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即効!管理職に必要なコミュのコツ

はじめに

本書は、
管理職に必要な
部下を伸ばす指導・支援
のためのコミュニケーション技法
(=コミュ技法)に
スポットを当てた本です。

既刊拙著
「説得の技術を高めるポイントチェック!」
(日本実業出版社)等
の見直し内容をベースに、
文章とイラストで紹介しています。

紹介する技法は、
すぐに使えて、すぐに効果があり、
いろんな場面に応用が利く技法です。
自分らしさを活かす技法です。

会社を団体や組織と、
社員を従業員や職員
といった言葉に変えれば、
どの業種や職業の方にも
お役立ていただけます。

例として紹介している言葉づかいは、
実践においては相手や状況に合わせて
変えていただく必要があります。

本書が、
あなたの
「ビジネスパフォーマンスのサポーター」
としてお役に立てれば幸いです。
田中義樹



第1章 メンバーのモチベーションを高めるポイント

1 自分の気分がよくなるあいさつをする

メンバーを伸ばす第一歩は、
相手のモチベーションを上げる
あいさつ
です。

そのためには、
次のことを心がけるようにします。
①あいさつでの声と顔の表情を
 自分の気分がよくなるレベルする
②あいさつ言葉の語尾まで
 体と目線を相手や周囲に向ける

気分は伝染します。

また、管理職としては、
あいさつに対する反応から
相手や周囲の心の状態を
汲み取ることも大事です。

明るいあいさつが返ってくれば、
「相手や周囲は乗っているな」
とわかります。

逆であれば、
「体調不良や何か問題を抱えているのかな」
ということがうかがえます。

自分の気分がよくなるあいさつは、
メンバーのよき模範となるべき
管理職にとって大切な心がけ
です。


2 関心を伝える

人は好意を持って
受け入れられていると感じると、
モチベーションが上がってきます。

そして、
相手にも好意を持つものです。
好意には好意が返ります。

メンバーのモチベーションを
上げるためには、
相手に対する関心を伝える

ようにします。

それには、次のようにします。
①相手の近況への関心を伝える
②その場での相手への関心を伝える
③相手に対する人からの情報
 への関心を伝える

まず、
「①相手の近況への関心を伝える」
ですが、
「○○さん、昨日のパートナーとのテニスはいい感じだったね」
「ええっ、見ていたんですか。なんか、照れますね」
「いいじゃない。ホットな気分をいただいたよ」
といった感じで、
相手の近況への関心を伝えます。

次に、
「②その場での相手への関心を伝える」
ですが、
「○○さん、何かいいことがあったみたいだね」
「ええ、わかりますか?」
「顔に書いてあるよ。今日もいい一日にしたいね」
「そうですね」
といった感じで、
その場での相手への関心を伝えます。

そして、
「③相手に対する人からの情報への関心を伝える」
ですが、
「○○さん、○○さんから聞いたんだけど、○○で入賞したんだって。おめでとう」
「ありがとうございます」
「これからが楽しみだね」
「頑張ります」
といった感じで、
相手に対する
人からの情報への関心を伝えます。

こういった声かけは、
メンバーのモチベーションを高める
ベースになるものです。

また、こういった関りは、
「あの、ちょっといい?」
「えぇ、いいですけど、何ですか?」
「実は、…」
といった感じで、
相手を対話に誘う際にも使えます


3 共通の体験や情報を話題にする

人は共通の体験や情報、
近い体験や情報を持っていると
親近感を覚えるもの
です。

ですから、
前述の相手への関心に
共通の体験や情報、
近い体験や情報を加えると、
相手の気持ちの中に親近感が生まれ、
対話に誘いやすくなります。

たとえば、近況に関しては、
「○○さん、昨日のA社の○○は大変参考になったね」
「そうですね。特に、○○には感心しました」
「そうだよね。うちでもあれを参考にして○○をやろうよ」
「ええ、やりましょう」(前向きな展開)
といった感じの展開です。

次に、人からの情報に関しては、
「○○さん、A社の○○さんから聞いたんだけど、同郷なんだって」
「そうなんです。先日の○○会でお話しした際に知ったんですけどね」
「実は、私は彼とは学校が同じでね。しかも、4年間サークルも同じという仲なの」
「ええっ、そうなんですか。びっくりですね」
「○○君は○○だからね」
「そうですね。今、ご指導いただいているところです」(盛り上がり)
といった感じになります。

