クラブ活動と私#16-4:文化祭④
《これまでのまとめ》
※前回のあらすじ(!!!)※
ちょっとしたゴタゴタもありつつ迎えた
文化祭当日。忙しいのは当日も変わらない。
いよいよ始まった文化祭。
受付と2冊の看板誌『キメラ』『寄木細工』の
販売係は各クラスや掛け持ちの部活の演し物の
スケジュールと相談しながらの当番制だ。
他の部員はある程度自由に行動できるのだが、
あまり他の場所を廻ったりする人は居なかった。
皆なんだかんだで部室が一番居心地がいいのだ。
それに、来場者を待っていたりもする。
私や幼馴染で腐れ縁のK君も中学時代に一緒に
卓を囲んでテーブルトークRPGに興じた友達や、
卓球部の頃の仲間、通い詰めているゲーセンで
知り合った常連さんなどに声を掛けている。
どれくらい来てくれるだろうか。
それを楽しみにしながら、受付とは教卓を挟んで
反対側の作業スペースに陣取る。
ここでは来場者に自由にお持ち帰りいただくための
”しおり”作りをその場で行なっていた。
『創作部』にはその部名通り「模写やパロディは
御法度」というルールがある。
この御法度が適用されない”例外”は毎年3月に固定
されているお題「私の憧れ」とこの”しおり作り”だ。
展示されているイラストも3月のお題の場所だけは
アニメやマンガのキャラクターが並んでいる。
もし私に絵心があれば、ここには『めぞん一刻』の
管理人さんこと”音無響子”さんが並ぶかな、などと
くだらない妄想にふけっていると、中学時代の
同級生Mくんがやって来た。
「しんどいって、抜け出してここまで来るの。」
Mくんは隣りの高校に通っている。隣りといっても
1駅離れているうえ、どちらも駅から15分くらい
アップダウンの激しい通学路を歩く。
なお、Mくんの学校も絶賛文化祭の真っ只中である。
「悪いなぁ、わざわざ来てもらって。はいこれ。」
言うが早いか売り物の2冊を差し出す。
「くれんの?」
「ンなわけないやん?」
「いきなりやなぁ・・・先に展示だけ見させてぇや。」
「あいよ、ごゆっくり。」
持つべきものは”良き友”である。
「お!Mやん!」
K君とはずっと仲が良くて、お互い違う高校に進んだ
のは残念がっていたほどだ。
MくんのことはK君に任せておけばよさそうだ。
クラスで演劇の演し物があったため一旦体育館へ
向かい、照明係をこなして戻る。
当番制とは名ばかりで結局一部の部員だけがほぼ
固定で受付と売り子をやっているような状態で、
私も入口近くでしおり作りと受付を代わる代わる
やっている有様だった。
カンタンなイラスト程度なら何とか模写くらいは
出来るので、当時見ていたSDガンダムのキャラを
しおりに描いてコート剤で保護する。
「もらってくれるといいな」と思いつつ教壇の
”ご自由にお持ちください”と書かれたコーナーに
置いておく。
いつものようにダイス(サイコロ)を転がしたり、
録音データを文字に起こしたりというのとはまるで
違う活動内容、これも案外楽しいものだった。
「こんにちは~!お邪魔します。」
受付に居ると妙に元気な子が入ってきた。
するとさっきまでずっと控えスペースに籠ってた
HA先輩が出てきた。
「Iさん。Kさんも、来てくれたんやね。」
後ろにもう1人お友達もいるようだった。
1人は腰近くまで伸びた長い黒髪の、くりくりっと
した目がキレイな子。お友達のほうは鼻筋の通った
ちょっとしたアイドル並みに可愛い顔立ちの子だ。
そこへ私と同じクラスのTも来た。
HAさんとTは同じ中学で、創作部と同じように
色々な創作活動を行なったり本を読んだりするような
部活をしていたと聞いている。
この女の子たち2人もおそらくそうなのだろう。
「私、絶対ここに入ります。」
長い黒髪の女の子がそう話すのが聞こえた。
私はのちにこの子を光流ちゃんと呼ぶ事になる。
もう1人のお友達も同様に隼人ちゃん、と。
様々な人間模様を部室の中に描きつつ、文化祭は
翌日まで続いていった。