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日本最古のクラシックホテルに泊まりました(日光金谷ホテル、2020年9月)

現存する日本最古のクラシックリゾートホテル、日光金谷ホテルに泊まりました。(その前に日光星の宿にも立ち寄っています)

その歴史については公式ホームページで説明されているのでそちらを参照して頂きたいです。軽く100年以上経っています。えらいことです。

行く前に注意です。日光金谷ホテルには大浴場がありませんし、温泉も引かれていません。奥日光の日光湯元温泉は788年が発祥とのことですが、日光金谷ホテルのある、いろは坂を登る前の神橋近くでは1987年(昭和62年。「日光星の宿」のホームページによる)に発見されたばかりのようです。当然、それは日光金谷ホテルが建つ、ずっと後の話です。

日光金谷ホテルには泊まりたいけれど、折角だから温泉にも入りたい。そこで、考えました。

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金谷ホテルの横にある『日光 星の宿』では、昼食や日帰り温泉(15:00まで)のサービスを行っているのです。

ならば星の宿でお昼の懐石料理を食べ、温泉に入ってから金谷ホテルにチェックインすれば完璧ではありませんか。
(星の宿にそのまま泊まるのもお勧めです)

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星の宿では湯葉懐石を頂きました。お値段はそれなりですが、東武日光駅~神橋間に並ぶ老舗の湯葉料理屋と比べると、同じ位か、ちょっとお安い位だったりします。それでいて、食事を取った方は、日帰り温泉の入湯料が500円値引きになるのでお得です。
味も大変良かったです。湯葉の濃厚で、やさしい味がもう最高ですね。食べ終わったと思ったら天麩羅まで出てきていっぱいです。

風呂はですね……極端に大きくはありませんが、檜風呂です。半露天風呂といった感じで雰囲気良しです。ホームページによると鹿も来るとか書いてありますね。ああ、温泉だ。これを待っていた。ちょっと熱めですが、そういえば奥日光の温泉はどこも熱いです。記憶では温度調節間違ってないか、というような熱さの湯もあるにはあるので、まだ全然マイルドだと思います。慣れてきたら、良いですね……。

こちらを出てからさらに坂道を登って金谷ホテルに入るのですが、なんか自分の蒸気でびしょびしょに濡れてしまいまして。日帰り温泉もいいけどよく休憩してから入った方がいいですね。変な客ですみません。

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さて、金谷ホテルは坂の先にあります。

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この風格。クラシック! こういうのが欲しかった。入口は現在めっきり見かけなくなった回転扉です。ドアマンが受付まで案内してくれます。ああ、赤い絨毯、木目の暗い色調、東照宮のような彫刻の数々。……はぁあああ!

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お部屋は別館です。特筆すべきは天井の高さ。こんなに天井を高く取った客室というのは、他で見たことがありません。このお陰で部屋が随分大きく見えます。格子状に組まれて、白塗りなので、古い銭湯みたいだ……。広く取られた窓から見える緑がまた美しいです。そして何より素晴らしいのは、これだけ年季がかかっているというのに、部屋に虫一匹、蜘蛛の巣一本見られないことです。小姑みたいな観察をしてしまいますけれど、旅館に置かれたコップやアメニティの埃などでも色々分かった気がしてしまうのです。でも、綺麗です。流石です。部屋が完全に管理されています。個人的に一番評価したい点です。

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カーテン代わりの襖を閉じると、部屋の重厚感が倍マシです。
「殿」という感じがします。

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部屋から出て、散策してみましょう……壁に掛けられているのは、日光金谷ホテルの歴史、かつて存在したクラシックホテルの数々、今まで泊まった有名人の宿帳(絶対紳士ウィンザー公や、アインシュタイン、フランク・ロイド・ライト等、圧倒的な面々)……です。
情報量が凄すぎて全部読めないです。

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とりあえず写真で伝わって欲しい。

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外に出て裏側を見ると、神社で見られる赤い手摺があります。やはり宮大工的な造りです。東照宮に合わせたとも言えますが、高級な建築というと、当時はやはり寺社の方向になるのでしょうか。

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夕食の時間です。またとない機会なので、100年前に提供された料理を再現する「クラシックディナー」を選びました。料理が来る度に、その歴史的経緯も説明して頂けます。料理や、笹竜胆の家紋が施された食器や、食堂そのものにも、語れる由来があるのです。