メンバーを
対話に誘いやすくするためには、
共通の体験や情報、
近い体験や情報を活かす
ようにします。


4 ほめることを大切にする

メンバーを伸ばすためには、
「ほめる」ことを大切にします。

「○○さん、あなたのプレゼンは私たちの気持ちに応える○○な構成にしているんで、とてもわかりやすいね。特に、大事なポイントのまとめを○○さんらしい○○なまとめをしているのには、感心した」
「ありがとうございます」
このようにほめられると、
誰もが前向きな気持ちになる
のではないでしょうか。

ここで言うほめるとは、
相手のよいところにスポットを当てて、
そこを表現すること
を言います。

ほめることで、
相手のモチベーションを
上げることができます。

また、ほめることで、
相手からは
「ありがとうございます」
という言葉が返ってきます。

ほめることは、
お互いのモチベーションを
上げるもの
です。

そこで、
「ほめるには」
ということですが、
それには次のことを
心がけるようにします。
①ほめる対象の焦点をできるだけ絞る
②できるでけ早いタイミングでほめる
③適切な場でほめる

まず、
「①ほめる対象の焦点をできるだけ絞る」
ですが、
こちらは焦点の絞り度が
相手のうれしさの度合いになります。

たとえば、
相手のある言動に対して、
「○○さんの○○は素晴らしいね」
と言うのと、
「○○さんの○○だけど、○○部分が○○といった工夫がされていて、素晴らしいね」
と言ったのでは、
後者のほうが相手にとっては、
よりうれしいはずです。

また、
ほめる対象そのものにも
気をつかうことも大事です。

その対象としては、
相手の言動やセンス、
実績などを対象にする
ようにします。

次に、
「②できるだけ早いタイミングでほめる」
ですが、
基本的には文字どおり、
「ほめる」ことは
できるだけ早いタイミングで
行うようにします。

「○○さん、○○試験合格、おめでとう」
「はい、ありがとうございます。私も先ほど知ったばかりなんです」
の場合と、
「ああ、忘れてた。○○さん、○○試験に合格したんだよね。おめでとう」
とでは、
相手のうれしさが違ってきます。

後者だと、
相手は
「何だ、忘れるほどのことか。私にはあまり関心がないんだな」
という気持ちになりがちです。

そして、
「③適切な場でほめる」
ですが、
ほめる際には
効果的な場でほめるようにします。

周囲のモチベーションを上げる
ような内容については、
みんなの前でほめるとよいでしょう。

ただし、
「○○さんの○○は素晴らしいね。うちの中では君にかなう者はいないよ」
「ありがとうございます」
になると、
本人は優越感が味わえても、
周囲のモチベーションを下げかねません。

周りに人がいる所や
みんなの前でほめる際には、
周囲に嫉妬心が生まれないように
配慮する必要があります。


5 第三者のプラス評価を伝える

項目4のほめること
に関連するのですが、
人は複数人や第三者からの
プラス評価もうれしいもの
です。

特に、
第三者が相手より影響力の
ある人の場合には、
そのうれしさは
相手からのものを超えると言えます。

たとえば、
複数人の場合、
「職場のみんなが、あなたの○○については一目置いてるよ」
「後輩たちが、○○さんのことを模範とする先輩だと言ってたよ」
といった感じで伝えます。

また、
影響力のある人からのものとしては、
「○○さん、○○社長があなたの○○部分を○○だとほめておられたよ」
「A社の○○部長があなたの○○がいいね、と言っておられたよ。よかったね」
といった感じにします。
どうでしょう? 
あとは言わずもがなです。

ちなみに、
ほめるとお世辞は違います。
お世辞は過度に称えたり、
根も葉もないことを言って
煽ること
を言います。

誤解のないように。
お世辞がよくない
と言っているのではありません。
お世辞にも相手の気持ちを乗せる
というプラス面があります。

そこで、
お世辞の活用ですが、
それにはユーモア感覚で
活かす
ようにします。

ただし、
ほめること以上に
目的や相手、場を
わきまえる必要があります。

「○○さんは凄いねえ。ええ~、10年に1人出るか出ない人だね」
「またまた、人を乗せるのがうまいんだから。何か魂胆があるんでしょ」
「さすが、○○さん。察しがいいねぇ。実は、○○さんだからこそ、ということでお願いがあるんだけど…」
「まいったなぁ~。いいですよ。やりましょう」
とか、

