見出し画像

season2 5話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

5.『鬼とともっこ』


「え!?」

 ヨーコ、驚愕する。ゼイユも愕然。

「なんでスグが!?」

 すぐにヨーコをにらみつける。

「あんた鬼のことしゃべったの!?」
「まさか! しゃべっとらんよ!」
「──いやごめん、あんたが言うはずないよね」

 すぐに矛をおさめるゼイユ。

「スグリはお面を持ってともっこプラザへ向かった。きっと……、お前達が追いかけてあげるのがよいだろうな。なにか思いつめておったし……」
「──わかりました!」

 ヨーコ、決心する。

「よし、スグリを問い詰めにともっこプラザに行くわよ!」
「うん!」

 ともっこプラザに向かうふたり。ともっこ像の前にいるのを見つける。

「スグリさん!」
「ヨーコ」

 振り向くスグリ。

「スグ! あんた何してんの!」
「……ふたりは、知ってるよな? 鬼さまが、本当は悪くないってこと……」

 ともっこ像を見るスグリ。

「──悪いのはともっこ達なのに、みんな鬼さまをのけ者にした!!」
「スグリさん……」
「知って……、たんだ」
「ねーちゃんたちも同じだよな?」

 拳を握るスグリ。怒りに震えている。

「おれをのけ者にして、内緒で鬼さまと会ってた!!」
「ご、ごめん! でもそれは……」
「昔の村の人たちと同じだよ」

 ゼイユを遮るスグリ。

「おれが鬼さまのこと、どんだけ好きか知ってるくせに! 表では知らんぷりして、裏ではおれのこと笑ってたんだ」 
「スグリさん!」
「違うって!」

 否定するゼイユ。聞こえてない風に頭をかきむしるスグリ。

「嘘つき、嘘つき!!」
「スグ……、あんた、どうしたの? 今日、なんか、変だよ」

 ゼイユを無視し、スグリ、ヨーコを見据える。

「──ヨーコ。おれと……、勝負して」
「え?」
「ヨーコが勝ったらお面は返す。だから……、勝負してよ!!」

 ただならぬ雰囲気を感じながらも、うなずくヨーコ。

「──わかった」
「……じゃ、やろうか。位置さついて。──おれ、全力でぶつかるから……!」
「──うん」
「ヨーコ」

 心配するゼイユ。

「ゼイユさん、立ち合いお願い」

 と、ボールがふるえ、ヨツハさんが出る。

「ヨツハさん?」
「ジャラ!」

 戦わせてくれ、と言っている様子。見てるだけは心苦しいらしい。

「──わかった」

 位置につくヨーコとスグリ。
 一匹目、ヤンヤンマ、ぴっかりさん。

「悪いとは思ってる。でも、ゆずれないんだ」

 エレキボールを放つもエアカッターで相殺される。
 そこをでんこうせっかでぶち当てられ、よろけた隙にむしのさざめきをくらうも、耐えてかみなりパンチでワンパン。

「まだ挽回できる! けっぱれ……、けっぱるれ!」

 己を鼓舞するスグリ。二匹目グライガー、わっぷるさん。互いにけたぐりと、じならしで素早さを下げ合う。
 きあいだめで気合いをこめるわっぷるさんだが、つばめがえしとれんぞくぎりによろける。
 グライガーのじならしにたえてアクアカッター。急所に当てて倒す。

「っし」
「──ヨーコは、何でも持ってる物語の主人公みたいだな」
「……何でも、か……」

 思うところのあるヨーコ。でも口には出せない。
 3匹目、カミッチュ、ヨツハさん。しかし素早くダブルアタックをかまされた上にりゅうのいぶきを繰り出され倒される。

「速い……!」
「今の効いてるよな? ヨーコに勝てる……、勝つ!」
「ジャラ……」

 謝るヨツハさんに、ヨーコも詫びる。

「ごめんねヨツハさん」

 まんじゅうに交代。みずあめボムで素早さを下げられるも、ヘドロウェーブで攻撃。

「ヨツハさんの仇!」

 りゅうのいぶきをタイミングあわせてかわしてヘドロウェーブ。勝つ。
 4匹目ウッウ、まんじゅう続投。
ウッウ、ダイビングで身をひそめる。が、特性ちょすいにより効果なし。代わりに魚を吐き出され防御さがる。みだれづき&ついばむをくらうが、がんせきふうじで勝つ。
 最後、ニョロゾとぴっかりさん。
 アイアンテールをくらわすもがっちり白羽取りされ。

「間違えないよう、しっかり指示さ……、出す!」
 頭突きの末、とっしんとアクアブレイクのダブルコンボをくらい、倒れるぴっかりさん。
 代わりに特性せいでんきでまひ状態に。
「無駄にはせん! まんじゅう頼んだ!」

