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season2 3話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

3.『さかさまの彼女たち』


 翌日。朝食わいわいがやがや。

「オモテ祭りのフルーツ飴! なんとも不思議な味だったね!」
 ウキウキなブライアにヨーコも、
「りんごあめおいしかったですよ~」
「今日こそはゼイユさんとドキドキオリエンテーリング!」
「むしポケモン好きになってきたー。ヤンヤンマかっこいいよねー!」
「うちも思うー」

 ヨーコが男の子にうなずくと、女の子が、

「ヨーコ、看板どれくらい終わった?」
「2つー。スグリさんのおかげで1日で進んだ」
「へー、私達まだ1つだけど、ゆっくりいかせてもらうわ」

 支度する時、碧のお面を少し見つめ、巾着からリュックに移し替えるヨーコ。
 外に出ると、ゼイユが出迎えてきた。

「ヨーコ! 待ったわよ! 待ち合わせしてないけど!」
「ゼイユさん」
「ちょっと……、あんたに用があって。──昨日の……あれ! 誰にも言ってないでしょうね!?」
「あれ……? ああ、鬼さ……」
「おにぎり小僧! もう! 意外と性格悪いね! で? どうなの?」
「もちろん言うとらんよ」
「本当でしょうねー!? あんた嘘ついてたらドガース丸飲みだかんね!!」

 ヨーコ、ドガースを調べる。うえっ、てなる。

「階段で拾ったやつ持ってるでしょ。うちのじーちゃん村の歴史詳しいから、昨日のこと色々相談しようよ。うちの場所わかるでしょ?」
「うん」
「はやく来てじーちゃんにあれ見せてあげて」
「わかった」

 ということでおじいさんのところへ。

「おはようございまーす」
「おはよう、ヨーコさん」

 と、スグリ出てくる。

「ヨーコだ! おはようー」
「あ、おはよ、スグリさん」
「チッ、起きてきちゃった」
「看板、最後のいっこ行くー?」
「あ、えっとね」

 ヨーコ、話そうとするが、

「スグ! あんたどっか行ってな! ヨーコはあたしに用があんの!」

 ゼイユ叫ぶ。

「ちょ、ゼイユさん」

 止めるヨーコだが、スグリそっぽを向いて、

「何それ……。ずるい。ねーちゃんばっかり。
 ……バカ」
「なんだってー!?」
「フンだ!」

 走って行ってしまうスグリ。

「スグリさん!」
「何あれ! スグのくせに反抗的ね」
「こらゼイユ、スグリに優しくしなさい」

 おじいさんが叱るも、

「別に優しいでしょ、手ぇ出してないもん」

 おじいさん、やれやれ顔。

「そんなことより、ヨーコ、あれ! じーちゃんにあれを見せるのよ!」
「うん……」

 碧の面を見せるヨーコ。

「こ、これは、まさか……」

 動揺するおじいさん。

「鬼さまのお面!? これをどこで!?」
「あたしたち会っちゃったの! 鬼に! 昨日、オモテ祭りで!」

 興奮気味のゼイユ。

「優しく声かけたんだけど、そのお面落としちゃって……。ねえ?」
「ええ」
「──まさか、今も鬼さまが祭りに来てくださっていたとは……」

 ヨーコとゼイユ、首をかしげる。

「?」
「え? そんな話あったっけ? 鬼って村を襲う悪いやつでしょ?」

 重々しく口を開くおじいさん。

「……ゼイユにも伝える時が来たようだな。
──本当の歴史は……、逆なんだ」
「逆……?」
「どういうこと!?」

 おじいさんの言葉に目を見開くふたり。

「鬼さま……、いや、オーガポンさまに会いなさったヨーコさんにも聞いてもらおう。我が家で代々語り継がれてきた、本当の歴史を……」
「オーガポンさん……。あん子はそういうお名前なんですね」
 うなずくヨーコ。ゼイユ大興奮。
「てか歴史が逆って何!? 早く話聞くわよ!」
「少し長い話になるが、よろしいかな?」
「……はい、お願いします」

