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season5 30話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

30.『セレブの憂鬱』


 パルデアに帰り、STCに向けてのトレーニングとアカツキさん&ツノじろう(アカツキさんはクスノキ寺預かりとなった)にパルデアを案内するためあちこち歩くことに。
 北二番エリア、みだれづきの滝。飛んでいるカイリューを近くで見るため、ツノじろうに頼まれミライドンで上ってみると……。

「オーッホッホッホッ! オーッホッホッホッ!」

 ビリオネアコンビがいた。

「これが噂に聞くパルデア十景のひとつ……」
「そうだよネアちゃん! みだれづきの滝だよ!」
「想像してたのよりショボい滝ザマスね……」

 ヨーコ、(汗)。

「でもショボいながらもマイナスイオンを感じるザマスわ!」
「さすがネアちゃん! いつだって前向きレディ! マイナスイオンに加えて、セレブイオンまでただよってるよ! まさにいやし系セレブ! ひゅー! ひゅー!」

 称えるビリオ。

「ビリオ! 真実をありがとザマス」

 と、ネア、ヨーコとぴっかりさんに気付き、

「あら……? いつぞやの庶民のかた!」
「本当だ。あれは間違いなくいつぞやの庶民だね!」
「どうもです」
「ピカチュ」
「偶然か運命か、はたまたセレブイオンに吸い寄せられたのかな?」

 ビリオしみじみ。

「はあ」

 ヨーコ(汗)

「オーッホッホッホッ! よござんすよござんす!」

 ネア高笑いし、

「人々に夢を与えるのがあたくしたちセレブの務め……。すなわちこちらの品を差し上げるザマスよ」

 おおきなしんじゅを15個もくれる。

「え、こ、こがあに!?」
「いいザマスか? 庶民のかた。お金とはマイナスイオンのようなもの。かこまれていれば安定と安らぎを与えてくれるザマスが……、でもそうして得られた幸せは本当にあるかどうかわからないザマス」
「なるほど。取りあえず貯金します!」
「ふ……、深い! 子供には深すぎるよネアちゃん!」

 ということで別れる。ひとまず野生ポケモンとおまかせバトルで修行するヨーコとツノじろう。
 しばらくしてクレペシティへ。ピクニックしようと町外れの1番エリアと5番エリアの真ん中あたりに来てみると……。

「オーッホッホッホッ! オーッホッホッホッ!
 見事に見どころも何もない場所ザマスねえ! まぁお隣にはクレペシティがあるザマスけど」

 ふたりがいた。思わずびっくりするヨーコ。

「こういう名所でもなんでもないへんぴな場所を求めていたザマス! ありがとザマス、ビリオ!」
「やったね! 名所行きすぎて飽きてるセレブの鑑! ネアちゃんが喜んでくれることが幸せだよ!」
「この土地を買い取って事業を起こすのも悪くないザマスね。クレペも近くにあることだし……」

 と、ネアが気付く。

「あら……? 毎度の庶民のかた!」
「本当だ。あれは間違いなく毎度の庶民だね!」
「ど、どうもー」
「ピカー」
「ネアちゃんのカリスマ性はいつだって人々を引き寄せちゃうんだ!」
「オーッホッホッホッ! よござんすよござんす! 人々に夢を与えるのがあたくしたちセレブの務め……。すなわちこちらの品を差し上げるザマスよ」
「え」

 きんのたま15個くれた。

「いいザマスか? 庶民のかた。お金とは何もない場所にこそあるもの。可能性はいつだってブルーオーシャン、ザマス……」
「おおー……!」

 思わずため息をつくヨーコ。ぴっかりさんジト目。

「え!? 染み入る! 心に染み入る金言だよ! ヨガの後に飲む白湯のように……!!」

 ビリオも驚愕!

「さて、あたくしブドウ園でフルーツでも食したいザマス!」
「ひゅー! ついさっき行ったばかりの場所の近くにまた行く! ネアちゃんセレブの鑑だね! ボクの手絞りブドウジュース、たくさん飲ませてあげるね!」
(セ、セレブさんてそういうことするんかね。今度ネモさんに聞いてみようかね?)

