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<まえがき>飛行機での旅の楽しみ…といえば、機内での飲み物サービスだったり、CA(客室乗務員)さんとのちょっとしたお喋りだったり。国際線では機内食のアテンドでも、個人的には旅気分を盛り上げてもらっています。それがこの数ヶ月で状況は大きく変わり、航空各社が減便に伴う客室乗務員の大幅休業を発表しました。今回は、その渦中にいる国内大手航空会社の中堅CAさんに話を伺いました。

―どんなお仕事をされていますか。
客室乗務員として国内航空会社で、10年以上勤務しています。

お客様に機内で快適に過ごしていただくためのサービスと、安全を守る保安管理が私たちのメインの業務。入社後は、多くの訓練・研修を経て乗務にあたります。勤務スケジュールは前月末までに決定し、そのスケジュールにしたがって、国際線・国内線あわせて60~80時間、繁忙期だと90時間前後のフライトを担当しています。便数で言うと、国際線が多い月は短距離を含めて3~4便+国内線数便を往復する…という感じでしょうか。乗務中には客室サービスだけではなく、新人のOJT研修を行うこともあります。また、機内での業務の他、年に数回全体会議に出席し、会社の経営方針などの共有を受けることも義務付けられています。

―コロナ以前と比べて、どんな変化がありましたか。
4月から自宅待機がスタート。
メディアでも報道されている通り、新型コロナウィルスの蔓延以降は航空各社で減便が決定されました。国際線は計画運航便数の約9割、国内線も6割以上の減便となっています。それに伴って、1万人近く在籍する私たち客室乗務員も順次自宅待機になりました。私自身も4月は国際線1便・国内線1便のみの乗務で、5月も月末に1回だけ予定されていますが、あとは完全に自宅で待機している状態です。外出するわけにはいきませんが、自分の時間だと思って、できるだけ前向きに楽しむようにしています。たとえば大掃除や断捨離をしたり、傷むのが嫌であまり買わなかった野菜を躊躇なく購入して「何、作ろうかなー」なんて考えたりすることも楽しみのひとつ!ありがたいことに、長年の不規則なシフトに慣れてしまっていた身体のリズムもようやく戻ってきました。同期の仲間の中には、この機会に資格取得を目指したり、英語の勉強に力を入れたりする人もいるようですが、私は心のリフレッシュと称して、ずっと見ようと思いつつ見れていなかった映画やドラマを見まくっています(笑)。
ちなみに予定されていた会議はオンラインに変更になりました。今後もこういうスタイルに変わっていくのは、働き方改革の一環としてアリだと個人的には感じています。

成田も羽田も空港内は閑散と…
平日でも多くのお客様をお迎えしていた空港内も、今は本当に静かな状態です。お土産屋さんはもちろん、ブランド品を扱うショップも休業しているため、数ヶ月前の賑わいが嘘のよう。成田空港へ向かう成田エクスプレスも今月からはダイヤを減らして運行していますが、それでも1車両に1~2名の乗客がいるかどうか…ほとんど車両貸し切りの状態です。
そんな中でも、飛行機に搭乗されるお客様がいらっしゃる限り、私たちの仕事は必要不可欠。機内での感染を予防するために、現在はドリンクのご提供を中止するなど、国内線での接客を制限しています。客室乗務員は今までのように「密」に接することなく、機内に分散しながら、時折機内を見回って保安の観点で問題がないか、お客様からのご要望がないかチェックを行っています。「手袋・マスク着用」「極力会話をかわさない」「お客様同士でソーシャルディスタンスをとっていただけるようアナウンスを行う」etc.どれをとってもコロナ以前とはまったく異なる業務スタイルです。以前流行したSARSの時にもなかった対応に、「ご不快に感じられることがないだろうか」と、同僚の間でも心配の声が上がっています…でも、お客様の安全を守る意味では仕方のないこと。もし、身近に飛行機に搭乗されるお知り合いがいたら「サボっているわけじゃないらしいよ」とお声がけいただければ嬉しいです!

―これから業界(世界)は、どう変わっていくと思いますか。

来年開催される予定のオリンピックまでに元に戻るのかどうか…先行きは不透明
会社からは、下半期に向けて少しずつ業績の回復を目指していくと発表がありました。でも私的には緊急事態宣言の解除後も、コロナ以前に戻るには時間がかかるだろうと思っています。あまりマイナスの方向に考えたくはないのですが、リモートワークが浸透し、さまざまな業界で働き方が変わりました。今まで出張をされていた方が「オンラインでいいよね」となっても仕方ありません。ビジネスでご利用されるお客様は確実に減っていくのではないでしょうか。回復するとして、まずは国内線の需要が増えていくのだろうと思いますが、私たち客室乗務員がそれを実感できるのは、来年になってからかなと。オリンピックもありますし、って、本当にできるのでしょうか?そこは少し不安ですけれど(笑)。

ーずっと乗務がない状態。聞きづらいのですが、お給料や雇用関係に不安ってないですか?

今のところ、「リストラは行わない。安心して」と言われています
同じ客室乗務員でも、「時短勤務」「フルタイム勤務」「契約勤務」といくつかの勤務スタイルがあり、雇用形態も異なります。私はフルタイム勤務。さすがにフライト手当はありませんが、乗務のない今も基本給は保障されていますし、休業手当も支給されています。社内では、基本給の少ない契約勤務のスタッフを優先して乗務スケジュールを組んでいるという噂も。もしそれが本当なら、会社がしっかりと配慮しているのだなと思いますね。
ひとつ気になっているのは、訓練が途中で止まってしまった新人たちのこと。OJT研修も、サービス提供業務が一切ない中で、保安業務のみを行っている状態なのです。いざ需要が戻り、サービス再開になった時はそのフォローから始めなければと考えています。だってサービスや知識に偏りがあったら、お客様に失礼ですから。

正直、会社の業績回復のために客室乗務員ができることはほとんどありません。その分、感染に怯えることなく、人と人の距離を気にせず快適な空の旅を楽しんでいただける日が来たら、心をこめておもてなしをしたいですね。手袋なしでお食事をお渡しし、マスクを外して会話を楽しみ、皆様の笑顔をお迎えできる。そんな日を乗務員一同、心からお待ちしております!(Mさん/国内大手航空会社 客室乗務員)

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コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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