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ラナプラザだけじゃないアパレル縫製工場事故

こんにちは、台湾正規留学からプラハで一年の交換留学中のTasukuです。

今月4月は、明日11日で、今回の記事でも紹介する2005年のダッカ縫製工場崩壊事故から18年、今月24日でダッカのラナプラザ崩落事故から10年という節目の月です。

今回は、本Note開設初期に紹介した、ファッション業界最悪の悲劇、ラナプラザ崩落事故に関連して、その他過去に起きたアパレル縫製工場の痛ましい事故について紹介していきます。ラナプラザ崩落事故に関しては、下の記事で紹介しています。

これらの事実を知り、自分の衣生活を見直すことは、これからのグローバル社会において非常に重要であり、この記事をきっかけに、一人一人の消費生活を見直すきっかけになれば幸いです。

1911年:トライアングル・シャツウェスト工場火災

アパレル工場の災害における歴史は古く、時代は第一次世界大戦前のアメリカに遡ります。

1901年創立、ニューヨーク中心部マンハッタンの10階建商業ビル、ブラウンビルディングの8〜10階部分は、女性用ブラウスを主に製造していたトライアングルウェスト社の縫製工場となっていました。

当時工場では500人程度のイタリア・ユダヤ系移民女性が働いていました。従業員たちはここで平日1日9時間に加え、土曜日も一日7時間を超える長時間労働を課されていました。

1911年3月25日、凄惨な事故は起こってしまいます。建物8階作業場から起きた火は瞬く間に燃え広がり、工場となっていた9、10階を巻き込んで、勤務終わり間近の従業員たちに襲い掛かります。従業員たちは直ちに脱出を試みようとしますが、建物には非常口が1つしか設置されておらず、さらに消火活動の最中、この唯一の脱出口は火で崩れ落ちてしまいます。これにより従業員たちは逃げ場を失い、火に飲まれたり建物から飛び降りるなどして、146人もの命が奪われてしまいました

後の調べから、火元は8階作業台下のゴミ箱に捨てられた不始末のタバコかマッチであることがわかっています。当時ゴミ箱には作業台で裁断された布の切れ端が積み重なっており、それらに火が燃え移ったことで、瞬く間に火が燃え広がったとされています。

事故以前から縫製工場での労働環境の悪さは問題視されており、工場労働者による環境改善を求めたストライキたびたびが起こっていました

ニューヨークの中心部で起こったこの悲惨な事故を目にしたニューヨーク市民をはじめ、このニュースを知った全米国民はひどく心を痛め、大規模な女性移民の権利改善の抗議運動にまで発展します。

1911年トライアングル・シャツウェスト工場火災

2005年:ダッカ縫製工場崩壊事故

前の記事では、2013年のダッカ近郊のラナプラザ崩落事故を紹介しましたが、この事故がバングラデシュにおける初めての縫製工場崩落事故ではありません。死者の数からこちらに注目が集まりがちですが、2005年にもラナプラザと同様の事故が起きています。

スペクトラムビルディングという名称のこのビルは、9階建の商業ビルで、ラナプラザと同様、違法な増築が行われていました。

事故当日、4月11日、建物一階に設置されていたボイラーが爆発を起こし、9階建のビルは崩落しました。この事故により、建物内で働いていた従業員64名が死亡、80人の負傷者を出しました

この事故が起こってしまったにも関わらず、バングラデシュにおける縫製工場で、その後目立った工場の環境改善は行われず、その結果、8年後に死傷者3500人以上を出したラナプラザでの崩落事故が起こってしまったのです。

国際的なアパレル企業が従業員の安全を保証する声明を発表したのは、この事件から8年後のラナプラザ崩落事故が起きた後でした。

2012年:ダッカ縫製工場火災

2012年11月24日、ダッカ近郊のアシュリア地区にあるタズリーン縫製工場(Tazreen Fashion factory)で、配線トラブルと見られる火災が発生しました。この事故により、117人の命が犠牲となり、200人以上が負傷しました

事故後の調査により、この工場は同年6月に建物の安全証明書の期限が切れており、その上工場の責任者が火災訓練であるとの虚偽の発言で、従業員を工場内にと停めておいたことが発覚しました。これを受けて、バングラデシュ警察は工場のオーナーで責任者であったデルワー・ホセイン(Delwar Hossain)氏を逮捕し、翌年ラナプラザ崩落事故があった後、裁判の結果有罪が認められました。

バングラデシュで工場の責任者が逮捕されるのはこれが初めてで、一連の労働環境改善を求める抗議デモや制裁処置をとった欧米圏の国々に対応する形を取ったと見られています。

2012年ダッカ縫製工場火災

2012年:パキスタン工場火災

2012年9月11日、パキスタン第二の都市カラチにある縫製工場、カラチ・バルディア・タウン工場(Karachi Baldia Town factory)と、パキスタン北部のラホレにある靴工場の二か所で同日に火災が発生しました。

カラチの工場では非常口が塞がれたことを一因に、従業員の避難が遅れ、289人の命が奪われ、ラホレでは25人の命が奪われました。合計300人以上の死者を出したこの火災の原因は未だ定かでないものの、カラチを拠点に活動していた政党MQMの関与があったテロ攻撃であった可能性があると報道されています。

私たちにできること

ファストファッションが誕生してから、ファッション業界のサプライチェーンは急速に複雑化しました。価格に敏感な消費者に対応するために、企業はコストの最小化に迫られ、消費者から遠のく製造工場において、どんどん製造にかかるコストを削減してきました。その結果、労働者の待遇は悪くなる一方で、工場の安全もケアされなくなってしまい、数々の悲惨な事故を引き起こしてきたのです。

アパレル企業の工場は、今や先進国の私たちの目に届かない途上国に所在し、どのような運営形態を取っているかを消費者が確認する術は限られてしまっています

過去の事故の犠牲者たちの声を私たちが汲み取って、消費者側からサプライチェーンの透明化や労働環境の改善を企業に求めていくことが、私たち消費者に課せられた責任であり、義務であると私は感じます。

私たちが普段手に取る商品の価格の裏に隠された背景を読み取り、思考する事で、遠く離れた途上国で働く労働者の権利を守り、誰もが幸せに働ける環境を実現することにつながります。安い商品を見つけて、衝動買いをするのではなく、一旦立ち止まって低価格が実現できる要因を考えてみませんか?

こういった問題への対処法として、私たち消費者がファッションの楽しみを損ねることなく貢献できるものの一つが古着の利用です。詳しくは下の記事で紹介しているので、そちらも併せてご覧ください。

最後に、

私のNoteでは、サステナブルファッションに関する記事や留学に関することなどを中心に情報発信をしています。今回の記事でサステナブルファッションに関して興味が湧いたという方は是非他の記事も一読ください!

また、私が運営するポッドキャスト番組「チェコっと放浪旅」では、台湾留学で出会った世界一周旅行中の友人とお酒を飲み交わしながら、国際問題や留学、世界一周旅行に関する話題など、海外生活で生まれた生産性のあるお話をお届けしています。毎週木曜日に更新していますので、興味のある方は是非、そちらの方もチェックしてみてください!


古着の可能性を世の中へ、
著:Tasuku

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