「ここだけの話だけど、○○ができるのは○○さん、君しかいないんだから」
「また冗談を。よく言いますよ。まいったなぁ~。いいですよ」
といった展開は「あり」です。

いくぶん関連しますが、
「○○さんだから、わかってくれると思うけど」
といった
相手の自尊心への働きかけも、
場合によっては有効
です。


6 励ますことを大切にする

前項4及び5のほめること
と同様に
メンバーのモチベーション
を上げるためには、
励ますことも大事
です。

ここでの励ますとは、
相手の行ってきたことを認め、
自信を持たせること
を言います。

「○○さんはこれまで○○をやって来たんだから、普段どおりやればいいと思うよ。自信を持ってやったら」
のほうが本来の力を
発揮しやすいはずです。

「頑張れ」
と言いたいのなら、
自信を持たせることを
話したあとに言うようにします。

そこで、
「励ますためには」
ということですが、
それには日頃から
メンバー言動に
関心を持っておく
必要があります。
励まし度が好意の度合いです。

何事においてもそうですが、
人は常に高いモチベーションを
維持できるものではありません。
仕事をしていると、悩むことも、
落ち込むこともあります。
投げ出したくなることもあります。

メンバーにすれば、
そういった心理状態のときの
管理職からの励ましは助かるものです。


7 協力の気持ちを伝える

管理者にとって、
メンバーを伸ばすためには
やって欲しいことを
できるだけ任せる
ようにします。

ただし、
場合によっては
協力することも必要です。

その判断は、
「メンバーの自律のため」
というスタンスからのもの
にすることが大事です。

たとえば、
その場の相手の状況からして
協力が必要だと感じた場合には、
「○○さん、頑張ってるね。手伝おうか?」
「○○さん、深く考え込んでいるみたいだけど、私で役に立てそうかな?」
といった声かけをするようにします。

または相手の目線に立って、
「実は、私も○○さんのころに○○といった失敗をしたことがあってね。気持ちはわかる。この経験をいい経験にしたいね。今後の成長につなげるために○○を一緒に考えようよ」
とか、

「○○さんの経験からすると、○○については○○といった問題意識を持っていると思うんだけど、私も協力するから、一緒に解決策を考えようよ」
といった
声かけをすることも大事です。

加えて、
見た感じや察した感じ
について言う場合には、
プラス表現を意識する
ようにします。

たとえば、
「元気がなさそうだね」
「落ち込んでいるみたいだね」
といった、
相手の気持ちを
さらにマイナスにするような表現は
できるだけしないほうがよいでしょう。

また、
相手の目線に立つ場合に関連して、
自慢話や
「○○ぐらいはできると思うけど」
といった
上から目線の表現も
控えるようにします。

このように、
管理職から協力を伝えることは、
メンバーを伸ばすだけでなく、
共創の組織風土づくりにもつながる
もの
です。


第2章 指導のポイント

1 「相手のため」を3ポイントまでにまとめる

まず、説得とは
自分の考えや方法を
言語と非言語を使って表明し、
相手の理解と納得を得て
主体的に採用してもらうこと
を言います。

ここからは、
指導も説得の一つという観点から
話を進めて行きます。

管理者にとって、
メンバーの主体的な言動につなげる
指導力は必須かつ重要な能力
です。

ところで、
人の主体的な言動の源は
「自分のためになること」
への気づき
です。

ですから、メンバーへの指導は、
「これは自分のためになることなんだ」
ということを
相手に気づかせる働きかけと言えます。

そして、
この
「自分のためになること」
には、
利己的なものもあれば
「世のため人のため」
といった
全体最適的なものもあります。

理想は後者でしょうが、
そこは
「相手のため」
というスタンスから
目的や相手によって
どこに重点を置くか、
使い方を工夫するとよいでしょう。

そこで、
「指導を効果的なものにするためには」
ということですが、
それには次のポイントを
押さえておくようにします。
①内容のまとめでは
 「相手のため」を3ポイントまでにまとめる
②話の展開は
 相手が最初に知りたいことから話す
③内容はわかりやすく伝える
④プロセスにおいては
 相手の気持ちを乗せながら進めていく
⑤途中では適時に
 習得状況や納得状況を確認する

