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伊上 申
2023年10月24日 18:59
チャプター8 ――その女性は所作ひとつひとつに気品があった。 立ち振る舞いから、差し出された紅茶の飲み方全てに品の良さを漂わせている。「…すみません」 紅茶を飲んで一息付いた女性は少しはにかんだように微笑んだ。「あの……」 徐に一枚のポラロイド写真を、小さめのハンドバッグから取り出してテーブルに置いた。「そこに映る人達に復讐をお願いします」「……」 黙って写真を手にす
2023年10月24日 18:57
チャプター7「…なん、で……こんな事に………?」 ――その言葉は声にならなかった。 斗真(とうま)は俯き自身の胸を見る。中心から少し左寄りのあたりに、約一センチ程の赤黒い穴がポッカリと空いている。 ――撃たれた―― そう意識する前に斗真は前のめりに倒れた。床に強く身体を打ちつける音がするが、斗真の痛覚は既に絶えていた。 薄れゆく意識と共に閉じそうになる瞼を必死に見開き、彼が
2023年10月24日 06:53
チャプター6「お前が『復讐代行』をやるって?」 その男は、ソファに大股で腰掛けるなり片腕を背もたれにかけ、もう一方の腕は後ろに控える男に葉巻を用意するように差し出す。その仕草と同時に、差し出した手には葉巻が既にありいつでも【燻(くゆ)らせる】ようになっていた。 男の見た目は――【お供】を二人従え、冠婚葬祭の正装であろう黒の背広を着崩している。どこかの反社会的組織の一員であろう。 男