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season12 12話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

12.『血』


 というわけでクスノキシティ中心部。
 すっかり復興し発展を遂げ、賑やかになっている。感心するヨーコ。わっぷるさんとミライドンも出てきておおはしゃぎ。

「あ、ブイブイのお土産品がある! あとで見に行こうかな」
「あそこの食堂うまそうだな!」
「ポケモンセンターとフレンドリィショップ、別れてるんだ!」
「あはは、確かにね」
「バルーブ!」
「アギャッス!」

 それぞれの反応に、ヨーコとわっぷるさん、ミライドンも笑い合う。



 一方、ホテルのオモダカとぴっかりさん。
 ただ黙ってぴっかりさんを撫でるオモダカ。
 キラフロルが出てくる。ちょっとヤキモチ焼いてるらしく、

「フロシチウ!」

 とぴっかりさんを軽く牽制。しかしぴっかりさん、

「ピカピ、ピカチュ?」

 いや、それよかあんたの相棒大丈夫? と鳴く。

「キラリ……」

 しょんもりとオモダカを見上げるキラフロル。
 と、ヨーコ達が帰ってくる。ミライドンとわっぷるさんにも荷物持ってもらって賑やか。



 リュックと帽子を床に置き、台所にて準備のヨーコ。米、モーモーミルク、クスノキで採れた野菜、調味料(みんなヨーコ達の分とぴっかりさん達ポケモン達の分)を並べ、あとで用意するポケフーズを下に置く。
 ミニスケッチブックの料理のページを開いてお米をといでいると、

「ヨーコ」

 ペパーがやってきて、

「ほらよ」

 小瓶を置いてきた。見るとひでん・すぱスパイスの小瓶。

「え、これ、ええん?」
「親友と理事長せんせのためだ。安いもんだぜ」

 サムズアップを送りクールに去るペパー。にっこり笑うヨーコ。
 ネモ達の元に戻ったペパー、楽しそうに、

「なに作んだろなー、クレペかクスノキの料理かな」
「お米あったし、野菜カレーとか?」

 首をかしげるネモ。スマホを見ながらツッコむボタン。

「いや、ミルクあったしそれはな……くないか」
「にしても、ヨーコん家で食べたカレー、うますぎちゃんだったよな~」
「ピカチュ!」

 しみじみペパー。当たり前でしょ! なぴっかりさん。
 うんうん、なネモ。

「わかる~。スープとサラダもおいしかった~」
「ガラルのヤツとはまた違ううまさだった! オヤツのフルーツサンドもほどよく甘かったし! あとスター団のみんなと食べたオムライスも……」

 ボタンが言った瞬間、お腹の音が盛大に鳴る。

「え、ボタン?」
「なんだ? 楽しみにしすぎちゃんか?」

 ボタンを見るネモとペパー。

「や、うちじゃない!」

 思い切り否定するボタン。再び音。
 冷静に音のする方を見る3人。うつむいているオモダカ。きょとんとしているぴっかりさんとキラフロル。よく見ると耳が赤い。

「え……、トップ?」
「り、理事長、こんな音出せるんすね?」
「そ、そりゃ、そうだよな、いくら完璧だからって、腹は減るよな……」

 堪えきれず大笑いする3人。ぴっかりさんとキラフロルも同様。

「あ、当たり前ではありませんか!」

 思わず反論するオモダカ。しかし自分でも可笑しくなってきたらしく、つられて笑い出す。
ひとしきり笑い、オモダカ、出てきた涙を指でぬぐいながら、

「でも確かに、チャンピオン・ヨーコのご自宅で飲んだお茶は、とてもおいしかったです」
「え、ヨーコん家行ったことあるんすか」

 目を丸くするペパー。うなずくオモダカ。

「ええ、数日前に訪問させていただきました。お母さまが色んなお話をしてくださいましたよ」
「ヨーコのお母さん、かわいい系美人っしょ?」
「わたしとヨーコの勝負、何度か見てくれてるんです!」

 ボタンとネモも話にのる。

「ふふ、そうですね。みなさんのこともお話もしていましたものね」

 笑うオモダカ。少しだがいつものオモダカが戻ってきたと少し安堵する3人。
 と、ここで、

「おまたせしましたー」

 ヨーコが大鍋と何かの料理が乗った大皿、人数分のお椀とスプーン、ポケフーズの皿を乗せたサービスワゴンを押してやってきた。

「うわ、高級ホテルとかにあるやつ!」
「え、うちには普通にあるよ?」
「なんつーナチュラルお嬢様発言ちゃん」

 三者三様の発言に笑いながら、ヨーコ、鍋の中身を手際よくよそってテーブルにおいていく。

「いやー、こがな便利なのがあって助かったわ。さすが、セレブさんも使うセキュリティ万全のホテル!」

 ポケフーズにもかけ終わり、

「どうぞ! モーモーミルクの雑炊、野菜のひでん・すぱスパイス和えのせです!」
「「「いただきまーす」」」
「……いただきます」

 手を合わせて、スプーンで口に運ぶ一同。
 少しの間があって、

「「「おいしい……」」」

 じーん、と感動する親友ズ。

「なにこれ! すっごいクリーミーでまろやか!」
「のってる野菜の和え物? っていうの? もほどよくすっぱい! 疲れがとれる~」

 箸もといスプーンが止まらないボタンとネモ。

「うまっ! ひでんスパイス、こういう感じにも使えるんだな! ヨーコ今度教えてくれよ」
「もちろん!」

 和え物を味わうペパーにうなずくヨーコ。ぴっかりさん達手持ち組も、夢中になって食べている。
 と、ゆっくり咀嚼していたらしいオモダカ、スプーンを置いて嗚咽を漏らす。