まず、
「①内容のまとめでは『相手のため』を3ポイントまでにまとめる」
ですが、
内容をまとめる際には、
相手の立場から
大事なポイントを3ポイントまでに
まとめるようにします。

たとえば、研修の受講を勧める場合には、
「この○○研修は、○○さんの将来において、○○ということで役立つもの」(大事なポイント1)
「1つが、○○に役立つ○○が習得できる」(大事なポイント2)
「2つ目が、○○に役立つ○○が習得できる」(大事なポイント3)
といったまとめをします。

また、
習得してほしい内容を教える場合には、
「○○のやり方を身につけるうえでの押さえどころは2点あり、1点目が、○○を○○すること」(大事なポイント1)
「2点目が、○○を○○すること」(大事なポイント2)
といった感じでまとめます。
なお、②~⑤については後述します。


2 大事なポイントをまとめることの効果

前項1で
大事なポイントを3ポイントまでに
まとめることをお勧めしているのは、
次のような効果を生むことができるからです。
①相手の関心度を高めることができる
②話の筋道をわかりやすくすることができる
③大事なポイントを印象づけることができる
④相手の理解度・納得度を高めることができる
⑤自分らしさを活かす表現ができる

①から④については、
後述の話の展開に関するところ
を読んでいただければ
十分ご理解いただけると思います。

「⑤自分らしさを活かす表現ができる」
ですが、
通常ではマイナスに感じられる
言葉グセも、
大事なポイントを話す際に
言葉グセを取って話すようにすると、
言葉グセのマイナス面が解消されてくる
ということです。

あるいは、
自分の話し方の特徴等を踏まえて、
大事なポイントの前に「間」を入れるとか、
大事なポイントを強く話すとか、
上体を前に出して話すといったことをすると、
自分らしさを活かした
大事なポイントの印象づけが
できるようになります。


3 相手が最初に知りたいことから話す

前述のように、
指導においては、
相手は早く
「自分にとっての大事なこと」
を知りたいものです。

とは言え、
相手や内容によっては
雰囲気づくりも必要です。

そこで、
指導における話の展開ですが、
基本的にはテーマを言ったら
相手が最初に知りたいことから
話していくようにします。

そのためには、
次のような展開にします。
「案内」→「注目」→「興味」→「理解・納得」→「採用」

まず「案内」ですが、
これは相手を話に誘う部分であり、
ここではテーマをハッキリと示します。

テーマへのつなぎとしては、
目的や相手に合わせて
第2章2(関心を伝える)の
メンバーのモチベーションを高める
ポイントを活用するようにします。

次に、「注目」「興味」ですが、
ここは相手の
「どういうものですか?」
「どうすればよいのですか?」
「どうしてですか?」
といった気持ちに応える部分です。

「注目」の部分では、
前項1の大事なポイントのうちの
相手が最初に知りたいポイントを話します。
「興味」の部分では、
次の大事なポイントを話します。

そして、「理解・納得」とは、
相手の
「詳しく教えてくれませんか?」
に応える部分です。
ここでは本論を展開します。

本論の展開においては、
内容や相手に合わせて次のようにします。
①問題解決的に話していく
②時系列的に話していく
③わかりやすい内容から
 難易度の高いものへと話していく
④全体がイメージできるものから
 具体的なものへと話していく

さらに、「採用」は、
相手から
「わかりました。やりましょう」
の言葉をもらう部分です。

ここはまとめの部分であり、
大事なポイントを再度話し、
主体的な言動を促してからまとめます。

ここで触れる大事なポイントは、
内容や状況に合わせて
全てのポイントにするか、
そのうちのいずれかのポイントにする
のかを決めます。

以上ように、
この展開は、
テーマを言ったら(本題に入ると)
相手が最初に知りたいことから
話していく展開
です。

実際には、相手や内容、
状況に合わせて応用するようにします。


4 指導での展開事例

指導での展開事例を
前項1の
「大事なポイントのまとめ」
の例を使うと、
次のようになります。

まず、研修の受講を勧める場合には、
「(前置き)。○○さん、○○研修について(テーマ)だけど、この○○研修は○○さんの将来において○○ということで役立つもの(大事なポイント1)なの。というのは、1つは、○○に役立つ○○が習得できる(大事なポイント2)ということ。2つ目は、○○に役立つ○○が習得できる(大事なポイント2)ということ。詳しく説明すると、…(本論)…。周囲から○○といった評価を得ている○○さんだから、そこはわかってくれていると思う。○○さんの将来において○○ということで役立つ研修(大事なポイント1)なので、是非、受講してほしいんだけど、どうだろう?」
といった感じにします。

