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season3 17話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

17.『ルクバーの眞(まこと)』


 チャンピオンテストの前に色々するべくまずはスター団フェアリー組のところへ。
 少し雪まじりな場所なので、ニュー制服セットはるを着ていく(試供品)。
 準備しながら今までのことを思い出すヨーコ。
 ポケモンセンターまでタクシーで乗り、そこからぴっかりさんと共にアジトに近づいていくと、ネルケがいた。

「ネルケさん」
「ヨーコ」

 振り向くネルケ。

「久方ぶりか。スターダスト大作戦、進んだな」
「ええ、まぁ」
「残るボスは2人か……。この作戦のおかげで、いろんなことが見えてきて助かってるぜ」

 ネルケ、眼鏡に手をやり、

「……ところで、ヨーコはカシオペアをどう思ってる?」
「ほうですね……」
ヨーコ、少し考え、
「……不思議な人じゃあ思います。スター団を解散させたい言うてるけど、ボスさんたちのこと、気にかけてるような感じじゃし」
「……なるほどな」
「ネルケさんは?」
「オレはな、カシオペアがスター団を憎んでいるとは思えない」
「やっぱり?」
「ああ。あいつが団を解散させたい本当の理由はいったい……」

 考え込むネルケ。ややあって、

「……そろそろ見張りに戻るぜ。アジトに挑むなら呼んでくれよ」
「はい……」

 ネルケを見送り、ゲートへ行くとなにやらしたっぱが男性と話している。

「……それではまた後程、ピアノのお稽古の時間に。坊っちゃまによろしくお伝えください」
「わっ、わかりました! イヌガヤさん!」

 誰だろうとぴっかりさんと首をかしげていると、イヌガヤこちらに気づく。

「……おや」

 少し身構えるヨーコ。

「あなたさまも、坊っちゃまのご学友の方でしょうか?」
「坊っちゃま?」
「ピカピ?」

 ふたりが首をかしげると、

「左様でございますか……」

 イヌガヤ、小さくうなずき、

「ご存知ないかもしれませんが、ここはオルティガ坊っちゃまが率いるフェアリー組、チーム・ルクバーのアジト」
「あっ、あの、そういうの勝手に教えないで……」

 慌てるしたっぱ。素直に謝るイヌガヤ。

「大変失礼いたしました」
「ええ、一応存じておりますが」
「ピカチュ」

 ヨーコとぴっかりさんがうなずくと(確かに坊っちゃまって書いとった……)、

「このお方はどちらさまなのでしょう?」

 名乗る前にしたっぱが、

「多分、私たちの敵です!」
「なるほど、ということは坊っちゃまの敵……、ということで?」
「今んとこ、そうです」

 あっさり答えるヨーコとうんうんとうなずくぴっかりさんにイヌガヤ、少し驚き、

「ふむ、なるほど。であれば……」
「へ……?」

 きょとんとするしたっぱを尻目に、

「ワタクシと一戦願えませんでしょうか?」
「……ええですよ」

 ヨーコ、引けない空気を感じうなずく。

「それでは、参ります」

 場所をとり、ギモーを繰り出すイヌガヤ。

「露払い頼むで! ぴっかりさん!」
「ピッカチュウ!」

 ぴっかりさん先鋒。ふいうちをくらうが、刹那アイアンテールでワンパン。

「このまま畳み掛けるんじゃ!」
「ピッカチュウ!!」

 二匹目テブリム。かみなりパンチ。サイコキネシス。一旦引くも、飛びかかってかみなりパンチ。倒す。

「……これはこれは」

 ため息をつくイヌガヤ。

「……お見事ですな」

 ヨーコ、休ませるべくぴっかりさんをボールに戻しながら、

「まぁ、ジムバッジ全部集めましたけえ」
「成程」

 イヌガヤ、うなずき、

「しかし、我が主オルティガ坊っちゃまはワタクシ以上にやり手ですので、ご注意くださいませ」

 頭を下げ、去りながら、

「それでは、失礼いたします」
「どうも……」
「おっ、お疲れ様でスター……」

 見送るヨーコとしたっぱ。したっぱ、語りだす。

「今の紳士はね、アカデミーの前の校長? みたいなんだけど? 今はボスの教育係? らしくて、時々ボスをむかえに? くるの……」
「前の、校長……?」
「……って、話してる場合じゃなかった!」

