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ハイパーハードボイルドグルメリポート

テレビ東京系列/2017〜

異文化やかけ離れた生活圏は非日常として映り、その中で食事をとることは束の間の日常と呼べる瞬間だ。堅苦しいドキュメンタリーではなく、普遍的な食事を中心に添えることで興味の間口を整備している。肌の色や崇拝する神様、身分を超えた共通項は視聴者に親近感を与える。

飯どころを巡る日本の一般的なグルメリポートと決定的に異なるのは、生命の危険や法に触れる緊張感が常にあることだ。薬や銃が飯と同じレベルで語られる世界観は想像に難い。そうした経緯を見せられると単なるシズル感をともなう画面とは全く異なる無言の説得力がでてくる。

元少女兵やギャングやマフィア、不法入国者や難民、ゴミ山で暮らす子どもや鉱山労働者など、無縁と思いつつも日本との関連もほのめかされている。そして描かれていることは大抵が反転している。腹を空かさないようにシンナーで食欲をなくす子どもたち、腐ったものしか食べないコウノトリ、種が混ざっていればゴミ山からスイカやカボチャが生えてくる。パグパグと呼ばれる残飯は皮肉そのものだ。そして貧しいからこそ譲り合うことをする。

食事といえば思い出すのはフード理論だ。

1善人は、フードを美味しそうに食べる
2正体不明者は、フードを食べない
3悪人は、フードを粗末に扱う
ゴロツキはいつも食卓を襲う: フード理論とステレオタイプフード50 福田里香/著 

世の中が単純なシーソーゲームとは思わないが、反転した世界を知り、理解に努めることはそうでない側の責任であると感じる。出てくる彼らはみんなフードを大切に、美味しそうに食べる紛れもない善人だ。いわゆる誰かが決めた人の道を外しても生きていかなければならない。フードを大切に扱う限り、彼らを悪人と罵倒することが誰にできようか。

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