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season4 2話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

2.『エリアゼロの怪物』


 第1観測ユニットを出るヨーコ達。第2ユニットを目指す。
 歩きだしてしばらく進むと、ペパーがおもむろに、

「……オレ、人生で父ちゃんとあったこと、あんまなくてさ」
「突然の自分語り、どうした?」
「ボタンさん!」「ボタン! シッ!」

 たしなめるヨーコとネモ。続けるペパー。

「……研究で忙しくて全然帰ってこないし、料理も洗濯も自分でして、マフィティフだけが話し相手だった」

 黙るボタン。

「だから、実の親のこと、全然知らねえんだ。オレの父ちゃんすごいんだって、誇らしい気持ちでごまかしてたけど。
 ──すごくなくてもさ……、やっぱ一緒にいてほしかった」

 ヨーコ、今の両親と実の両親をぼんやり思う。

「最近じゃ、テレビのニュースとかネットの記事でしか顔見てない。たまに来てたメールも、ここ数年音信不通……。──それなのに、急にエリアゼロに来てくれ! ……だと!
 ──つくづくさ、変な家族だよなー」
「や、そんなん……、……人それぞれ、だし」

 ボタンうつむく。

「……さっきは、ゴメン。ずけずけと言い過ぎた」
「オレも、感じ悪かった。すまん……、えっと……」
「名前、ボタン」
「オマエって……、いいヤツだよな、ボタン!」
「ふふ……、オマエやめろし」

 ようやく笑い合うふたり。

「よかった」
「うむ、うむ!」「ピカ、ピカ!」

 胸を撫で下ろすヨーコ。うなずくネモとぴっかりさん。まだまだ進んでいく。

「昔、父ちゃんに会おうとしてパルデアの大穴に来たとき……、このあたりで見たことない生き物に襲われたんだ」
「え!? どんなポケモン!?」

 ペパーの言葉に、ネモすぐに食いつく。

「あれはポケモンってより、もっと鉄っぽい、機械みてえな……」
「ちょっぴりメカメカしいポケモンなんじゃないの?」

 聞き返すネモ。

「いや全然違えから! もう生物として別物! マフィティフもソイツにやられて大怪我したんだ! 二度と見たくねえヤバいヤツなんだよ……」
「そんなに強いんだ……。はやく会いたいね!」
「ネモさん」

 ヨーコ、苦笑。

「……言うと思った」
「たまに不謹慎なとこ、ある」
「ピカピカ……」

 ジト目のペパー&ボタン&ぴっかりさん。
 そうこうしている内に第2観測ユニットが見えてきた。

「観測ユニット、ようやく2つめ」

 つぶやくボタン。

「ハァ、ハァ……。中に入って休もうー」

 息切れしているネモ。

「生徒会長、意外と体力ないよな……」
「アハハ……。ハァ、意外でしょ?」
「ドヤ顔で言われてもな……」
「ポケモンさん鍛えてる時とか徹夜しとったんにね」

 ちょっとからかうヨーコ。

「そっちは別腹だもん!」

 笑うネモ。

「ん?」

 何かに気づくボタン。

「あ……、デリバード! 外で見かけるポケモンもいるんだ」

 見ると、デリバードっぽいのが歩いている。

「ほんまじゃ。あのシルエットはデリバードさんじゃね」
「デリ?」

 こちらに気づくデリバードっぽいの。

「……かわいい」

 近づくボタン。

「──デ」
「で?」
「ピ?」

 首をかしげるヨーコとぴっかりさん。

「デデデデリデリデリ・バー!」

 よくわからん叫びをあげ襲いかかってくるデリバードっぽいの!

「うわっ、うわーっ!!」
「ボタンさん!」
「ピカピ!」

 駆けつけるヨーコとぴっかりさん!

「ヨーコ、ぴっかりさん! 戦い戦い!」
「任せて!」
「ピカ!」

 ぴっかりさん&ブラッキー、対峙!
 一応スマホで見てみる。

「テツノツツミ……?」

 謎のポケモンらしい。一件だけヒット。雑誌のページが出てきた。
 ブラッキー、つぶらなひとみで攻撃下げる。クイックターンをかみなりパンチで打ち破るぴっかりさん! 効果抜群! 倒れるデリバードもどきもといテツノツツミ。
 その時首がバネみたいにのびてキュー、と気絶。

「首もげたあ!?」
「いや、バネっぽいのでつながっとる!」

 慌てるボタン。叫ぶヨーコ。

「マジ何だったん、今の。はービックリした……」
「ブリキのおもちゃみたいなね……」
「ヨーコの言う通り、デリバードにしては……、なんかメカメカしかったね?」
「……だな」