 はたと気づくしたっぱ。

「キミが敵だと確信したので、わたしは報告してきまーす! お疲れ様でスター!」

 ポーズを取り、行ってしまったしたっぱ。
 ほぼ呆然としていると、スマホが鳴る。

『久しぶりだな、ヨーコ。……見張りに対処できたか』

 カシオペアだった。

「ええ」

 うなずくヨーコ。

『そのアジトの主は、スター団フェアリー組……、チーム・ルクバー。
 ボスのオルティガは、スター団メカニック担当。ボスの中では最年少だが、腕は確かだ。侮るなよ』
「はい」
『彼は基本的に自分より他人に行動させる司令官気質。だが少しプッツンしやすく、怒るとボス自ら戦地へと乗り込んでくるだろう。やはりひたすらしたっぱたちを倒していくしかない。オルティガが現れるまで、したっぱたちの猛攻をしのぐんだ』
「わかりました!」
『では、準備出来しだい、ゴングを鳴らして作戦開始! チーム・ルクバーにカチコんでくれ』
 電話切れる。ポケモンセンターで回復し再び歩く。イヌガヤのことがひっかかり、かつて伝えられた最終目的を思い出すヨーコ。
 ゲート前でみんなを出して、

「林間学校終わってから考えとった。うちは真実を知った上でけじめをつけたい」

 と伝える。うなずくみんな。ネルケも呼ぶ。
 最初の三匹にぴっかりさん、ゴンさん、まんじゅうを選び、深呼吸してゴングを鳴らす!
 ゲートに入るとスピーカーが鳴る。

『緊急事態! スターダスト大作戦のヨーコ発見! ただちに態勢をととのえ、ボスをお守りするのだー!
 10分以内にこっちのポケモン30匹倒されるまで、ボスなしで相手させてもらうぜ』

 次々襲いかかってくる刺客。次々返り討ちにするヨーコ達。

「こんなんむしろ……、ええ修行になるわ!」

 やがて30匹!

「守りきれませんでした……。そろそろボスの出番です!」

 ピンクのスターダストモービル登場!

「派手なねえ」

 思わずげんなりするヨーコ。上には男の子が乗っている。

「あんたがオルティガさん?」
「あん?」

 オルティガ、杖を手にヨーコを見下ろし、

「へー……、ふーん……、オマエがヨーコなんだ……」
「……何か?」
「ショージキ予想外だよ。もっとゴツいの期待したのに。ま! 誰でもいいんだけどさ。オレが負けるとかないし。フェアリータイプのかわいくないとこ、じっくり体験していけばいいんだ!」

 オルティガ、ゴージャスボールを投げる!
 マリルリ登場!

「かわいがってやるから吠え面かいて帰れよ!」
「その言葉、そっくりそのままお返ししたるわ!」

 ぴっかりさん出すヨーコ! さっそくかみなりパンチ&まひ。じゃれつくかわしてエレキボール!
 2匹目、プクリン対ポンさん。ツタこんぼう振りかぶるが懐に入られじゃれつく攻撃。

「力の差、思い知った? 降参するなら今なんだけど?」

 煽るオルティガ。

「……じゃけえ、そっくりそのままお返ししたる言うたじゃろうが!」

 ローキックで足払いし今度こそツタこんぼう!
 倒れるプクリン。
 3匹目、バウッツェル対ぴっかりさん再び。
 つぶらなひとみで攻撃下げられる。アイアンテールかわされる。再びつぶらなひとみで攻撃下げられるも、

「ええ加減にせえ!」

 アイアンテール急所にぶち当て! 倒れるバウッツェル。

「はあ!? おかしいだろ! なんでオレが追いつめられてんだよ!!」

 肩を怒らすオルティガ。ルクバー・スターモービル登場!
 特性:ミストメイカーで足元が霧につつまれる。
 マジカルアクセルくらうが、アイアンテールで攻撃! しかし傷ついたのでゴンさんに交代。
 マジカルアクセルくらうがどんと構える。
 ゴンさんテラスタル! アイアンローラーでも倒れない! ヘビーボンバー食らわせ、ちょうど霧が消え去る。あやしいひかりでこんらんさせられるが、なんとかヘビーボンバー! 体力が半分以下になってきたらしく、あちこちから煙が吹き出してくるスターモービル。
 マジカルアクセルのショックでかこんらんが解けるゴンさん。再びヘビーボンバー! 今度は火花が出てきた。