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記憶の限りですが……

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「湖の黒ダイヤ レモン添え」
キャビアのサラダです。当時は日本でキャビアを採ることができなかったため、外国から来た客が自ら持ってきたキャビアを盛り付けて提供していたのではないか……とのことです。ええと……キャビア、初めてなんですが。塩漬けした魚卵という味がします。すみません。自分の舌ではここまでです。

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「コンソメスープ」
香草(だったと思う)を使う、実にあっさりとしたスープ。
コンソメですけど、薄い醤油スープのようにも思える味です。
浮いているのは、豆腐、上にアスパラ、パプリカ……ですね。
本来は、幸運の象徴であるニワトリのトサカが乗っていたところ、現代に近づくにつれて不評になってきたために、赤いパプリカで見立てているのだそうです。縁起ものです。

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「日光虹鱒のソテー金谷風」
これです! 金谷ホテルの代表的メニュー。中禅寺湖畔ボートハウスがレストランだった頃にランチで食べましたし、10年以上前の鬼怒川温泉ホテル(こちらも鬼怒川系の金谷ホテルです)のバイキングでも出てきた記憶があるのですが、これはそうした記憶よりも大きな虹鱒です。これが食べたかった。
ソースは検索してみたところ醤油、みりん、お酒が材料らしいのですが、甘めで懐かしい味です。ただ、当然ながら甘露煮等ではないので、骨は避けないと刺さります。そんなわけで、フォークは左、左固定! などと無理してやっていたら、骨が刺さりました。
しばらく苦しんでいたのですが、誰も悪くない。はしたないです。
大変美味しい記憶の味でした。

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「蟹コロッケット」
初代料理長(だったと思う)が考案した料理だそうです。これが美味かった……! 蟹肉がしっかり入っていて、これまた甘めのソースで、もう一つぐらい食べてもいいです。今回一押しかもしれない。良かった……。

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「牛フィレのステーキ」
まだ料理は続きます。お次はステーキ。
焼き加減は選べるので、ミディアムで頼みました。
柔らかい……いいお肉ですね。

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「キジのロティ」
まだまだ料理が来ます。肉の中にあるのはトリュフの欠片です。
ちょっとね、お腹一杯になってきました。
でもあの、美味しいです。

「野菜サラダ」
これも歴史的な物のようです。
刻んだ野菜の入ったサウザンドレッシングが、美味しい。

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「プリン」
だんだん受けた説明の記憶が定かでなくなってきました。
カラメルが苦めで、クラシックなプリンです。
最後にコーヒーを飲んで〆です。

ボリュームありました……“歴史”そして“文化”を体験した感があります。
案内された窓際の席の雰囲気も……とにかくディティールがあるんですよ。

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食後はバー「デイサイト」に寄りました。
バーとか、今まで行ったこと無かったんですけどね。
飲みやすいウイスキーということで、マッカラン12年というものを飲みました。もしかして、一緒に出された水で割るものだったかもしれません。そのまま飲んでしまった……木樽の香りが広がりましたね。削った天然氷が、グラスの中で溶けてカラリと転倒する様子が美しかったです。
意匠から、フランク・ロイド・ライト設計ではないかと言われる暖炉も観察することができました。日光彫のテーブルも綺麗です。

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カクテルを選んでも良かったかもしれませんね。
真ん中の緑色のカクテルが「金谷ホテルスペシャル」です。

そしてシャワーを浴びて就寝ですが、ちょっと寝慣れない感じではありました。ギシギシした音も時々聞こえるんで、こんな時は耳栓です。
空調音が大きいホテルもよくあるため、耳栓は常に役立ちます……。
高い天井に忍者が居る気がしてなりませんが、構わず目を瞑りました。

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翌日の朝食は卵料理です。
目玉焼きからスクランブル、オムレツまで、5種類もの中から焼き方を選ぶことができます。添えられるお肉もソーセージ、ベーコン、辛みソーセージから三択。飲み物も選べます。オレンジジュースを選んだところ、フレッシュでした。美味い。

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パンに付けるジャムはマーマレードとフランス産木苺の二つです。
もちろん全部残さず付けて食べましたとも。

さて、チェックアウトです。
立派な領収書を頂きました。
これからいろは坂を登って、中禅寺湖を観光するとしましょうか……。

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推しは推せるうちに推せと言いますが、クラシックホテルは泊まれるうちに泊まれ! とも言いたいです。根拠の無い事を言いますけど、クラシックホテルには、若い方があえて泊まるのをお勧めします。温故知新と言いますし、古い物から、新しい何かが見いだせるかもしれません。
文化的体験をすることができました。


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