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絵本探求講座 第2期、第4回講座を終えて

2023年1月22日(日)絵本探求講座 第2期(ミッキー絵本ゼミ)第4回講座の振り返りをします。

音としての言葉の絵本を考える

・オノマトペ
・唄、歌、わらべうた
・マザーグースの絵本
・言葉遊び
・繰り返し
・だじゃれ
・方言
・昔話(結句)

オノマトペとは

  1. 擬音語動物の鳴き声や、ものがたてる音を言い表した言葉     「ニャー」「ワンワン」「バタン」「ドカン」
    日本語以外にも見つけることが出来る。「bowwow」

  2. 擬態語ある感情や状態について、そのもの自体には音がないのだけれども、その様子を音の間隔を利用して表現したもの。日本語特有の感覚。
    「どきどき」「ピカピカ」「キラキラ」「フラフラ」
    『k』で始まる音…鋭さ、明るさ、高さを表現することが多い。
    g』で始まる音…鈍さ、暗さ、低さを表現することが多い。

  3.  オノマトペの意味変化「いらいら」植物の刺を「いら」と呼び、刺が出ている様子を「いらいら」という。その言葉が転じて、不快な刺激や不快なことで神経が高ぶる様を「いらいら」というようになった。

  4. 擬音語から擬態語への推移「はたはた ばたばた」「きりきり ぎりぎり」

参照:『感じる言葉オノマトペ』小野正弘、角川選書、2015、pp9-18

※ミッキー先生から…日本語として定着しているものと造語として新しく創ったものとは違う。「てにをは」と同じで耳から聞いたもの、理屈ではなく感覚を持っていて、母語形成に大事である。造語として楽しんでいいが、単に楽しいだけではない擬態語として母語として身に着けていく意味がある。

『なんげえはなしっこしかへがな』を読んで(考察)

『なんげえはなしっこしかへがな』
文:北 彰介  絵:太田大八 BL出版 2018年11月20日

「長いお話を話してやろうかな」というタイトル。津軽弁で語られる昔話が7篇 
  1. 「栗の実」は、落ちるごとにカラスが鳴き、すべて実が落ちるまで1年と3日かかった話。ガアってば ポタン、ガアってば ポタン。ガア ポタン ガア ポタン

  2. せみと山ばとの「なぎくらべ」は、2年と13日経った今でも泣き続けているという話。せみぁ ミン ミン ミンってば、やまばとぁ デデッポッポ

  3. 「へび」は、長い長いへびが山の向こうに遊びに行く話は、3年と23日。ズルズルズル、ズルズルズル

  4. 「くまんばち」は、蔵の中にくまんばちが巣を作って節穴がポロリンコと開いて、そこから1匹ずつ出ていく話は、5年と35日。ブーン ブーン ブンブンブン

  5. 「かっぱ」は、88,888匹の河童の子どもが、泳ぎを教えてもらうお話。ドボン スイスイスイと岩から川に飛び込むのに8年と88日

  6. 「かみなりさまのふんどし」を引っ張ってしまった人間のお話は、雲の上の雷様がジャブラン ジャブランとふんどしを洗濯し、干します。そこへそよら そよらと風が吹いてきて、ふんどしがヒラーリ ヒラーリと飛んでいきます。ヨイコラセ ヨイコラセッセと畑仕事をしていた田吾作の頭の上に白い布がフワラ フワラと降りてきます。自分のふんどしを作ろうとヨイコラセ ヨイコラセッセと引っ張ります。10年と93日

  7. 「鬼ばば」は、おしょうさまが鬼ばばに向かってタガズグ タガズグと唱え続けて、鬼ばばの背が雲までヒュル ヒュル ヒュルと伸びるお話。

  • 方言(津軽弁)「果てなし話」と言われる昔話で語られています。

  • オノマトペの同じ言葉の繰り返しで、どこまでも続く内容です。この繰り返しが子どもの心に浸透していくのだと思います。

  • 文章は、短いですが、津軽弁を知らなくても、オノマトペの音の響きは感覚的でわかりやすいです。その空気感やニュアンス、果てのない面白さがユーモアと共に伝わってきます。とても楽しいです。

  • 声色や発話の速さ、快いリズムなどで人の感情を乗せやすく劇場的な効果を作ることで子どもの感性をゆさぶり一緒に声に出して読むことにより魅力を増す言葉の絵本です。

  • 著者の北彰介さんは、子どものころ、おばあさんが語ってくれた津軽弁とともに昔話を記憶しているそうで、「方言の語り口の中に、昔話のおもしろさと生命力がひそんでいるように思う」とあとがきに書いています。その中には、オノマトペの効果が潜んでいると思います。オノマトペには読み手と聞き手のふれあいを楽しむことが出来ます。

  • 北彰介さんの記憶には、声と音と物語、そしておばあさんと一緒に過ごした時間活き活きと思い出として残っていると思います。

  • 太田大八さんの絵が素朴で味があり、オノマトペを含む津軽弁を引き立てています。

参考文献:『オノマトペの謎ーピカチュウからモフモフまで』

『オノマトペの謎ーピカチュウからモフモフまで』
窪園晴夫編 岩波書店 2017年5月19日

・日本語のオノマトペは、奈良時代から存在する。そして、オノマトペの意味も現在に至るまで刻々と変化している
オノマトペにも方言がある
・日本語には「身体感覚・感情」を表すオノマトペが豊富である
・日本語の猫は副詞で鳴き、英語の猫は動詞で鳴くと言われている
・子どもとオノマトペはとても親和性が高い。絵本はオノマトペに溢れている。
・童謡にオノマトペが多いのは日本語の特徴である
・オノマトペと赤ちゃん言葉の言語構造の音声構造においては酷似しており、大人の言語の骨格を作っているといっても過言ではない。
・ちまたでは、幼児語やオノマトペは子どもの言語の「正しい発達」を妨げるという根拠ない言説もあるが、それは発達心理学の観点からは全くナンセンスである。

『オノマトペの謎ーピカチュウからモフモフまで』窪園晴夫編 岩波書店

まとめ

オノマトペは、子どもを言語の世界に引き付けます。それによって子どもは言葉に興味を持ち、もっと聞きたい、話したい、言葉を使いたいと思います。オノマトペに親しむことで子どもの言語の様々な性質を学ぶことが出来ること、母語形成に大事であることがわかりました。オノマトペ以外の言葉や文法の仕組みを知っていく気っかけもつかんでいくと思います。
『オノマトペの謎ーピカチュウからモフモフまで』の中で、「子どもに言語を教えることは出来ない。言語は、子どもが自分でその仕組みを発見して覚えるしかない。その時、まわりの大人は乳児、幼児に上手にオノマトペを使うことで言語の仕組みを子どもが発見するのを助けることが出来るのである。」と書かれていました。繰り返し読む絵本だからこそ、ただおもしろいだけではない選書は大事だし、話す時も気を配りたいと思いました。
言葉の絵本は、子どものコミュニケーション能力が低くなったと言われる昨今、改めて注目されたいジャンルだと思いました。


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