名付け屋タナカの怪奇事件簿

　アンタはこれまでの人生で、「名付け」をしたことはあるか？

　自分の子供でも、ペットでもいい。もしくは新商品に名前をつけたり、書いた物語にタイトルつけたりしたことはないか？　あとあれだ、気に入らない奴にやべー渾名つけてみたこととかは？

　例えばその斬新な色した料理の名前、なんだい？　「ホウレンソウとベーコンの胡麻油炒め」だァ？　正気か？　もっとなんかあんだろ、ルデヌィカョスゴとかどうだ？　ああ安心しろ、今のはサービスだ。

　名は体を表すという言葉があるように、名前は物を定義する。正体不明のモノはなんだって怖い。だから子供が生まれたらすぐに名前をつけるんだ。そいつを定義するためにな。

　とにかくだ。名前ってのは下手すりゃその一生を左右するくらい大事なもんで、だから俺みたいな専門家が求められる。シロートがなんとなくつけた名で生活するには、世の中はあまりに厳しいからよ。

　……なんだよその顔。さては疑ってんな？　上等だよ、なら俺の武勇伝を聞かせてやる。

　いいかよく聞けよムルノオコスタネ。これから話すのは、俺が最初に手掛けた名付けの話だ。あン？　ムラタオオクワガタじゃねぇよ。ムルノオコスタネだ。お前の名前。俺が今つけてやった。ちなみにこれもサービスだから安心しろ。

　さて、ムルノオコスタネ。ありゃァもう15年ほど前のことだ。ソイツは突然、俺の目の前に湧いて出た。ちょうど、さっきのアンタみたいにな。

　えェ？　湧いたのは俺のほうだって？　バカなこと言って俺の話を遮るんじゃねぇよ。

　俺は……いや、俺とソイツは、その名前ひとつのために1週間も荒ごとに巻き込まれるハメになったんだ。まぁ俺もアイツも若くて血の気が多かったし、経験も少なかった。仕事も女もな。だが、だからこそ、あのスゲェ名前がつけられたんだと思う。

　さて、どこから話したもんかな。とりあえず……俺のつけた最高の名前から教えてやろう。

　そいつの名はジャッキー。ジャッキー・チェンってんだ。

(つづかない/800文字)

800文字でオチてしまった……。
逆噴射小説大賞のたびに思うんですが、タイトル考えるのってチョー難しいですよね。