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有限会社うまのほね 第1話「学校の七不思議」 Part10

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前回のあらすじ
 ひょんなことから「ベートーヴェンの呪い」の正体を突き止めたハルキ。子供たちの夢を尊重しつつも、ハルキはそれを利用して「血まみれのドローン」の解明を始めた。

 赤いドローンは、3号棟の3階を飛んでいた。底部のカメラとライトを忙しなく動かしながらゆっくりと巡回するそれは、廊下で動く影を発見した。赤いドローンはライトを向けて、対象を照らす。

 照らし出されたのは四足歩行の、小型のキリンのような形のロボット。側面には"キ33"と番号が印字されている。そのフロアを担当する警備ロボットだ。首の先端のカメラで、赤いドローンをじっと見つめている。

 赤いドローンは"異物でない"それをスルーする。カメラとライトを動かし、巡回を続けるべく、警備ロボットの頭上を飛び去る。

 ──次の瞬間、警備ロボットが跳び上がった。

***

 ガッッシャン!

 スピーカー越しに聞こえた音に、俺は思わず顔をしかめた。キリン型ロボット<キ33>の首が赤いドローンを打ち据えた音だ。

「やった!」「よし!」

 カンタとタロウが歓声をあげる。俺は冷静に二人に返した。

「勝負はここからだ」

 俺は肖像画ディスプレイを睨む。そこに映っているのは、赤いドローンがキリモミする様子──それは、<キ33>のカメラ映像だ。

 ──音楽室のベートーヴェンの肖像画が電子ペーパーで、それがパソコンと接続されていた。そのパソコンから、俺は警備ロボたちの管理コンソールへとアクセスし、ロボットたちのマニュアル操作権限とカメラ映像を取得したのだった。

 ……本当は直接赤いドローンの権限を持てれば最高だったのだが、どうやらヤツは"野良"らしい。まぁ、想定内だ。

 全てのロボット、ドローンのカメラ映像を元ににっくき赤ドローンを発見した俺は、一番近くにいた警備ロボット<キ33>を操作して現場に向かわせ──その先は、先程の通りだ。

 カションカションカションカション……

 スピーカー越しに聞こえる足音は、<キ33>の内蔵マイクが拾っている音だ。カメラ映像を頼りに、俺は<キ33>を"目的地"まで移動させる。

「なんかFPSでもやってる気分──」

 ヴヴヴヴヴヴヴガッッション!!!

「うおっ!?」「うわぁっ!?」

 俺の言葉を遮って、派手な音とともに映像が大きく揺れた。赤ドローンの体当たりだ。

 <キ33>はぐらついたが転倒は免れ、歩行を継続する。正面に敵影。サイドステップで回避。加速。廊下の角を曲がり、階段に向かって<キ33>を走らせる。後ろからプロペラ音が聞こえてくる。付かず離れずだ。

「へっへっへ。元ゲーマーをナメるなよ」

「おっちゃん、なんか楽しそうだね」

「まぁな。それより、そろそろ2階に着くぜ。カンタ、タロウ、準備だ」

「「あいさー!」」

 ──さあ、反撃開始だ。

(つづく)

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