 またまた別れる。
 ブドウ、という言葉を聞き付けて食べたがるツノじろうとゴンさん。苦笑いしピクニックをしてからブドウ園へ。
 ブドウ園の販売所に行ってみんなでもぐもぐしてると、

「オーッホッホッホッ! オーッホッホッホッ!」

 ビリオネアコンビいた。

「ビリオ、見るザマス! なんて素敵な植木鉢なの!」
「ネアちゃん! これ果樹園だよ! キミには植木鉢に見えるかもだけど!」
「嘘でしょう……? これが果樹の園!? 実際に見たらなんてつつましいの!! ビリオ、訂正をありがとザマス」
「いいってこと! 庶民の生態はまたま謎が多いからね!」
「ああ庶民! なんて不思議な存在……。いつだってあたくしの胸を高鳴らせる!!」

 そしてヨーコに気付く。

「あら……? 噂をすればおなじみ庶民のかた!」
「本当だ、あれは間違いなくおなじみ庶民だね!」
「あたくしもっと庶民のこと知りたい! お近づきになりたいザマス!!」
「え」
「……であるからして、あたくしと再度決闘してくれないザマスか?」
「で……、でた! ネアちゃんの趣味! 戦うことで相手のことを知るやーつ!」
「ホホホ……、覚悟を決めたら庶民のほうからお誘いあそばせ」
「セレブと決闘できるまたとない機会! ネアちゃんに話しかけなよ!」

 ビリオに勧められ、嬉しくなってうなずくヨーコ。

「はい。ネアさん」
「あたくしとの決闘! 受けてくださるザマスね?」
「はい。ぴっかりさん、立ち合いお願い」
「ピカピカ!」
「では……!」

 ネア、咳払いし、

「パルデアエステート社長ネア! 庶民をぶっつぶすザマスよぉぉぉ!」
「ひゅーひゅー! がんばってねネアちゃん!」

 ネア、ペルシアン出す! ヨーコはツノじろう!
 きりさくをくらうが耐えるツノじろう。

「あの技試してみるかね。フレアドライブ!」

 フレアドライブ! 特性いしあたまで反動来ない。しかし耐えるペルシアン。

「お互い固いなねえ」

 いやなおと攻撃。耐えてフレアドライブ急所当ててとどめ!

「あたくしったら負けセレブ!」
「ツノじろう、お見事!」
「またしても負けザマス! あなたいったい何者ザマスか!」
「あ、ええと……」

 ヨーコが話す前に、ネア勢い込んでビリオに、

「ねえビリオ! 庶民はみんなポケモン強いの!? それともこの方が特別!?」

 ビリオ、考え込みながら、

「ネアちゃん、あの庶民はきっと選ばれし庶民にしか持てない……、ハングリー精神を持っているんだよ!!」
「ハングリー精神!? セレブには一生持てないという、あの……!?」

 ネア息を飲む。

「どうりで勝てないはずザマス。あたくし目からおだんごしんじゅ……」

 まぁ確かに間違ってない、と思うヨーコ。一方ネア、ハッとして、

「……しんじゅの話をしたら、あたくし水辺に行きたくなったザマス! さてビリオ! あたくし今すぐパルデアで一番大きな水辺を見たいザマス!」
「ひゅー! 好奇心はいつだって突然なんだ! ネアちゃんセレブの鑑だね! 湖畔の島で決闘疲れをリラクゼーションといこうか!」

 去っていくふたり。見送るヨーコ。また行きたがるツノじろう。



 ツノじろうたちへの案内がてら、オージャの湖へ。

「オーッホッホッホッ! オーッホッホッホッ!」

 ぶらぶらしてるとやっぱりいた。

「見てビリオ! 水たまりがあるザマス」
「ネアちゃん! これ湖だよ! パルデアで一番大きい! 有名なオージャの湖さ!」
「こ、これが湖!? 百歩ゆずって池ではなく!?」

 驚愕のネア。

「ねえビリオ……、池と湖はどこが違うんザマスか?」
「わからないよネアちゃん……。ぼくたちセレブの価値観は一般よりだいぶザルだから……」

 (汗)なヨーコ。やっぱりジト目のぴっかりさん。そしてふたりに気付くネア。

「あら……? いつもの庶民のかた!」
「本当だ。あれは間違いなくいつもの庶民だね!」
「こんにちはです」
「ときに庶民のかた……、池と湖の違いをご存知ザマスか?」
「え? うーん……」

