見出し画像

神器戦士ミツマナコ(Prototype)

「その鏡を寄越せ、クソガキ」

 その男は威圧的に言いながら、大斧を担いで歩み寄ってくる。漆黒の装束が、ボサボサの黒髪と共に風に揺れる。まるで冥界の使者だ。怖い。だけど……。

「い、嫌だ……!」

 僕は両手で<神器>を抱き締めて、黒い男を睨みつけた。脳裏を過るのは、神主様の優しい声。

 ──ハル。お前は本当に強い子だ。

 ──お前がこれを使うんだよ。これで、皆を守るんだ。

「僕は……僕は、この神器を託されたんだ……!」

 僕は震える脚で大地を踏みしめ、叫ぶ。

「この川を、森を、村を……守るんだ……!」

 僕のそんな言葉に、黒い男が立ち止まった。そして目を細め──呆れたように、口を開く。

「……やめろっつっても、聞かなそうだな」

「僕は、戦う……青龍様の代わりに、戦うんだ!」

 そうして僕は、手にした神器──<龍咫ノ鏡>のための祝詞を唱えた。

「オンアクキュウゾウ・マトウギソワカ! <龍咫ノ鏡>、かの敵を滅ぼす力を、我が手に!」

 その言葉に応えるように、神器から光が溢れる。青き光は僕を包み込み──

 ボギン。

「……え」

 僕の腕が、砕けた。

 ボギン。ゴキゴキゴキ。

 肩が、脚が、肋が。砕かれ擦り潰された。粉砕は一瞬。そして──激痛が、押し寄せる。

「ッッッああああ!?」

「だから言ったろ。それは神器なんかじゃねぇ」

 黒い男の声が聞こえる間にも、僕の身体はすり潰されていく。激痛と共に、全身が違うものになっていく感覚が僕を襲う。

「アアアアアア!!!!?」

「代わりの者……それも子供が変異するは初めて見るな」

 黒い男の方から、知らない声がした。

「ああ。なかなか小賢しいっつーか……気に食わねぇな」

 黒い男は低く、唸るように言葉を続けた。

「このガキを殺すわけにはいかねぇ。洗いざらい話させる」

 霞む視界の中で、黒い男が大斧を掲げるのが見え──そしてそいつは、力強く宣言した。

「行くぜセンブ。まずは魔器<泥蛇ノ鏡>を破壊する」

 その額の第三の瞳が、紅く輝きを放った。

(つづく/800字)

ボツにしたけどせっかく書いたので供養。

ボツ理由としては、
 ・「はじまり」としては唐突すぎる
 ・神器(魔器)が少年を食うシーン、インパクトが弱い
 ・変身したら事件が解決したようなもんでは?
 ・"神主様"の不穏さをもっと出したい
 ・"途中から不穏にする"にしては落差が足りない

……ってなところです。
このシーンはその一部を本連載の際に使うと思います。

本編は不定期で連載をしたいなーとは思いつつ、他作品とのバランス見合いですね。なにはともあれ、お楽しみに!


🍑いただいたドネートはたぶん日本酒に化けます 🍑感想等はお気軽に質問箱にどうぞ!   https://peing.net/ja/tate_ala_arc 🍑なお現物支給も受け付けています。   http://amzn.asia/f1QZoXz