【参加者インタビュー】#2

今回のインタビューは、プログラムが始まって2か月ほど、中間発表前の時期に行いました。プログラムに参加した経緯や自己分析講座や学校の課題研究講座などに取り組んだ感想、今後のビジョンなどをうかがいました。



—最初に自己紹介をしていただけますか。
高校で英語を教えています。今の学校は7年目で、3年前に卒業生を送り出し、一昨年に教務副主任を経て、昨年から教務主任になりました。

—【学校版MBA】スクールリーダーシッププログラムに参加したのは、なぜでしょうか。
話すと長くなりますが、たまたま昨年MBAを取得したのです。グロービス経営大学院の堀義人学長が、講演をしてくれまして、「この人はすごい。学校の先生にはない魅力があるから、その秘密を知りたい」と、その日のうちに体験クラスを申し込みました。そしてそのまま2020年に東京校に入学し、2022年に卒業しました。周りには学校の先生はほぼ皆無で、ほとんどは民間企業の方でしたが、「教育に対して何かできないか」という思いを持った人が多く、教育クラブを設立することになり、副代表を務めさせていただきました。学校版MBAのプログラムを知ったのは、教育クラブの後輩が教えてくれたからです。本当に縁や出会いとは不思議なものです。

—紹介されたとき、すぐに参加しようと思われたのでしょうか。
即決です。「まさにこれだ」と思いましたね。グロービスを卒業することで、「MBA」が自分の中ではキーワードになっていました。実は、入学当初は「教師がMBAを取ってどうするのだろう?」と思っていて、ただ「おもしろそう」という直感で学んでいました。ジョブズがカリグラフィーの授業に潜り込んだことで美しいフォントを持つマッキントッシュを作ったのと同じです。振り返ってみたらドットがつながっていたのですね。卒業して経営学修士となった今だから、「校長はまさに学校の経営者であり、マネジメントやリーダーシップを持っていなければいけない」と確信しています。3年前、3年生の担任をしていた頃のある日、「もしかしたらこれが人生最後の担任になるかもしれない」と思いました。担任としてがむしゃらに働きながら取得したMBAは教務主任としての現在にも大きな影響があります。もちろん、担任の先生だって40人の生徒を導くリーダーですから、若いうちからMBAを持っていると絶対に役に立ちます。

—出会うべくして出会ったのですね。本プログラムの受講にあたって課題はありましたか。
グロービスの学びは普遍的・汎用的なので、各自が自分の職場に応用していかなければなりません。その中でもやはり学校は特殊なほうですから、「現場に落とし込む」ことが課題だと思っていて、このプログラムはこのギャップを埋める架け橋になると思いました。また、グロービスに若手の先生たちを紹介したいと思ってもハードルが高すぎるので、「学校版MBA」という、具体的かつ短期のプログラムは絶妙でした。おかげさまで、同僚を1人誘って一緒に申し込むことになりました。今後も送り込みたいですね。
 
—実際に受講してみて、手応えはありますか。
MBAのエッセンスを短期間で教えてもらえるので、良い復習になっています。しかし、本当に重要なのは、人との出会いだと思います。教師は残業が多く、ブラックなのに、それでもお金と時間をかけてここに集まる仲間たちから、良い刺激を受けています。変革というのは本当に大変ですが、全国に仲間がいること、経験豊かなメンターがついていることは、大きな後ろ盾になります。それから、スクールツアーにも期待しています。先日、星の杜中学校・高等学校さんを訪問させていただきました。宇都宮から離れた不便な立地で、定員割れが続いて倒産寸前だったそうですが、ヒト・カネ・モノが何もない学校が奇跡的な大変革を起こしたのです。素晴らしい先行モデルを見ることで、手法を学ぶことはもちろん、大きな希望をもらうことができました。先進校視察はこれまでに何度も行きましたが、ここまで手の内を明かしてもらったことはありません。おそらく、このプログラムの趣旨に共感し、力になりたいと思ってくれたからなのでしょう。小野田副校長に感謝しております。

—この講座の目標は各勤務校の課題解決ですが、どのようなことをお考えでしょうか。
本県では、異動のサイクルが昔より短くなりました。以前は、重鎮というかレジェンドというか、校風や伝統を体現する先輩方がいたのですが、今は入れ替わりが激しく、油断すると組織文化は一瞬で消えてなくなります。団塊の世代の退職や採用試験の倍率低下で、本校も伝統の継承という点では危機を迎えています。そもそも、我々一人ひとりは、教育に思いを持ってこの職を選んだはずなのに、あまりにも忙しく、初心を振り返る暇もありません。こんな時代だからこそ、立ち止まって「ビジョン」を考えなければいけないと思うのです。そこで、私は、約100人の全教職員にインタビューをし、本校が受け継いだ「レガシー」と未来を創造する「ビジョン」をまとめた「コンパス(羅針盤)」のようなものを作りたいと思うのです。教師って、1年目からいきなり「先生」と呼ばれ、授業だって面談だってどのようにやればいいかわからないまま現場に放り出されますよね。みんなが不安を抱え、でも、誰にも聞く時間もなく、なんとなく毎日を過ごしているように思います。だからこそ、私が諸先輩の叡智を集め、伝統というバトンをつなぎたいのです。インタビューを受ける先生たちにとっても初心を思い出すきっかけになり、得るものがあれば、最高です。

—とても興味深い内容ですね。どのようにしてその手法に行き着いたのですか。
ある日、ふと思いつきました。しかし、振り返ってみると、星の杜さんの小野田副校長が、「職員全員と面談してビジョンを語らせた」と話していたことが、無意識の奥にあったのだと思います。みなさんの中にある知識だって、どの教科書に書いてあったとか、どの先生に言われたとか、あまり意識していないし、思い出せないことが多いのではないでしょうか。それでも、学生時代に大量のインプットを蓄えることで、人間は成長しているのです。教師になった途端に、学習というインプットをやめて、授業というアウトプットだけになるのは、おかしなことです。我々が率先して学び続けることで、その背中を見て、生徒も勉強に向かうのではないでしょうか。「学校版MBA」は、まさに流行の「リスキリング」の一つだと思います。

—素晴らしい成果が出るのを楽しみにしています。最後に、「未来の教育のリーダー」である読者の皆様にメッセージをお願いします。
ぜひ、このプログラムを受講し、仲間を見つけてください。「日本の教育をどうにかしなくてはいけない」という思いを持つ全国の先生たちに出会うだけでも、受講する価値があります。そして、その熱量をどのようにして実際の変革につなげるかという具体的な手法を学ぶことができます。たった一人で悶々と悩むのではなく、ビジョンを語り合い、励まし合い、一緒に日本を変えていきましょう。今はまだ横のつながりだけですが、2期生、3期生と増えていくことで、縦にも斜めにも仲間が広がっていけば、勤務校だけでなく日本を変えることができると信じています。一緒に頑張りましょう!
 
—先生のような人がこれからの学校や日本の教育に変革をもたらすのと感じました。今後もよろしくお願いいたします。ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?