 首をひねるヨーコ。

「確か……、大きさ、じゃなかったですかねえ」
「なるほど、さすがは庶民! 一般的な知識にくわしいザマスね!」
「ま、まぁ厳密な違いはないみたあですけど……」
「与えられたら与え返すのがあたくしたちセレブの務め……。すなわちこちらの品を差し上げるザマスよ」

 おだんごしんじゅを10個くれた。

「どうもありがとうございます」
「いいザマスか? 庶民のかた。幸せとは水辺のようなもの……。考え方しだいで水たまりにも池にも湖にもなるんザマスのよ」
「なるほど!」
「さすがネアちゃん! いま教わった知識をさっそく本人に披露するなんて!」

 ということでしばらく湖畔でゆっくりしてマリナードタウンで泊まるらしいふたり。

「さてビリオ! 明日は我が社のようにホワイトな山に登ってみたいザマス」
「ひゅー! パルデアエステートはなんだかんだホワイトな企業だし! ネアちゃんセレブの鑑だね! 雪山でこおりポケモンみながらジェラートでも味わおうよ!」

 またまたツノじろうが興味を示し、キャンプに行くことに。準備をするためアカデミーに戻り、装備を整えてナッペ山へ。何かあった時のためにナッペジム近くにテントを立てて一泊。暖かい料理作ったり。
 翌朝、ホットコーヒーとホットミルクで一杯。
ミライドンで飛んでいると、ビリオとネアの姿が。

「オーッホッホッホッ! オーッホッホッホッ!」

 ネア高笑い。しかしふたりとも薄着である。大丈夫なんかね、と降りたって思わず心配するヨーコ。

「見渡す限り白銀の世界。最高にオ・ツ、ザマスねえ!」
「そうだね! ネアちゃんが用意してくれたこの服を着てれば寒さもへっちゃら。あったかいよ!」
「最高級の生地を使ってる最高級のブランドものザマスからね!」
「もはやこの服を着ずに登山してる人がかわいそうだよ」
(うわー、そういうブランドにケンカ売っとりんさる……)
「あら……? お約束の庶民のかた!」
「本当だ、あれは間違いなくお約束の庶民だね!」
「おはようございまーす」
「ピカチュー」

 と、ビリオ目を見開き、

「ネアちゃん見てよ! 庶民の服の生地の薄さを!」
「ま、まあ! なんてペラペラな生地なんざんしょ!」
「え、ええー……」(汗)
「ねえビリオ! 庶民は寒さに強いのかしら?」
「わからない……、わからないけど、庶民の間ではお金がないことをふところが寒いと言うらしいよ」

 考えつつ言うビリオ。

「だから寒さには慣れてるのかな?」
(当たっとるんに遠い……)(汗)
「ビリオ、あなたって……」

 ネア、感激。

「本当に博識ね! ゴールデン・ネア賞受賞ザマス!」
「やったー!」
(どんな賞!?)

 ネア、ヨーコとぴっかりさんを振り向き、

「こまっている庶民には手を差しのべる。それがあたくしたちセレブの務め……。こちらの品を差し上げるから、がんばって寒さをしのぐザマスよ」
でかいきんのたま10個くれる。
「え、あ、あの……」

 さすがに戸惑うヨーコ。しかしネアお構い無く、

「いいザマスか? 庶民のかた。手が冷たい人は心があたたかい! そんなのはマジで迷信ザマス!! そのことを決して忘れてはいけないザマスよ……」
「さすがネアちゃん! だんだん金言がテキトーになっていく!」
「でも確かに!」

 うなずくヨーコ。ぴっかりさん(汗)。

「さてビリオ! あたくしたちの休暇もそろそろ終わり……。ラストのしめくくりにパルデア地方のド真ん中を見下ろしに行きたいザマス!」
「ひゅー! すごい場所でも上から見下ろす! ネアちゃんセレブの鑑だね! 大穴の中は入れないかもだけど、いちおうリーグに申請しておくね!」

 去っていくふたり。ヨーコ、アワアワ。

(これ、探しに行った方がええんかね……。いやでもトップたちが止めるかもじゃし……。人のこと言えんけど……)