「あと少し……!」

 マジカルアクセルくらいピンチ! ついでにこんらんさせられるが、最後のヘビーボンバー!
 プスプス煙をあげ倒れるスターモービル!
 地団駄踏むオルティガ。

「なんで負けるんだ! なんでなんで! なんでだよー!!」
「っし……!」

 ゴンさんと小さくガッツポーズ。拳を握りしめるオルティガ。


 オルティガ回想。
 ずんずんヨーコに近づき、目を背けつつも、

「ちくしょう! 負けてくやしいのに、オマエを認めてるオレもいる!」

 まっすぐヨーコを見て、

「──負けたらボスを降りる……。掟を破るのは、団に対する裏切りだもんな」
「オルティガさん」
「しかたないからやるよ。光栄に思えよ!!」

 ウエメセながらもバッジを渡してくれ、どや顔で握手してくれる。思わず苦笑いのヨーコ。

「あ、ありがとうございます……」
「ただでは帰れさない……。オレのお気に入りも持ってっとけ」
 マジカルシャインのわざマシンもくれた。
「ど、どうも……」

 頭を下げるヨーコに、

「言っとくけどオマエ、すっげーすっげームカつくかんな!」
「ええ……」

 困惑するヨーコに、オルティガ、ウエメセで笑って、

「でもすっげー強いのも認める! オレのスターモービル壊すとか!」
「はあ……、どうもです」

 と、イヌガヤがやってきた。

「……オルティガ坊っちゃま」
「爺や」

 イヌガヤを見るオルティガ。

「ピアノの時間か。おむかえに来たんでしょ。今ちょうどボス引退したとこだし、そろそろ家にも帰るよ……」
「……いえ、坊っちゃまにご紹介したい人がいるのです」
「え……」

 つぶやくオルティガ。やってきたのはネルケ。

「……ワタクシのちょっとした知り合いです」
「ネルケと呼んでくれ」
「ふーん……。目的は何?」
「アパレル会社の御曹司……。そんなあんたが、何故スター団に?」
「いきなり質問なんて無礼だね。そんなのほかの団員と同じだよ。オレも、いじめられてたから……」

 うつむくオルティガ。

「やはり、アカデミーにいじめはあったのか……」

 うめくようにつぶやくネルケ。

「知らないのも無理ないよ。今の学校は平和そのものだもん。いじめっ子はまとめて学校からいなくなったし」
「え……」
「……どういうことだ」

 オルティガの言葉に、ヨーコとネルケ、呆然。

「……それについては、前校長のワタクシからお話ししましょう」

 イヌガヤが進み出る。

「……爺や」

 イヌガヤを見上げるオルティガ。

「およそ1年半前、スター団は自分たちをいじめた相手と騒動を起こしました。大事にはならなかったものの、前代未聞の事件です。それがきっかけで、いじめの加害者だった生徒たちはアカデミーをやめていきました」
「そんな記録、アカデミーには……!」
「ありませんでしょうね……。記録は当時の教頭が消してしまいましたので……」
「記録って……!」

 ヨーコ、破かれた記録を思い出す。

「記録を消した!? ああ、なんということでしょう……」

 ネルケ、思わず素が出る。

「スター団への対応に悩むワタクシの前に、ある生徒が現れました。その生徒は、団の責任はすべて自分がとると言いました。引き換えに、仲間たちの処分の免除をお願いしてきたのです」
「え!? それって……! そんなの、聞いてない……!!」

 思うことのあるオルティガ、動揺する。

「ワタクシはその願いを受け入れ、スター団の処分を見送りました。そしてその生徒には、1年半の留学を言い渡しました」
「1年半……? 留学……?」

 考え込むネルケ。

「……処分の代わりです。スター団はいじめの被害者です。心のお休みをとっていただきたくて、留学という名目でご実家のガラル地方に帰省してもらいました。
 そんな矢先、当時の教頭が自身の責任から逃れるため、事件に関する記録をサーバーから消してしまってのです……」
「そんな!」
「なんてことを! 隠蔽されていたのですか……!」

