【メンターインタビュー】#4大坪真哉先生

今回のインタビューは、最終発表も終わった3月に行いました。プログラムを通して、参加者に伴走していただいたメンターの先生に、今回プログラムに参加された感想、メンタリングに取り組む中での気付きなどをうかがいました。



自己紹介

ー自己紹介をお願いします。

大坪といいます。私立の教員を40年続けてきました。最後の5年間は中学校で校長をしておりました。教育委員会に行く人も多いですけど、僕の場合はただただ現場で過ごしたということです。校長になってからは、学校を変えようとしてきました。特に、最後の3年間は、工藤校長に知り合ったり、木村泰子先生と繋がったりして、バックアップをもらいながら学校の構造を変えようと取り組みました。

ー具体的にどのような変革をしたのですか?

1つ目は、学級担任ではなく、チーム担任制にしたことです。職員会議では、反対意見もあり、全部で8時間くらい話し合いました。それでも、最後は教員みんなで子どもたちを支えようと実施に踏み切りました。ところが、途中で「実は反対でした。」「やっぱい上手くいかないと思う。」という教職員からの声もあり、最後まで難しかったことも事実です。
2つ目は、ルールの撤廃です。朝の会、起立・礼の号令、チャイムなどはなくしました。また、掃除や給食当番などもボランティア制にしました。すると、驚くくらい学校全体が落ち着いたのです。生徒が「やらないと。」と自立し始めました。例えば、職員室前で生徒同士が揉めていても「先生、今は黙っておいて、これは自分たちで解決できるから。いざという時は職員室に呼びに行きます。」と言って、自分たちで話し合うようになっていました。
3つ目は、移動教室を「探究旅行」という言い方に変えたことです。どのような内容にするかという業者との打ち合わせは、生徒が行います。行き先を決めるプレゼンも、全部生徒。東京で遊びたい派、沖縄行きたい派、ユニバや京都など近場で思いっきり遊びたい派がいたのですが、この三つがそれぞれプレゼンをするんです。そして、どれにするかっていうのも、生徒が決める。ただ、「多数決は無し。マイノリティ少数派を切り捨ててはだめだ。」と伝えて、生徒同士の合意形成のもと、東京に決まりました。そして、その探究旅行から帰ってきたら、親から「本当楽しそうだった。こんなに楽しそうな姿、見たことない。」と言われました。教師が余計なことをしなければ、子どもは自立できるっていうのは、本当にそうだと思います。この三年間、僕も多分子どもたちも苦しみましたけど、子どもたちが自立していく姿を見ていて、絶対に間違ってないなというのは思っています。

学校に対する課題感

ー実際に様々な改革をされてきたのですね。「変えよう」と思ったのは、課題を感じたからだと思うのですが、現在の学校教育に対する課題はどのようなものだと思いますか?

今の学校教育は、子どもを社会の歯車の一つとして扱っていると思います。教室という箱に入れて、枠に入れ込む。学校の武器は、指示・命令と排除だと思ってるんです。言うことを聞かせようとして、聞かなければ排除していくという、ある種文化のようになってしまっている。それでも、今回のプログラムに参加した先生方や学校のように、日本全国でいくつもの学校が変えようとされているのは、希望ですよね。

ーそんな学校を改革していくスクールリーダーに求められるものは何だと思いますか?

一番は、覚悟だと思います。決断する覚悟と実行力。そして、常に学び直しをしていくこと。そのためには、色んな人と繋がっておくことも必要ですよね。人と話していたら、本気かどうかって分かるんです。本当に生徒のために頑張っているなと感じたら、すぐに繋がっていけると思います。

【学校版MBA】の価値


ー今回は、そんなスクールリーダーに向けた研修プログラムでしたが、いかがでしたか?

 本気さがありましたよね。初めての取組なので、ドタバタしたり、変更があったりしましたけど、それがむしろ良かったのかなと思います。何が正解か分からない中で、対話しながら一緒につくっていく感じがしました。
自己理解のワークでは、自分の強みは何なのかを考えていましたね。自分が弱みだと思ってることが、逆に強みであることもある。それを人との対話の中で再発見できている人もいた。本当に皆さん本気で取り組まれていて、一緒にお仕事できてよかったなって思いました。こんなに本気で向き合ってもらえるようなプログラムは、あまり無いだろうなと感じます。
また、いろいろな価値観を知ることができると思います。現場で真剣になっているスクールリーダーの人たちと本気で向き合き、新たな価値観に出会ったり、自分の価値観を更新したりできるかもしれません。様々な学校のスクールツアーも実施していただいて、そこで、また違う価値観を知ることができる。このように、外に出て学ぶきっかけを作ってくださったと感じていました。

ーメンターとして参加者の方と関わっていただくメンタリングの時間はいかがでしたか?

まず、グループの方がどういう人なのかなというところを一生懸命探しました。最初は教育とは関係ない、しょうもない話ばかりしました。「この人は、もう自分の気持ちをどんどん出す人なんだな。」「とても真面目に課題に取り組む方だな。」と、それぞれメンタリングする方がどんな人か探っていきました。最初に、そのような話をしていて本当に良かったなと思っています。そのおかげで、最後まで上手く繋がれたかなと感じています。
人って揺れたり、ブレたりすることがあると思うのですが、メンタリングの時間は、そのブレを止めてくれる一つのきっかけになったのは事実かなと思います。最終発表の会場で皆さんの発表を聞いたときは、本当にこの仕事に関われてよかったなというのはすごく感じました。

「未来の教育のリーダー」へメッセージ

ーありがとうございました。このプログラムへの価値をたくさん見付けていただいたと思います。最後に、「未来の教育のリーダー」に向けて、一言いただけますか。

参加してくれる未来のことを考えてる先生は、今学校の当たり前がすごく大きな壁となって進めない状態になっているかもしれません。しかし、それを打ち破るのは、自分しかいない。本当に本気でぶつかっていく力や、エネルギー、ブレない気持ち、人との繋がりをこのようなプログラムで見付けてほしいです。今後、30代40代で管理職なっていくことが当たり前になっていきます。「いやいや、自分なんか。」「校長なんてまだまだです。」と思うかもしれないのですが、どのポジションにいても子どもには関われます。校長なら、校長の立場から関わったらいいと思います。子ども中心の学校をつくったらいいのです。しかし、その時には大きな壁をぶち破る必要がある。自分なりのやり方を見つけて壁を破ってほしいなと思っています。

ー大坪先生がされてきたような「子どもを中心とした学校づくり」「教師の学び直し」ができるように、今後もよりよいプログラムをつくっていきたいと思います。ありがとうございました。

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