魔法少女ミズハノ☆ウォシュレット
我が家のトイレのカレンダーには、日付の下になにかの格言が書いてある。
例えば1月6日は「明日を信じる」とか。1月21日は「ムダをはぶこう」とか。別にその日に因んだ一言とかではないようだ。1月1日は「正しい姿勢で」だし。
そこでふと気になって、僕は自分の誕生日を見てみた……のだけど。
後ろを見ろ
「……は?」
いやおかしいだろ。なんだこれ。後ろ? 反対側の壁? なんで?
押し寄せる恐怖心。でもその最中に、好奇心。僕は大きく息を吸い込んで……ひと息に、振り返る。
下
「……おう」
壁に、1文字。さっきトイレに入ったときはこんなものなかったはず。なかった……よな?
それに従って、僕は視線を下ろす。足元には付箋紙。手書きの文字。
鍵を閉めて
「鍵?」
ドアの鍵は、閉めていたはず。僕がそう思った、その時だった。
ガチャガチャガタガタガタガチャ
「っっっ!?」
扉が、ドアノブが、揺れる。誰かが外から開けようとしている!?
「ちょ、なに!? おかん!? 待って怖い怖い怖い!」
声をあげるも返事はない。扉の揺れは激しさを増し、家全体を揺らさんばかり。そのせいで戸棚が開いて、トイレットペーパーやらが落ちてきた。と──
窓を見るな!
文字が、見えた。窓? 便座に座ったままの僕からすると、真後ろ。見るな? なにを? と、混乱する僕の視線の先。
窓から差し込む光に、影がかかった。
ゆらゆら揺れている。こちらを覗こうとしているかのように。
なんか、いる!
トイレの揺れは激しさを増す。窓の外には謎の影。カレンダーが落ちた。カレンダー。そうだ、これが発端! なにかヒントがあるのでは──
ミズハノメを呼び流せ
「ミズ、ハノメ?」
でも流すには窓の方を向かなきゃならない。そもそもミズハノメってなに?
流せ
「わ、わかったよもう!」
僕はヤケクソ気味に振り返り、水洗レバーを引く。視界の片隅、窓には血の手形。蜥蜴のような瞳が僕を見た。
直後、ジャァッと水が流れて。
僕はそこに吸い込まれた。
(つづく/800文字)
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