 おじいさん、縁側に腰かける。

「わしも父から教わった……。一族だけで口伝えてきた話だ。他の村の者に教えてはならない真実の話。決して口外してはいけないよ」
「はい」
「うん、わかった……」



「──はるか昔、キタカミの里に異国の地より男と鬼が迷いこんできた。村の人々は、自分達とは違う彼らの姿を恐れ……、男と鬼を、自分達の村に近づけさせないようにしたそうだ。
 男と鬼は、村人に関係されず悲しんだが……、お互いがいれば幸せだったので、裏山の洞窟で慎ましく暮らし始めた。
 ただひとり、彼らを不憫に思った村のお面職人は……、男と鬼のため、いくつもお面を作ってあげた。
 男が異国より持ち込んだ宝石をあしらった、光り輝く見事なお面。お面をかぶれば素顔を隠し、村人と仲良くできる。男と鬼はお面職人の優しさにたいそう喜び感謝したそうだ。
 それから、お面をかぶった男と鬼は、村の祭りにこっそり来るようになった。不思議な二人組のお面の見事さはたちまち評判になり、その噂はあっという間に遠くの国々まで知れ渡った。
 世にも珍しい、輝くお面の噂を聞き付けたのであろうか……、数匹の欲深いポケモンが、キタカミの里にやってきた。
 ポケモン達は男と鬼の住処へと忍び込み……、大事にしまわれていたお面を奪い取ろうとした。偶然居合わせた男が、なんとかひとつだけお面を守りきったが……、力及ばず、残り3つのお面は、ポケモン達に奪われてしまった。
 数刻後、鬼が洞窟へと戻ると……、そこには争った後と、碧のお面だけがあった。鬼は男を探すためだろうか。碧のお面をかぶって村に下りた。そして……、輝くお面をかかげて喜んでいるポケモンたちをやっつけた。
 事情を知らない村人達は、何が起こったかわからず、ただただ怒り狂う鬼を見て、その姿をとても恐れた。村人達は、3匹のポケモン達が鬼から村を守ってくれたと考え、親しみをこめて彼らをともっこと呼び、丁寧に埋葬した。傷つき、悲しみにくれた鬼は、ひとり、裏山の洞窟へと帰っていった──」
「そんな……」

 悲しみにうつむくヨーコ。スター団のことが一瞬頭をよぎる。

「何、それ……」

 怒りに震えるゼイユ。

「オーガポンかわいそう! ともっこ最悪!! 伝わってる話と逆じゃん! 出るとこ出てやるわ!」

 走りだすゼイユ。

「あ! ゼイユさん!」
「こら待ちなさい! 口外したらだめって言うとろうに!」
「だって!!」

 門のところで、ゼイユ振り向く。

「村の者は自分達の歴史を信じておる。ともっこさまを大事に思ってるのに、突然それを嘘呼ばわりされたら……?」
「!」
「……ムカつく?」
「……そうだ。当時、わしらのご先祖さま……、お面職人も、必死に真実を訴えたが……、相手にされず、異端者だと迫害されたそうだ」
「いよいよトサカにくるわね!」

 肩をいからせつつも戻ってくるゼイユ。

「だからご先祖さまは子孫を……、わしらを守るため口をつぐみ、秘密裏に真実を伝えていくことにしたのだ」
「なるほどね……。もしかしてこの話、スグは知ってるの?」
「いいや? スグリにはまだ教えていないが……、どうしてだい?」
「いや、あいつの鬼好き、異常だし……。たまにあいつ、オーガポンのこと知った風な顔でマウントとってくるからさ」
「よくわからんが……、あの子は繊細な子だから、何かを察していてもおかしくない。スグリにもいずれ、わしからしかるべき時にきちんと話す。今の話は、くれぐれも誰にも言ってはいけないよ」
「……はい」「……はぁい」

