップとして色んなものを取り扱っていたのですが、数年前から、釣り具に特化するようになりました。釣り好きは意外と多くて、何でもそれなりに売れるので安定しているんです。それに、スタッフも釣り好きが多いし、どうせなら、楽しく働けた方がいいかなということで。今は東京と大阪にいくつかの店舗を構えて、買い取った商品はオークションサイトで販売しています。1円で出品するので、売れ残りもありません。無駄な在庫がなく、すぐに現金化されるので、経営的にも健全ですね。

―緊急事態宣言が出た後のことを教えてください。
政府見解では、お店が休業要請の対象に入っているのか、いないのかよく分からなくて困りました。そこでとりあえず、本社のある東京都が具体的な基準を出すまで感染対策をしながら営業を続けました。その後、発表された東京都基準を見たところ「古物商」は営業自粛の対象になることが判明。しょうがない…と休業補償の手続きのため東京都の担当部署に連絡したのですが、つながるまで5時間もかかりました。しかも、担当者に店の細かい状況を伝えたところ、まさかの「3密には当たりません」とのこと。販売はすべてネットで行い、店舗では買い取りだけにしていたため、そう思われたのかもしれません。その後は、感染対策に配慮しながら営業を継続しました。まあ、休業補償をもらっても、200万円程度。せいぜい家賃にしかならないので、営業できたのは良かったですね。

―売上や、働き方などには影響がありましたか。
一時は役員報酬をカットするなど、最悪のシナリオも考えましたが、実際、売上にはそれほど影響は出ていません。自粛期間中、今のうちに余計なものを処分して家を整理しようという、いわゆる「巣ごもり需要」の一環で、リサイクル業界全体としては景気が良かったようです。うちは釣り具に特化しているため、そこまでではありませんが、前年と比べてほとんど変わりませんでした。

働き方に関しては、スタッフができるだけ人と接触しないように心がけました。一人でも感染が出たら商売としてアウトですから。たとえば、訪問査定をする場合は中に入らず、玄関先で行う。店に来てもらう場合は、査定中、車の中などで待ってもらう。それから店舗も営業時間を短縮。スタッフにも車通勤を推奨したり、電車通勤の人は勤務時間を1時間ずつ前後させたりしました。ちなみに、4月、5月は世間ではマスク不足が叫ばれていましたが、うちはリユース業で、しかも釣り具はモノによってはすごい汚れていることもあるため、もともとマスク着用は必須です。備蓄があったため、特に不安もありませんでしたね。

―今後予定していたことで、何か変わったことはありますか。
以前は、店舗とは別に「本社オフィスも専用に借りないとね」と言っていたのですが、このコロナで吹っ飛びました。本社機能は確かに大切ですが、別に場所があって、そこに人が常にいないといけないわけではありません。勝手な思い込みだったんです。実際、この期間中はすべてリモートでやっていました。極端な話、店舗さえあれば、オフィスなんかいらないわけです。

幸い、金融公庫から無担保無利子の融資も受けられたことですし、今後はもっと別のところにお金を使おうと思っています。たとえば、テレビCMとか。コロナで一時見合わせていた新店が、2か月遅れの8月OPENを目指して進んでいます。それに合わせて、地方テレビでCMを打つつもりです。あと、大々的な新卒採用ですね。コロナの影響なのか、新卒採用メディアも大幅に価格が下がっているようです。これからはいい人材も採用しやすくなると思うので、ガンガン攻めていこうと考えています。

―世の中的に、今後どうなっていくと思いますか。
単身赴任ということもあり、よく飲食店を利用するのですが、コロナ後は明暗が分かれてきた感じがします。盛り返しているところは、規模が小さい個人店が多いですね。個人的な感想ですが、感染症対策がゆるいところが多いような気がします。たとえば、近所の昔からあるおでん屋さん。ここは小さいお店で、カウンターに8人も座れば満席なのですが、この間、覗いたら10人くらいひしめき合って、マスクもせずに飲んでいました。さすがにその時は、入る気になれませんでしたが、すごい楽しそうだったのが印象的です。人はどこかでやっぱり「密」を求めているんだなと思いました。

感染症対策も確かに必要だとは思いますが、個人店ぐらいの規模で、席を離したり、対面を禁止されたり、カーテンを下げられたりすると、違和感がありますね。もともと、そういう店って“人と人との近しい距離感”に惹かれていくのであって、その店に行こうとした時点で、「ここなら」ってある程度のリスクを負っているわけですから。後は、それにお店がどう答えるかではないでしょうか。今後は、感染対策の仕方から、飲食店も住み分けができていくような気がします。

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コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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