 しびれて動けないところにヘドロウェーブ。
 たたみかけてマッドショット。勝利。

「──どうしても、届かない」
「や、やった……」
「うぅぅ……。──うわぁぁぁ!!!!」

 スグリ叫び、ともっこ像の石柱に拳をぶつけるが、

「痛っ……」
「スグ……、大丈夫?」

 ゼイユの心配を無視し、

「──約束だから」

 スグリ、ヨーコにお面を返す。

「鬼さまに、よろしくな」
「スグ、あのね。あたし、あんたにあやま……」
「帰る」

 やっぱりゼイユを無視して去っていく。

「ごめん、いつもはあんな子じゃないんだけど……。男の子の思春期って、なんか怖くない?」

 ヨーコ、脳裏に久夫の姿がよぎる。

「うん……、スグリさんが心配じゃ」
「だよねー。思春期でグレるとか経験ないし、まいっちゃうわ」

 次の瞬間。
 カタ……、ガタガタガタ!!

「──なんか、聞こえない?」
「うん」
「……ともっこ像から?」

 ふたりが目を向けたとたん、祠の中の像が揺れ出す。光り出す像。

「な、何なの……!?」

 光の柱が立ち上がり、壊れた祠の上に3匹のポケモンが!

「え!? え!? えええええー!?!?」

 驚愕のゼイユ。

「こ、このポケモンたち、まさか……」

 目を見開くヨーコ。

「ヌンダフル!!」
「マシキャ?」
「キチチチチ……」
「な、何よ……!」

 ゼイユがすごむと、何やらひそひそ話。

「えっ、何……?」
「ポケモンにもひそひそ話する習性あるんじゃね」

 と、3匹こちらを向いて、

「マシキャ?」「ヌンダフル!!」「キチチチチ……」

 同時に何か言ってくるなり、去る。

「行ってしもうた……」
「何なのよー!?」

 どこかへ行く姿を見送りながら、

「あれ、何だったのよ……」
「あ! 昔話のポケモンさん達じゃきっと!」
「確かに……、ともっこかも! 3匹揃ってたし! 悪~い顔してたし!」
「うん」

 プラザにいた人もひそひそ。

「あれって、ともっこ様!?」
「ありがたや……」

 ゼイユ、考え込む。

「像の下で眠ってたんだよね。何で生き返ったんだろ?」

 と、ゼイユ気づく!

「あいつら、キタカミセンターのほうへ逃げてった! なんかヤバくない? 追いかけるよヨーコ!」
「うん!」

 大急ぎでキタカミセンターへ。走っていく途中、

「おい! ともっこ像壊れてんじゃん! ゼイユがついにやっちまったのか!?」
「んな訳ないでしょ!!」

 詰め寄るゼイユ。

「ゼ、ゼイユさん!」
「ごめん。あんた後でボッコボコにしてやるからね、覚えときなさい!!」
「ひいい!」



「着ぐるみ……?」
「中の人大変だな!」

 囁きあう人々を尻目に階段かけ上がるヨーコ達(回復コーナーで回復済)。
 着くと何やら管理人さんと村の人達が話している。

「管理人さん! ともっこが!」
「ヨーコさん、いらっしゃい! 来るのがちょっと遅かったですよ!」
「おっちゃん! ともっこ来なかった!?」

 管理人さん訂正する。

「ともっこ『さま』!」
「そういうのいいから!」
「この子は全く……」

 ため息をつき、管理人はヨーコを見て、

「そうそう、そうなんです! なんとさっきまでともっこさまがセンターにいらっしゃいましてね! キタカミセンターで保管していたかがやくお面を持っていこうとされましたので……、センター職員一同、どうそどうぞとお返ししたんです」
「そんな!?」
「あげちゃったの!?」

 ガーン! なヨーコとゼイユ。

「お腹を空かされてたようで、スパイスたっぷりのキタカミもちを一瞬で平らげてくださった!」
「もてなしちゃったの!?」
「しかもスパイスたっぷりって!!」

 再びガーン! なゼイユとヨーコ。

「キタカミもちは栄養満点! もっと大きく強くなられますな!」

 耳打ちするゼイユ。

「ともっこは悪いやつで、お面はオーガポンのものなのに! 本当のこと言えないのしんどい!」
「わかる。じゃけど抑えてゼイユさん」

 向き直るゼイユ。

「……で、ともっこたちは今どこなの?」
「鬼が山に登っていかれたよ」
「「鬼が山!」」
「恐れ穴にひそんでいる鬼をやっつけにいかれたのかもな」
「さすが我らのともっこさまじゃ! 頼もしいですなぁ、ハッハッハ!」
「ハッハッハじゃないんだけど!」

 歯噛みするゼイユとヨーコ。しかしゼイユ冷静に、

「ていうか、本当の歴史が正しいなら、きっとともっこ達オーガポンに復讐しにいったんだ。鬼はお面の力で戦うって言われてる。お面を持ってないオーガポンが今襲われたら負けんじゃない!?」
「うん! お面をお返して助けにいかんと!」
「あたしも同じ気持ち! でも手分けしないと! あんたは恐れ穴にオーガポンを助けに行って! あたしはお面を直しにいったん家に戻る! お面とかけら、いい!?」 
「お願い!」