 うなずくも、肩をおとすゼイユ。

「……もっと言えなくなっちゃった」
「さっきのお面だが……、額の宝石部分が少し欠けていたようだ。もしかしたら直せるかもしれん。しばらくわしに預けてもらえんか?」
「階段から落ちた時に欠けちゃったのかな?
せっかくだから、きれいにしてオーガポンに返してあげようよ!」
「うん……」
「大切に扱うからね。直せるよう手筈を整えておこう」

 この話を、こっそり聞いていたスグリ。どこかへ去っていくが、誰も気付かない。

「もっかいオーガポンに会いたいけど、お面直るまでひとまず待ちね」
「ほうね……」
「スグに怪しまれないよう、今日はおとなしくオリエンテーリングしとこっか」
「……スグリさんは、どこおりんさるかわかる?」
「村のどっかでヒマでもつぶしてんじゃない? にしても、あたしのペアの男子フツーすぎて物足りないのよねー」
「はあ」

 家を出、スグリを探すヨーコ。公民館近くに来ると、桃沢商店にいた。

「スグリさん」
「あ、あー……、ヨーコ。あの……さ! さっきねーちゃんと……、どんな話 してた……の?」
「あー、うん、まぁ、色々と」
「……そうなんだ」

 思わしげな表情に一瞬だけなるが、すぐにいつもの調子に戻って、

「か……看板! 最後の、ちょっと遠くって、鬼が山を越えた、楽土の荒地にあんだ……。
 山から……、北西に下りる。んだば、行こっか」
「うん」

 歩いていくヨーコの後ろ姿に、ひとりつぶやくスグリ。

「なんで? ……嘘つき」



 向かう途中、それぞれのペアを見つけるヨーコ。

「蒸し暑いのはまだだけど、むしポケモンには慣れてきたぞ!」
「スグリくんって人見知り? あなたには心開いているのね」
「ゼイユさん、やっとやる気出してくれたみたい! う……うれしすぎる!」
 ゼイユ、こそっ、と、
「こっちはテキトーにやるから、あんたもがんばんなさいよ」
「……うん」



 地図を見て、ともっこプラザから行った方が早そうなのでそっちからぴっかりさんと行く。
 フジが原の横を通って楽土の荒地に到着。

「文字通り荒れとる……」

 と、ジャラジャラぶつかり合うような騒がしい音。一匹のドラゴンポケモンが追われて逃げてきた。一緒に追いかけられなんとかミライドンに乗って逃げきり、成り行きからポケモンを保護しピクニックで手当て。
 図鑑で調べると、ジャラコというポケモンらしい。ジニア先生に理由を聞いてみると、荒々しいポケモンの群れでは性格の不一致(のんびりしてたりおだやかだったり)で時に追われる子もいるのだという。
 サンドウィッチを食べさせると嬉しそうに食べ、行ってしまう。
 群れのところに行ったのだと気付き追いかけるが、立ち向かってもボコボコにされただけだった。
 ここではひとりぼっちになる。そう悟ったヨーコはジャラコに語りかける。

「……あんた、パルデア来る気ない?」
「ジャラ?」
「ゆっくり強うなれる所に、うちらが連れてくけ。──信じて、着いてきてくれる?」
「──ジャラ!!」

 ボールに入るジャラコ。名前をつける段になって、頭のウロコが三葉に見えるが、四つ葉のクローバーの話を思い出し、画像を見せながら、

「四つ葉のクローバー言うんじゃと。葉っぱがあんたのウロコみたあね。あんたのこと、この葉っぱにちなんでヨツハさん、って呼んでええ?」
「ジャーラ」

 嬉しそうにうなずいてくれたので、ヨツハさんと名付ける。
 そしてしばらく歩いて、岩のところの看板を見つける。

「ここが楽土の荒地。さみしい場所だよな」

 スグリが来る。

「うん……」
「伝承ではこのあたりで鬼さまがよく見かけられたって」
「ほうなんね……」

 うなずくしかないヨーコ。続けるスグリ。

「看板読む前に、ちょっと勝負さ……してくれる?」
「……!」

 何かを悟り、ヨーコうなずく。

「ええよ。しよう」

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