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小さい子供を持つ主婦が経験したコロナ【第34回マスクの向こう側】

<まえがき>緊急事態宣言下の4月、5月、保育園はかろうじて稼働していたものの、大半の幼稚園・児童館が休みになりました。「自宅で大人しくしていろ」と言っても、元気一杯の幼児の場合、早々できるものではありません。感染対策に加えて、子供の世話をする親のストレスも相当なものだったはず。現在、2歳のお子様を育てている方に、その辺りの苦労についてお聞きしてみました。

●子供と自分の居場所がどこにもない…
●テレビ、ネット…何を信頼すればいいか分からない…
●人との付き合いの仕方も変わっていくのかな

―自己紹介をお願いします。
大阪南部の郊外に住む主婦です。夫と2歳になる息子と一緒に暮らしています。

―2歳。ちょうど、手がかかる頃ですね。
何をするにも「ママ、ママ!」ってそばについていないと駄目みたいで。甘えん坊で可愛いんですけど、家事などなかなか予定通りに進まず困ることも多いです。最近は、ひとり歩きが上達してきたので、外に行っても目が離せません。

―コロナ下では、色々と大変だったのではないですか。
はい。感染リスクを避けるために極力外出は控えるようにしていたのですが、元気の有り余る子供を家にずっと閉じ込めておくわけにもいかず……最終的に行き場がなくなり、ママチャリに子供を乗せて家の周辺をフラフラ走っていた日もありました(笑)

―時系列で教えてください。最初にコロナを意識したのはいつぐらいからですか。
1月下旬、ちょうど中国の春節直前頃です。ニュースで、中国でSARSに似た感染症が流行っていることを知り、毎年春節にあわせて大量訪日する中国人観光客のことが頭に浮かびました。特に大阪はここ数年、インバンド誘致に力を入れていたので、今年もたくさんの観光客が来るだろうと。感染者と接触する可能性があるかもしれないと思い、予定していた子供との遠出を中止にしました。

―自分の身の回りで、まず影響があったのは、どんなところですか。
2月下旬、小中学校の一斉休校の余波で、普段通っていた近所の児童館が休館になりました。現在、私は仕事をしていないため、子供もどこにも預けない「家庭保育」がメインです。同年代のお友達と楽しく安全に遊べる場所として、また私自身も育児の悩みを相談できる場所として、児童館をとても頼りにしていました。それが突然の休館……。たくさんの親子が集う場所なので覚悟はしていましたが、日常がコロナに侵食されていく実感がありました。
その後、よく出かけていた公園も、休校で暇になった子供たちが密集したため、市の命令により、全ての遊具が使用禁止に……。近所にある実家とも「コロナが収束するまで行き来しない」という話になり、いよいよ外に出づらい空気に……。もちろん、息子はそんな事情など分かりませんので、家で退屈すると大騒ぎです。その一方で、3月中旬からは、夫が在宅勤務に切り替わったため、商談中や会議中など、息子が邪魔をしてはいけないと、おちおち家にもいられません。あと、あまり知られていないことですが、マスクやトイレットペーパーが買い占められていた頃、その余波なのか、子供のオムツやお尻拭きも買い占められて、なかなか手に入りませんでした。色んな意味でストレスが多く、新しい生活に慣れるまでは、夜中に自分の歯ぎしりの音で目覚める、ということもありましたね(笑)。

―この時期、感染対策で気を付けていたのは、どういうことですか。
マスク・手洗い・うがい・3密回避など、普通のことは徹底していましたが、それ以前に、コロナに関する情報のうち、何を信じたらいいのか分からず困りました。我が家は新聞をとっていないので、情報源は主にテレビとネットです。BSで海外のニュースも見るようにしていたのですが、海外で報じられるコロナの深刻さに比べ、日本政府の見解は楽観的に思えて不安でした。あの頃は、状況を把握しようと情報収集に必死でしたね。コロナ情報であれば何でも目に入れるようにしていましたが、テレビは識者によって意見がバラバラ、ネットはソースの怪しい情報やデマが散乱していて、見れば見るほど何が正しいのか分からなくなっていきました。途中からは情報をむやみに追うのはやめ、ワクチンが完成するまで基本の感染予防行動を徹底し、自己防衛に努めるしかないという心境になりましたね。

―コロナ下で印象に残っていることはどんなことですか。
4月の緊急事態宣言発令後も、頑なにマスクをしないで出歩く人たちがいたことです。マスクの着用は強制ではないので、個人の自由なのでしょうが、周囲の1、2割の人がマスクをしていませんでした。その人たちとすれ違うたびに、接近しないようものすごく警戒していましたね。特に呼吸器保護のため、息子はまだマスク着用が推奨されない年齢です。マスク未着用の人に隣で咳をされた時は、「おいっ」って思わず心の中で毒づいてしまいました。確かにマスクが手に入りづらい時期でしたが、ハンカチを折りたたんでゴムで結ぶだけでも、唾を拡散しないための即席の代用品は作れるわけです。共同体で生活する人間として、公共の場でマスクをしないのは無責任だと、家に帰るたび夫に愚痴をこぼしていました。自粛警察とまではいかないですが、”幼い我が子を守れるのは自分だけ”と、母親として敏感になっていたような気がします。

―今はどうですか。落ち着きましたか。
緊急事態宣言が解除されてからは、緊張が解けて、だいぶ楽になりました。身の回りでは、6月から児童館が再開になりました。今まで入場制限はなかったのですが、1日数組限定の事前予約制になり、大量にあった玩具は大部分が撤去され、様子が大きく変わりました。前のような賑やかさはなくなりましたが、久々にスタッフの方や他のお母さんと話をしたり、息子がのびのび遊んでいる姿を見て、自宅以外に居場所があることのありがたさを痛感しました。毎日閉館後にはすべての玩具を洗浄・消毒されているらしく、スタッフの方々には本当に頭の下がる思いです。ただし、人の動きが活発になれば、いつ第二波がやってきてもおかしくありません。実際、7月に入ってから、それに近い状況になりかけています。今一度気を引き締め直しているところです。

―コロナを経て、社会はどんな風に変わっていくと思いますか。
人との距離感が変わったことで制限もありますが、逆に前よりも楽しめる場所が増えるんじゃないかと言う期待もあります。たとえば、再開後の児童館も利用する人も減り、適度な距離をもって接することが求められます。これは人付き合いが不得手で、人混みが苦手な私のような人間にとっては、居心地よく感じられる時もあります。緊急事態宣言解除後の6月には、大阪の南港にある巨大水族館『海遊館』に子供と行ったのですが、直後の平日ということもあり、ほぼ貸し切り状態でした。それまで“魚よりも人を見に来たのか”というレベルの大混雑だったことを思うと、コロナによる影響の大きさを感じずにはいられません。

社会的に見ても、以前より在宅勤務の割合が増えることで、子育て家庭での男性の育児参加が増えるのではないかと思います。実際、我が家でもほぼ休日だけ育児参加していた夫が、在宅勤の間、育児の大変さを目の当たりにしたことで、平日も積極的に育児を手伝ってくれるようになりました。接待や飲み会がなくなった分、毎晩、息子を風呂に入れてくれるようになり、大変助かっています。この状況がいつまで続くか分かりませんが、コロナと戦いつつ、”新しい生活様式”に楽しみやメリットを見出しながら生活していければいいなと思います。(Nさん/専業主婦(子供は2歳)

コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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