 重々しくうなずくネモとペパー。

「名前も違うたし……」
「完全に寿命縮んだ……。早く中入ろ」
「うん」
「ひとまず、今日はここで野宿だな」
 口々に言うヨーコとボタン、ネモ、ペパー。



 ユニットの中へ。野宿の準備をしながらネモが、

「どこも似たような感じ。でも野生のポケモン来ないし安全だね!」
「……ねぇ、エリアゼロのポケモンって、なんなんだろ?」

 おもむろに問うボタン。

「……オレも気になってた」

 そしてバイオレットブックを取り出し、

「もしかしてコイツらなんじゃないかって」
「え、何その本……」

 眼鏡をかけ直すボタン。エリアゼロの怪物のページを見るヨーコ達。

「エリアゼロの怪物……!」
「ポケモンじゃない……ってこと?」
「それは……、わっかんねえけど」

 ボタンとネモの言葉に首をひねるペパー。
 ロトムスマホで調べるヨーコに、

「ヨーコはどう思う?」
「うーん、ほうじゃねぇ……。さっきの見ると、普通のポケモンさんじゃない、のかも……」

 ヨーコ、ロトムスマホをしまいながら言う。

「なるほどねー。たしかに見た目も変わってるし、図鑑でも見たことないもんね。でも技を出せて戦えるし……」
「うん、一件しかヒットせんかったし……」

 ヨーコ、ネモと首をひねっていると、

『そろそろ、話しておかねばな』

 おもむろに響くフトゥーの声。

「「博士!」」
『エリアゼロ内に生息している一部の生物は……、今よりはるか先……、未来のポケモンなのだ』
「え!?」
「未来のポケモン……!?」

 驚愕するヨーコとペパー。目を輝かせるネモ。

「えー! すごすぎ!」
「いやいやいや、無理があるし……」

 ボタンげんなりとツッコむ。

『ボクがいるゼロラボにタイムマシンが存在しており、未来のポケモンを呼び出しているのだ』
「──それって、父ちゃんがずっとずっと研究してた……。完成してたのか!?」
『……ああ。その生涯をかけてね』
「……え?」

 虚をつかれるペパー。代わりにボタンが聞く。

「タイムマシンって……、未来へ行けたりもするん?」
『ああ、可能だ。ただし……、人間ほどの質量だと、帰ってこれないがね』
「いや、怖いし」
「SFホラーじゃね……。うちのおじいちゃんが聞いたら大喜びなお話じゃけど」
(ほいで過去行けたんならレホール先生大喜びじゃ)

 ツッコむボタン。ヨーコうなずく。

「父ちゃ……」

 一瞬黙り、強気な口調になるペパー。

「──オマエは何のために、オレたちをエリアゼロに呼んだ?」
『ペパー、それは……』

 フトゥーも少し黙り、

『──可能であれば、直接話させてくれ。実物を見せながら説明できれば、理解もしやすいはずだ』

 口を閉ざすペパー。

『ではヨーコ、中央のパネルを操作してロックを解除してくれ』
「……はい」

 再びパネルのボタンをポチるヨーコ。

『ロックが解除されました。残り2/4』

 の音声案内。

『その調子だ。残りの観測ユニットも引き続きよろしく頼む』
「──ヨーコ」
「ん?」
「アイツが持ってこいって言ってた例の本……、きっと大穴の中のこと全部に関係してる」

 バイオレットブックを差し出すペパー。

「アイツに期待されてないオレなんかよりも……、オマエが持ってた方がいい気がするんだ」

 ブックを受け取るヨーコ。裏にはつたない文字でフトゥーと書かれている。

「ペパーさん」
「ヨーコ……、まかせたぜ」

 フッ、と笑い、

「さ、飯だ飯。火を通さなくてもおいしく食べれるもんでサンドウィッチ作ってやるからな」
「やったー!」
「助かる……」
「うち、飲み物持ってきたよー」

 飲み食いするみんな。その間、記録を読むヨーコ。

『凍結されたテラ計画が再始動。今月からゼロラボに拠点を移す。昔より研究員は減ったが問題ない。結晶体の影響が大きく、実験結果が安定しない』
『結晶体の力は強大だ。企業は不安定さを怖がったが、不可能だった研究に着手できる。やっと楽園を作れる』
(それが、タイムマシンということかね)

 後片付けして寝袋に入りながら(ぴっかりさん等ポケモン達はベッドの上)、

「タイムマシンとか、一気にSF感増してきた」
「うん。本の中の話かと思うたもん」
「にしても、違う時代のポケモンと戦えるなんて最高じゃん! エリアゼロ来てよかった!」

 ボタンとヨーコ、ネモわちゃわちゃ。
 みんなに聞こえないよう、ペパーはひとりつぶやく。

「アイツ……、誰だ?」
「ん? ペパーさん、何か言うた?」
「いや、何でもねえ」

 すぐに寝る。

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