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<まえがき>今でこそ、ある程度、感染対策に共通意識がありますが、3月頃は「マスクの着用」「外出自粛」などに関して温度差がありました。今回はそんなギャップのある中で、難しい対応を迫られていた方にお話をお聞きしました。

●出社はしないのに、出張はしていた
●体調を壊して、やっと気づいた在宅ワークを上手くやるコツ
●不景気になると〇〇にも悪影響が出る

―どんなお仕事をされていますか。
土壌汚染の調査・浄化などに取り組んでいます。工場って、モノを作る時、色んな物質を使うのですが、それが化学変化を起こし、時には有害な物質が発生することもあります。今でこそ、工場の廃水・ゴミは厳密に管理・処分されていますが、かつてはそうではありませんでした。水は垂れ流し。ゴミも地中に埋めていました。その結果、環境破壊が起こり、様々な問題を引き起こしました。今でも工場の地中には、そういう様々な有害物質が埋まっている可能性があります。
そこで新たに法律が策定され、建物を新しく建てたり、工場内に新たな施設を作ったりする際には、土壌調査・浄化が義務付けられるようになりました。私はそのうち調査を専門に手掛けています。
一口に土壌汚染物質と言っても、種類は様々です。それを調べるために、専用のボーリング機械で工場の地下から土壌を採取。どれくらいの深さに、どんな物質が、どれくらい存在しているのかを調べ、その後の浄化につなげています。コンプライアンスにうるさい最近では、土壌汚染が発覚すると炎上騒ぎになりかねません。対応を間違えないように、行政の担当者と打ち合わせをして、どのように浄化を進めるかなど危機管理にも取り組んでいます。

―コロナ以前と比べて、どんな変化がありましたか。
2月末。学校に休校要請が出されたのと同じくして、会社からも原則在宅勤務を命じられました。当時、担当現場が九州にあったのですが、九州はまだコロナ感染と縁遠かったこともあり、その意識にはかなり温度差がありました。在宅勤務になったと説明しても、これまでと変わらず何かあるたびに「ちょっと来てほしい」と言われます。私も断るわけにはいきません。3月中は、会社には出社しないのに、その代わりに飛行機に乗って九州に出張するという、おかしな状況が続きました。4月に入り、緊急事態宣言が出されてからは“出張を断る理由”ができてほっと一安心です。それからは完全にリモートワーク。現場は変わらず動いているため、仕事は大量にあります。打ち合わせをしたり、指示を出したり、レポートを書いたり、資料を作ったり…。部屋に籠ってずっと仕事をしました。オンオフの切り替えが難しく、気づいたら1日中仕事をしている状態。運動不足に加え、デスクワーク続きで、知らずストレスがたまっていたのかもしれません。気づいたら、手全体にじんましんが…。体調が悪化して仕事ができなくなってしまいました。

―今も在宅勤務は上手くいっていないんですか。
そんなことはありません。むしろ、上手くいっています。あの当時、在宅勤務が上手くいかなかったのは、「そのうち会社に戻る」という意識があったせいだと思います。「出社していればもっとスムーズにいくのに…」そういう風に自分に言い訳していたのかもしれません。GWに入ってからは「在宅しかない」と諦めました。長期戦を見込んで、専用の椅子も購入しました。だらだら仕事をするのをやめ、18時になったらきっぱりやめるなど、オンオフの切り替えを図りました。食事制限など体質改善に取り組んだ甲斐もあり、5月半ばを過ぎた頃には体調も回復し、それまでイライラしていたのが嘘のように、スムーズに仕事がいくようになりました。考えてみれば、当り前のことです。これまでは会議があると、資料を人数分プリントアウトして、その場所まで足を運んでいたわけです。でも、リモートならその必要はありません。画面を共有して、話すだけ。移動時間もいらないから、その分、別の仕事ができます。本当はいいことづくめなのです。むしろ「これまで何のために出社していたんだろう?」不思議になりました。これは私に限ったことではなく、他の社員も同様です。「会社に行く意味を感じない」「もう満員電車に乗りたくない」などと口々に言っています。会社もそれを尊重し、6月も引き続き、その状態が続いている状態です。

―コロナは今後にどんな影響を及ぼすと思いますか。
景気が下火になるのは避けられないと思います。不景気になれば、お金が動かなくなります。そうすると不動産も動かなくなります。これは私達にとって深刻な事態です。不動産が動かなければ、土壌調査をする必要もなくなるからです。土壌調査の業界は大きく分けて、マンションなどの建設現場と、専門性の高い調査が求められる工場内の2つに分けられます。今はゼネコンの建設工事もあちこち停まっていますし、工場でも新しい設備を導入したり、新しいラインを立ち上げたりすることに二の足を踏むようになっています。これまでは得意領域が違うこともあり、上手くすみわけしてきた両者ですが、今後は仕事を求めて侵食してくるのではないかと心配しています。その一方で土壌調査・浄化はクライアントに取って直接的な利益につながるわけではないため、後回しにされがちです。景気が長期に低迷するようだと、本来浄化できたはずの土壌汚染が見逃されるなど、環境への悪影響が懸念されます。

―会社として何か取り組みが進んでいることがあったら教えてください。
以前は、同業界の小さな会社で働いており、そこから「規模の大きな現場もやってみたい」と思い、今の会社に転職してきました。コロナの影響で多少の減収はあるかもしれませんが、ライフラインに関わる水処理にも取り組んでいるため、会社全体で見れば被害は軽微です。むしろ、オンラインを活用したシステム化、AIの導入など「これをきっかけに、もっと強くなろう」と業務改革が強力に推し進められています。どうしたらもっと効率的に進められるか。横断的なプロジェクトが経ち上げられ、盛んに打ち合わせも行われています。以前勤めていた会社がこの状況下でも出社を続けているのとは対照的です。転職しておいて良かったと思うと同時に、今後体力のある大手ばかりが更に強くなって、中小企業が苦しくなるのではないか…と思うとちょっと心配になりますね。(Yさん/土壌調査)

<今日のコロナ>緊急事態宣言は水戸黄門で言うところの「印籠」に似ている。
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コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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