見出し画像

ボクシング界で、いつまでも修正されないままの逸話

ボクシングにおける逸話で、いつまでたっても修正されず、さも事実であったかのようにされたままのものが幾つか存在している。いい加減イライラしてきたので、ここに自身の見解を兼ねた備忘録として書き記しおく。

今回はガッツ石松が世界タイトル奪取した対ロドルフォ・ゴンザレス戦を裁いた主審、ラリー・ロザディーラについて。

アメリカ人レフリーのロザディーラ主審は、長らく「倒れたゴンザレスを助け起こした悪徳レフリー」とされているが、アメリカ人である彼が、メキシコ人世界王者であったゴンザレスを日本のリングで助け起こす義理などどこにも存在していない。

実際、石松の見事な左フックカウンターから続く連打でゴンザレス1度目のダウン。そして問題の「助け起こしシーン」はこのあとの「幻の2度目のダウン」でおとずれる。

詰めに入った石松がハイスパートな連打をゴンザレスに浴びせるなか、焦ったか右手でゴンザレスの後頭部をホールドしたまま左アッパー数発を繰り出す。この流れの中での左アッパー自体は致命打となったようには見受けられないが、ゴンザレスは明らかにそれまでのダメージを引きずった状態で倒れてしまう。

このダウンを、ロザディーラ主審は石松のホールドによってゴンザレスが引き倒されたと見なし「ダウンじゃないから、さあ立ちなさい」と仰向けに倒れたゴンザレスの手を引っ張りあげ、そして立たせ、ファイトを促す…

これがロザディーラ主審をいつまでも「ゴンザレスを助け起こした悪徳レフリー」のままにしているシーンなのだが、冒頭でも書いたが、中立国であるアメリカから召喚されたロザディーラ主審が、世界的にはスーパースターでもなかったメキシコ人王者のゴンザレスに忖度して、日本のリングで助け起こす義理などない。勝負が決したあとのリング上でも、石松が勝とうが、ゴンザレスが負けようが、どちらでも良いといった立ち振る舞いに見える。まさに中立国レフリー!

まだ世界的にもレフェリングが雑だった時代の出来事である。ロザディーラ主審が甘かったとすれば、ダウンと見なさなかったとしても、ゴンザレスの腕を引っ張り上げるべきではなかった。あの状況下では選手の体には触れてはいけない。百歩譲るとしても、腕を引っ張るなかで、ゴンザレスからファイトする、立ち上がる意志を感じ取れなかったのであれば、即座に腕を離してカウントを数えるべきだったろう。実際、この時点でのゴンザレスは完全グロッキーで、腕を引っ張られながらも「もうたくさんだ」といった表情をしている。

この一連の流れにより、ロザディーラ主審は当時の日本メディアから「ゴンザレスを助け起こした悪徳レフリー」との烙印を押され、そのまま放置され、今となっては「どうだっていい」古い時代の出来事、断絶シーズンに突入してしまった。

だが、筆者は修正せずにはいられない。ロザディーラ主審の動きからは、とりわけゴンザレスを助けようとする意思は微塵も感じ取れないからだ。注文をつけさせていただくとすれば、当時の日本メディアに対してだ。

彼にはこう烙印を押すべきだった。

「2度目のダウンをダメージと見抜けなかった未熟なレフリー」と。

まだ放置からとうに断絶シーズンを迎えた間違い逸話はある。気が向いた時にでも書こうと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?