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ショートショート【1UP】

みんなは1UPって知ってる?
知らない人もいるだろうからそんな人のために言うね。
1UPっていうのはゲームとかでプレイヤーが操作しているキャラクターの残機が増えることなんだよ。
残機っていうのはキャラクターがどのくらい残っているかってことなんだ。つまりあと何回死ねるかの数字でもあるんだよ。


僕は子供の時からゲームが好きだったからさ、1UPや残機を身近に感じていたんだ。

1UPするときってどんな感じなんだろう?
残機があるってどんな感じなんだろう?

子供の時はこんなことを常々思っていたね!
でもみんなも子供の時はこういうこと想像してなかった?

ただ僕は大人になっても思っていたよ!
馬鹿にはしないでほしいな!純粋な心を持っているとでも思ってほしいよ!


まぁそんなことを思いながら日々を生活していたんだけど、ある日のこと

道を歩いていると前を歩いてたおばあちゃんが突然倒れたんだ。何事かと思って近寄ると胸を抑えてすごく苦しそうにしてたんだ。
すぐにおばあちゃんに「どうしました!?」って尋ねたら「薬…薬を…」って言うんだ。
だからおばあちゃんのカバンを探して薬を見つけたんだ。ちょうど僕は水を持ってたからおばあちゃんに薬を飲ませることができたんだ。でもそれだけだと不安だから近くの病院までおばあちゃんをおぶって連れて行ったんだ。
おばあちゃんはなんとか助かることができてほんとによかったよ。おばあちゃんからも「あのとき突然持病が発症してしまってあのまま誰も来なかったらもしかしたら死んでたかもしれない。ほんとにあなたは命の恩人です!なんとお礼をしたらいいのやら、ありがとうございます!」って言われたんだ。

その時僕の頭の中で変な音というか音楽が鳴った。どんな音かっていうゲームに出てきそうな音でその時は空耳かなとでも思ったんだよ。


その後家に帰ってふと鏡を見てみると僕の頭の上に【2】って数字が出てたんだ。何だこれって思って触ってみようとしても触れなかった。
次の日友達に会ったときに「僕の頭の上に変なのあるんだよ何かわからない?」って聞いてみたんだ。そしたら友達が「ん?なんのこと?ホコリとかついてるの?」って言ってきたんだ。
どうやら他の人には見えないみたい!

その日僕は考えまくった。なんの数字だろって。あの時鳴った音楽。ゲームっぽかったよなぁ、ていうか子供の時やってたゲームの1UP音に似てたんだよなぁ。
ん?!もしかしてそれか?!1UPしたのか?!いやいやいや、そんなわけないか。
そんなゲームみたいなことが現実になんて。でも音は鳴ったし実施に数字が見えてるしな。

ほんとに1UPかもしれない!
子供の時からずっと憧れてて良いことをしたからきっと神様が残機を与えてくれたんだ!

残機だとしたらどう使うかが大事だぞ。
1回は死ねるってことだもんな。
慎重に使わないと。

銀行強盗にあったときに犯人に立ち向かったり。
火事の中取り残されてる人を助けに行ったり。
海で溺れてる人を助けに行ったり。

いろんなことができるぞ!
これで僕はヒーローになれるんだ!

次の日も生活してる間こんなことをずっと考えてたんだ。だから気が付かなかった。
赤信号の横断歩道を渡っていたことを。

気がつくと僕は車に轢かれていた。
だいぶ吹き飛ばされたみたいで身体中のあちこちがものすごく痛い。
意識もどんどんなくなりかけてるのがわかる。
これが死ぬってことなんだな。

でも僕には残機がある!
こんなところで使うのはもったいなかったけど残機があってよかったな。

ふとカーブミラーを見ると僕の頭の上の数字が【0】になっていた。


え?!0?!
残機使い切った?!
一昨日まで2だったよね!
なんで?!
残機じゃなかったの?!
じゃああの数字はなに?!



あっ…余命だったのか

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