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クラブ活動と私[番外編]:八坂神社と私#3

※前回までのあらすじ※

みらいへと かえるえいがを みるために
あなたのとなりに すわりたいけど
                                                 らんべるく(字余り)

策謀渦巻く”地獄の椅子取りゲームただの映画鑑賞”を終え、
八坂神社を目指し四条通を行く高校生の男女4人組。

情熱的なエキゾチック風美人、氷子さん。
おっとり和風美人の才女、玉ちゃん。
ちょっぴりオモロいモテ男、K君。
1人だけ場違いな気がする、オマケの私。

道すがら”いかにも”な装いの甘味処に立ち寄った。
小雪がちらつく寒い日だったので、先輩方は
温かいぜんざいを頼んでいた。
私はどうしようかと悩んでいたところ、隣りで
K君が抹茶のソフトクリームを注文した。
「京都いうたらこれやろ。」と言わんばかりである。
私もそれに乗っかることにした。
甘すぎず抹茶の香りと風味も程良く美味しかった。
京都を堪能している、そんな気分だった。

これが後に衝撃の展開を生む引き金に
なるとは思いもせずに。


辿り着いた八坂神社。
賽銭箱に45円(”始終ご縁”がありますように)を
入れてお参りをする。
願い事は言わずもがな、である。

そんなこんなで境内を巡っていたのだが、
私はその日の寒さに少々凍え始めていた。
その時の私の服装は、中学の時に買ってもらった
ダッフルコート。そこそこ年季が入ってきており
普段の扱いも荒いせいで、あちこち傷みがあった。
襟元を止めるボタンなど、取れてなくなっていた。
コートの中は薄手の長袖シャツとTシャツだけ。
洛中は盆地にあり、暑さ寒さが平地より厳しい。
大阪市内に住んでいた私は、そんな京都の寒さを
あまく考えていたようだ。
そして先程のソフトクリームである。
すっかり身体が冷えきっていた。
特に開いている首元が寒く、縮こまっていた。

さらに付け加えると、私は肌が白いほうである。
日焼けなんぞしようものなら、やけどのように
真っ赤になり大変なことになる。
そんな見た目なので、普段から周りにはあまり
健康的には見えないらしい。
最近はあまりないが、以前は普通に出勤して
仕事をしているだけなのに
「大丈夫ですか。顔色悪いですけど。」
と私自身は「え、なんで?」と思いたくなるような
心配までされるくらい、白い、らしい。

そんな私の様子を見てとったのか、玉ちゃんから
「K(私)ちゃん、大丈夫?」
と声を掛けられた。と思ったら、
不意にふわっとした感触に包まれた。

玉ちゃんが自分のマフラーをかけてくれたのだ。

「あ・・・。」
ありがとうの一言さえまともに言葉にならない。
頭がパニックに陥っていた。
他の2人が見てない所で氷子さんに肘で小突かれた。

これどうしたらいいんだろう。
どのタイミングで返したらいいの?
というか玉ちゃんは寒くないの?
もう何が何だかわけが分からない。

そういう天然なところ、
ホントにズルいですよ先輩。


円山公園を抜け、知恩院の傍を進む。
平安神宮が思ったよりも近そうだったので、
当日一緒に廻れるか、確認しに行く事になった。
ちゃんと初詣の下見”も”しているのだ。
それどころではない約1名はともかく。

平安神宮の大鳥居。とにかくデカい。一見の価値あり。
奥に(全然小さくないのだが)小さく見えるのが平安神宮。

氷子さんを中心に会話が弾んでいたが、
すっかり舞い上がってしまった私は
その時何を話していたか、まったく覚えていない。
覚えているのは、平安神宮で引いたおみくじで
玉ちゃんが中吉だったことくらいだ。
自分のおみくじすら記憶にない。


「これ・・・ありがとうございます。」
帰りの駅で電車を待つ間にマフラーを返した。
玉ちゃんは優しそうに笑っていた、ように思う。
何せまともに顔なんて見られない。
この時の私の顔は、たぶん真っ赤だっただろう。
その傍らに居た氷子さんは、そんな様子を
窺いながら、意味ありげに微笑んでいた。

何も知らないK君は『どこ吹く風』といった雰囲気。
気楽でえぇなぁお前は・・・人の気も知らんとさぁ。

SIAM SHADE『1/3の純情な感情』 の歌詞より抜粋。
この時の自分の状態を表すとしたらコレだろうか。


こうして始まった創作部の初詣イベントは
高校卒業後も十年近く続いていった。
悲喜交々ひきこもごもな人間模様を描きながら・・・。

ついでに、あるゲームに関するウラ話も
あったりするのだが、それはまた次の機会に。

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