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雛崎さんちの幽霊家族

 包丁、ハサミ、カッターナイフ、爪切り、髭剃り、カミソリ…ありとあらゆる刃物が空中で静止し、コハクに切っ先を向けている。

 ポルターガイスト。その中心にいるのは10歳くらいの少女で、憤怒の形相でコハクを睨みつけている。コハクは「またはじまった」とばかりに溜息をついた。それが少女の逆鱗に触れた。

「ばかぁーッ!」

 少女が叫ぶと、浮遊していた刃物が一斉にコハクに向かって飛んでくる。

「オンクリカラ、マトウギソワカ!」

 コハクは動じず、札を取り出して御経を唱えた。それを左の拳に貼り付け──

「ッッダァッ!」

 飛来してきた刃物たちを、拳の一振りでまとめて叩き落とした。

 身体操作の御経はコハクの得意分野だ。持ち前の体術と合わせて大抵の悪霊は黙らせられる。しかし、目の前のこの少女は違った。

「もーーなんで防ぐのーー!! ばか! ばーか!」

 再び刃物が浮き上がる。コハクは溜息と共に呟いた。

「いい加減にしてくんないかな、姉ちゃん…」

(つづく)

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