 アカデミーに戻りいつもの装備に着替えて大穴周辺を見回るヨーコ。と、アカデミー近くの穴の縁にいた。

「オーッホッホッホッ! オーッホッホッホッ!」

 変わらず高笑いなネア。

「これがパルデアのド真ん中! なんて大きな穴なんざんしょ!」
「そうだよネアちゃん! これこそがパルデアの大穴さ!」
「ビリオ! あたくしの探求心がめくるめくアドベンチャー! さっそく中へとさあ富豪! ザマスよ!」
「ダメだよネアちゃん! 穴の中は立入禁止さ! 申請したけどダメだったよ……」
「なんですって!? セレブでもダメザマス?」
「セレブでもダメなんだよ!」
「せっかくの休暇のラストなのに!? セレブでもダメなことが、まさかこの世にあるなんて……!!」
「あのう……」

 思わず声をかけるヨーコ。

「あら……? 腐れ縁の庶民のかた!」
「本当だ。あれは間違いなく腐れ縁の庶民だね!」
「ときに庶民のかたは、この大穴入ったことあるザマスか?」
「ええ、まあ、あります」
「……今なんと!? このセレブを差し置いて!? 庶民が穴へとさあ富豪!?!?」
「あー、わ、訳あって……」

 戸惑うヨーコにネア構わず、

「……だとすればあたくしたち、決闘するしかないザマスね」
「へ?」
「で……、でた! ネアちゃんの趣味! 藪からボーマンダに決闘なやーつ!」

 さしものビリオもどよめく。

「ここではなんザマスから、下へ降りるザマスよ!」
「は、はあ」

 促されるまま南三番エリア、崖の平らなところへ。

「ホホホ……、覚悟を決めたら庶民のほうからお誘いあそばせ」
「えと、これ……」
「藪からボーマンダだけど、ネアちゃんと決闘してあげてよ! 藪からボーマンダだけど!!」

 と言われたので、

「ぴっかりさん」

 ぴっかりさんを呼ぶ。うなずくぴっかりさん。

「あたくしとのラスト決闘! 受けてくださるザマスね?」
「はい。相棒のピカチュウさんでお相手します」

 ぴっかりさん構える。

「パルデアエステート社長ネア! 庶民をぶっつぶすザマスよぉぉぉ!」

 ネア、オリーヴァ出す! アイアンテールで決めようとするが、かわされグラスフィールド&エナジーボール。しかし体勢ととのえエレキボールで目眩ましし、いかづちおろしでとどめ!
 2体目、ペルシアン対ツノじろう。ねこだましくらってひるんでしまい、そのスキに10まんボルトをくらう。かみくだく攻撃をくらわすがそこまでのダメージじゃない。再び落ちる10まんボルト。
 でもぴっかりさんやナンジャモの出す電撃ほどじゃない。合間をぬってフレアドライブ! ペルシアン倒れる! 勝利!

「ふたりともお疲れ様!」
「完敗ザマスね……!」

 ネアもビリオも、拍手で称えてくれた。

「あたくし、冷静になってやっとわかったザマス。セレブも庶民も同じ人間……、そこに垣根なんてないザマス。どうしてこんな簡単なことに今まで気づかなかったのかしら。あたくし恥ずかしくて、穴があったら入りたい……。いえ穴には入れないザマスけど」
「ネアちゃん……」

 ネア、ヨーコをまっすぐに見て、

「あなたはきっとこのことを教えてくれるためにあたくしたちを追ってきたザマスね」
「あ、いえそういうわけでは……」
「みなまで言わずともいいザマスよ」

 うんうん、とうなずくビリオ。(汗)なヨーコ。

「感謝してもしきれないザマスが……、せめてこちらの品、受け取ってくださる?」

 でかいきんのたま25個とセレブなスマホカバーくれた。

「あ、ありがとうございます!」

 ここでは素直にお礼を言うヨーコ。

「さてビリオ! あたくしこの旅で成長したザマス! 心機一転、明日から! 社長業ビシバシ働くザマスよー!」
「ひゅー! 失敗からも学びを得る! ネアちゃんセレブの鑑だね!
 ついでに庶民のきみにもエモートという学びをプレゼントさ!」

 なんてこったエモートを教えてもらう。

「こうですか?」
「そうそう! 筋がいいね!」

 しばらくして高級そうなそらとぶタクシーやってくる。
 ふたり、うなずきあい、

「「それでは、アディオース!!」」

 手を振りタクシーに乗り込む。

「お達者でー!」

 ヨーコとぴっかりさんも手をふる。去っていくそらとぶタクシー。

「なんか面白い人たちじゃったねえ。ピクニックして帰ろうか」

 ぴっかりさんに微笑みかけ、ピクニック!
 夕暮れの空が美しかった。

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