 ヨーコ、お面とかけらを渡す。

「ありがと! 直したらすぐ合流するから! オーガポンのこと頼んだよ!」
「まかしといて!」

 ゼイユ去る。

「ともっこさまがよみがえるとはこりゃめでたい!」
「ともっこさま意外と目付き悪くない? ダークヒーロー、というやつかしら?」
「私なんかマシマシラさまと目があっちゃった!」

 人々ののんきな話を聞き流してミライドンを駆るヨーコ。
(オーガポンさん、無事でおって……!)


 恐れ穴に駆けつけると、まさにともっこに詰め寄られているオーガポン!
「ヌンダフル!!」
「が、がお……」
「こりゃー! 何しとんじゃー!!」

 叫びながら特攻するヨーコ。
 ともっこ、こちらを向く。

「キチ!?」
「ぽに……!」

 オーガポン、ヨーコに気付く。何かを相談し合うともっこ。するとうなずきあってマシマシラが出てきた。
「ッシラァ!!」
「おー? やるかー!?」
「マシッキャー!!」
「ぴっかりさん!!」
「ピッガ!!」

 ボールから出るなり、さっそくかみなりパンチ!

「キャッキャ!」

 やるな、という感じのマシマシラ。

「固い……!」

 エレキボールを放つが倒れない。サイケこうせんをくらうも、アイアンテールでとどめ。

「キ……、キー!」

 倒れるマシマシラ。しかし他の連中とすぐに話し合い。

「マッシ! マッシ!」
「ヌンダァ!」「キチャア!」

 二匹も威嚇してくる。思わず舌打ちし、休ませるためぴっかりさんをボールに戻すと、

「コラー! あんたらー!」

 ゼイユとスグリが駆けつけた。

「ゼイユさん! スグリさん!」
「3対1なんて卑怯なマネするじゃない。あたしらが来たからには、あんたたち……、よみがえったこと後悔させてやるわ!」
「ヤダカッコいい!」

 お目々キラキラになるヨーコ。
 途端に慌て出すともっこ。

「サルル……!」 

 3人をすり抜け駆け出す。

「あ、逃げた!」

 叫ぶスグリ。

「ハンッ! あたしの強さにビビったようね」

フンス、なゼイユ。
と、スグリ、ヨーコに、

「ヨーコ、あと……、えっと……」
「ちゃんと言いな!」

 ゼイユ一喝。

「お、お面のこと、これ、カッとなっちまって……」

 歩み寄るスグリ。

「本当にバカなことさ、した……。だから……、ごめん」
「ううん。こっちも、ごめん」

 ヨーコも謝る。

「──ヨーコ……、ありがと」
「しょぼくれてたから、首根っこつかんでつれてきたの! なーんか……、よかった!」

 と、

「ぽにお」
 オーガポン、嬉しそうに跳ねる。駆け寄る3人。

「ほ、本当に鬼さまじゃ……。わや、めんこいな」

 笑うスグリ。

「スグ、あんたからお面、返したいんでしょ?」

 ゼイユに促され、スグリ、オーガポンにお面を差し出す。

「鬼さま……、これ」
「が……、がお」

 しかし警戒しているのか、怯えた様子で受け取らないオーガポン。

「会ったばかりだから、スグのこと、怖いのかも……」

 ゼイユの言葉に、うつむくスグリ。

「……おれじゃだめみたい。ヨーコから、返してあげて」
「……うん」
 スグリから受け取り、お面を渡すヨーコ。
 すぐに装着し、嬉しそうに跳ねるオーガポン。

「ぽに、ぽにおー!」

 それから大切にお面をしまう。

「うふふ、喜んでる。ヨーコには心許してるんだね」
「……」

 黙りこむスグリ。ゼイユが提案する。

「……やっぱりさ、残りの3つのお面もオーガポンに返してあげたいよね」
「うん。うちも思う」
「センターにあったやつ……、あの3匹が持ってったんだっけ?」

 スグリが聞くと、ゼイユは怒りに震えて、

「そう! もともとはこの子のお面なのに!
 ──またあいつら襲ってくるかもわかんないし、オーガポン守りつつともっこ成敗よ!」
「ほうじゃね!」
「あたしたち3人で『お面取り戻し隊』、結成ね!」
「賛成!」

 ヨーコ即答!

「名案でしょ! あんたは副リーダーにしてあげる!」

 拍手と共に提案するゼイユ。

「おれも……?」
「当たり前じゃん! そうと決まればスイリョクタウンでともっこ情報聞き込みよ! あたしたちでお面を取り戻すぞ!」
「「「えい、えい、おー!」」」
 かくして作戦は開始された。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?