 愕然とするヨーコとネルケ。

「もちろん、教頭にはしかるべき対処をおこないました。しかし、その行為を止められなかったワタクシや、ほかの先生も同罪です……。
 責任をとってワタクシは校長という職を引退し、当時の先生がたも全員一緒にやめていただきました」
「それで1年半前、先生たちが総入れ替えになったのですね……」
「ご迷惑をおかけしましたね」
「爺や! どうして今になってそんな話を?」

 思わず叫ぶオルティガ。

「……坊っちゃまもスター団も、今のままではよくありません。何かきっかけになればと……」
「──今さら仲間裏切って、オレだけ学校行くなんて考えられないよ」

 頭を振るオルティガ。

「スター団のみんなが大事なのですね」

 ネルケの問いに、

「あたりまえだろ」

 オルティガ、きっぱり。そして照れ隠しにそっぽを向いて、

「──オレの、宝物だもん」

 やっぱり何も言えないヨーコ。



 アジトを出ると電話が。

「北條陽子です」
『……ヨーコ』

 カシオペアからだった。

「カシオペアさん。……もらいました」

 ダンバッジを見せるヨーコ。

『ふむ、確かに。これでボスがいなくなったチーム・ルクバーは終わりだな』

 そしてなにやら考え事するカシオペア。

『──オルティガ……』
「──カシオペアさん、あの」
『……すまないな。いよいよ、残るボスは1人……。作戦がうまく進んでいるのは、ひとえにヨーコのおかげ……。ネルケもサポートとしてとても活躍してくれている。ヨーコとネルケは知り合いと言っていたが、付き合いは長いのか?』
「いえ、短いですよ」
『そうか。いずれにせよ頼もしい友人だな。まるで昔のみんなみたいだ……』
「……みんな?」

 聞き返すヨーコ。しかしはぐらかすカシオペア。

『……学校でいじめられてた子たちが、スター団を結成したことは知ってるな』
「ええ」
『団を結成ししばらくして、ボスたちはいじめっ子たちと全面対決をおこなった。
 結果はスター団の大勝利……、いや、勝負にもならなかった。……いじめっ子たちは、みんな戦いを放棄したんだ』
「え……」
『スター団を恐れた彼らは、次々と学校をやめていき……、そのせいで団員たちは周囲に悪い印象を持たれてしまったんだ』

 ポンさんを思い出すヨーコ。ポンさんのボールも震えている。
 カシオペア、少しだまり、

『……余計な話だったな。約束の報酬だ。ヨーコのスマホにLPをチャージしておこう』

 LPと、わざマシンのデータが。

(今さらじゃけど、キハダ先生が言うとったハッキングで、じゃないんかね……?)
『わざマシンも使いこなして、残りのボスも頼んだぞ。追加報酬は補給班からもらってくれ』

 電話切れる。入れ替わりにボタン来る。

「え、えと、来たけど……」
「ボタンさん」

 と、ミライドンがまたまた登場。

「アギャス!」
「ミライドンさん!」
「ぐああ! あなたは出てくんな!」

 お構い無く顔をなめ回すミライドン。

「あ、ちょっ!」

 ヨーコが止める間もなくなす術もなく押されるボタン。

「ああぁぁー……!!」



 しばらくして……

「へー……、スター団、そんなことがあったん」
「うん……」

 いきさつを話したヨーコ。自嘲のような笑みを浮かべるボタン。

「いじめをなくしたかったのに、今では自分たちが恐怖の対象……。マジウケる。先生も生徒もバカばっか」

 吐き捨てるように、

「みんながいじめられてたとき、ほかの誰かひとりでも気づいてたら、スター団は悪者じゃないよって、すぐにわかったはずなのに……。そんなバカばっかな学校で戦ったって、みんなバカ見るだけなのに……」

 自分を落ち着かせるようにため息をつく。

「──スター団なんか作っちゃって、マジボスってのもきっと、どうしようもないアホだよ」
「……ほう、かね? 本当に」

 思わず疑問を口にするヨーコ。

「……そうだよ」

 ややあってうなずくボタン。話を変えるように、

「ん、今回の報酬」

 落とし物たくさんくれた。

「あ、ありがと……」
「次は最後のボス。……ヨーコ、たのんだ」

 去っていくボタン。
 みんなを労うため、近くの浜辺でピクニック。その時にボスの画像をスマホ見る。プロレスマスクの女の子。
 ポンさんをやはり思い浮かべるヨーコ。

「行こうみんな、最後のところへ」

 うなずくみんな。あんなことやらせないためにも、止めなくては。

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