女になれない

転職活動を始めた。

34歳、派遣社員、正社員経験なし。

今日は仕事終わりにオンラインの面接があった。

うちの会社は体育会系だとどう?聞かれて、うげっとなった。

精神疾患の既往歴があるかどうかも普通に聞かれた。

求人情報では印象の悪くない会社だったけど、実際話を聞いてみると結構違う。

まあでも、入社前に分かるだけでもマシなのかな。

就活は嘘の吐き合いだ。

それを受け入れて、きれいに演じられる人もいるんだろう。

私はこういう暗黙のルールみたいなものに、いつも上手く乗っかれない。

聞かれたことはすべて馬鹿正直に答えてしまう。

「正直、私自身は体育会系ではないです」

「20代は精神疾患でフルタイムで働けませんでした」

採ってもらえないのも当然だ。

堂々と言うわけじゃない。

声はいつも少し震える。

でも、嘘吐いたりするよりは、そんな自分の方が好きだ。

本当は、面接のために着るスーツも、嫌で嫌でしょうがない。

髪を結んで、ファンデを塗って、ジャケットに腕を通したら、人間の女のできそこないみたいな私が現れる。

対面だったら、ヒールとか、パンプスとかいう靴も履かなくてはいけない。

歩きづらくて、足が浮腫んで、足先が蒸れて臭くなる靴だ。

だけど、就活では、人間の女はそういう格好をすることになっている。

人間の女に擬態しないと、「面接」や「入社」のステージに行かせてもらえない。

だけど私は、擬態もうまくできなくて、絶妙に不細工で不恰好な何かになる。


社会に入っていく入り口のところで、いつも何かにぶつかっている。



私は34歳。

私はレズビアン。

私はぶかぶかのシャツを着て、いつも帽子をかぶっていたい。


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