「トップ?」
「お口にあいませんでしたか?」

 顔を覗き込むネモとヨーコ。頭を振り、そのままぽろぽろ泣き出し、たかと思うと、声をあげて泣くオモダカ。

(ああ、ようやっと、泣けたんじゃねえ)

 静かに思い、みんなを見るヨーコ。親友ズもわかっているようで、

「そうだよね、優しい味だもんね」
「だな。しみるぜホント」
「ね」

 キラフロル達もほろりとしつつ、ほっとした様子。



 雑炊の鍋も和え物の皿もポケフーズも空になり、満腹になったヨーコ達。

「「「「ごちそうさまでした」」」」
「おそまつさまでした」

 手を合わせる親友ズとオモダカに、ぺこりと頭を下げるヨーコ。手持ちズも満足そう。

「とてもおいしゅうございました。ありがとうございます、チャンピオン・ヨーコ」
「いえいえ。オモダカさんも食べれてよかったです」

 オモダカ、一息ついて、

「先ほどは申し訳ありません。お見苦しいところをお見せしてしまいましたね」
「あ、いえ……」

 ヨーコが言うと、ネモが、

「トップ、やっぱりトップチャンピオンとかやめちゃうんですか?」
「「ネモ!」」

 慌てるボタンとペパー。オモダカ首を横に振り、

「ご心配なく。しませんよ、そんなこと」

 ホッと胸を撫で下ろすパルデアカルテット。

「よかった~、やめたらどうしようかと思った~」

 半分涙目になっているネモに微笑むオモダカ。

「ご心配をおかけしましたね」
「ってことは、またさんざん手伝わされるってことか……」

 しょんもりボタン。

「んなこと言うなよ、別のヤツだったらこれまで以上にこきつかわれるかもだぞ?」

 ペパーにうなずくしかないボタン。

「まあ、それもそう……」

 ヨーコは苦笑い。と、ヨーコのスマホ鳴る。
 出てみると哲からだった。オモダカに変わってほしいというのでそうすると、オモダカからも事情聴取したいとのこと。
 快諾するオモダカ。その際、シクータとも話をしたいというオモダカ。驚くヨーコ達。
 哲も迷うが、警察に掛け合ってみるとのこと。
 電話切れて、

「大丈夫、なんですか?」

 思わず聞くヨーコ。不敵に笑うオモダカ。

「ええ。素晴らしいお心遣いに勇気をもらいましたから」



 事件のことを刑事達に語り終わり(「ありがとうございました。ではこちらへ」と案内され)、シクータと対面するオモダカ。

「嗤いに来たのか?」

 鼻で笑うシクータ。

「面と向かって話すのは、一族のパーティー以来か。
 ──お前の家は、数代に渡って女しか生まれず、恥も外聞もなく、他のパルデアの名家から婿を取っていたそうだな。それはまだいい。傍系とはいえ、他の土地の者と交わってはいない。だがお前の母親は、よりにもよってパルデアではなくここの人間を婿に取った」

 シクータ、無表情になる。

「……なぜ、なぜお前は、私よりも強い力を、光を手に入れられた。傍系であることはおろか、パルデア皇帝の血が半分しか入っていないお前が」

 オモダカ、少し目を伏せて、

「シクータ……、──なぜ貴方は、そこまで血統にこだわるのです?」

 シクータ、固まる。

「──私の両親は、血統や出自など関係なく、愛し合い慈しみ合っていた。貴方が差し向けた賊に襲われた時は、互いを庇うように亡くなっていたそうです」

 オモダカ、一息つき、

「私の知る人々の中には、己に流れる血に悩んだ人、悩んでいる人もいる(ハッサクとカキツバタのカット)。肉親との軋轢に苦しんだ人もいる(ペパーのカット)。一方で、血の繋がりのない者と家族になり、固い絆を育んだ人もいる(ヨーコのカット)。これからそうなる人だっている。
 ──そもそもこの世界には、人とポケモン、種族を越えて家族となっている人など、大勢いる。血とは血筋とは、血統とは、一体なんなのでしょうね」

 オモダカが言いきらないうちに、シクータ、オモダカをねめつけ、

「黙れ。皇帝の血筋であることを取ったら、私には何が残る」

 それから小さな声で、つぶやくように、

「あの時から気付いていたよ。
 ……お前には、……両親から愛され、ポケモン勝負の才能もあるオモダカには、血統以外、何もかも敵わない、とな。
 ──だから、あの冠が、どうしても、欲しかった。──無能な役立たずと、罵られたくなかった……」

 これがシクータの本音だと悟るオモダカ。
 丁度時間が来て、立ち上がるシクータ。

「──己の罪は己で償う」

 シクータ、オモダカを初めてまっすぐ見る。

「精々励め。パルデアの王よ」
「──はい」

 うなずくオモダカ。シクータの姿が消えるまで、最後まで見送っていた。

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