次に、習得してほしい内容を教える際には、
「(前置き)。それでは、○○のやり方について説明(テーマ)するね。まず、このやり方での押さえどころとしては2点あって、1点目が○○を○○するということ(大事なポイント1)。2点目が○○を○○するということ(大事なポイント2)。いい、そこを押さえておいてね。それでは、順を追って説明するね。…(本論)…。繰り返しになるけど、この○○のやり方においては○○を○○すること(大事なポイント1)と、○○を○○すること(大事なポイント2)の2点を押さえておくことが大事だということ。どう、わかった?」
といった感じにします。


5 指導での展開に必要なこと

前項の4では、
単純化して一方的な話にしていますが、
実際には話の内容や相手、状況に合わせて
次のような働きかけを入れるようにします。
①「興味」の部分と「理解・納得」の部分
 の間で話す順序を伝える
②途中で理解状況や習得状況を確認する
③大事なポイントを適時に話す
④「そこは○○の○○さんだから、わかってくれると思うけど」
 とか「○○さんならではの○○が活きると思うな」
 といった、相手の気持ちを前に進める働きかけを行う

なかでも、
理解状況や習得状況の確認をすることは
大事なことなので後述します。

「③大事なポイントを適時に話す」ですが、
こちらは相手の関心が逸れそうなときや
余談を入れた後などに話を本論にもどす際には、
大事なポイントを話すようにします。

こうすることで、
次のような効果を生むことができます。
①相手の理解度・納得度を高めることができる
②時間を思うように調整できる
③質疑応答を活かすことができる

まず、
「①相手の理解度・納得度を高めることができる」
ですが、
こちらは大事なポイントを
印象づけることの効果を言います。

ところで、
大事なポイントを適時に話すことは、
文書とは違ってしつこくないものです。
文章は静止していますが、
話は流れていきます。

次に、
「②時間を思うように調整できる」
ですが、
相手が早く知りたいことから話す展開は
早い段階で「相手のため」(大事なポイント)
を話しますから、
時間がない場合には
本論の部分を少なくして
短時間でまとめることができます。

それに、
早い段階で相手が受け入れてくれれば
短時間でまとめられます。

そして、
「③質疑応答を活かすことができる」
ですが、
相手からすると
大事なポイントが頭の中に入っていれば、
説明不足や理解不足があれば
質疑応答によって補うことができます。


6 理解状況や習得状況を確認する

指導は、
相手がこちらのねらい通り
にできるようになってこそ
意味を成します。

たとえば、
教える際に、
「○○ということ。ここまでで何かある?」
「大丈夫です」
「続いてだけど、…(説明)…。ここまでは、どう?」
「いやぁ、特にありません」
「次に、○○だけど…(説明)…。以上だけど、どう、わかった?」
「えぇ」
「じゃあ、やってみてくれる」
 …(実践)…
「ええっ?」
「おいおい、何だよ、それは? 全然わかってないじゃない。また最初からになるよ。わからなかったら、いい加減な返事をせずに訊いてくれればいいじゃない」
「はい、すみません」
となったのでは、
それまでの時間が無駄になってしまいます。

指導においては、
途中での理解状況・習得状況の確認と、
まとめでの納得状況・体得状況の確認が
とても大事
です。

それには、
途中において適時に、
「○○さん、ここまでを整理してみて」
あるいは、
「やってみて」
といった働きかけを行います。

さらに、「まとめ」において、
「じゃあ、自分の言葉でまとめてくれる」
あるいは、
「では、最初からやってみて」
といった働きかけをします。

どの程度にするかは、
目的や相手、状況を
踏まえたものにします。

また、
このプロセスにおいては、
相手の気持ちを前向きにする
うなずきやあいづち、
ほめることや励ますことを
入れる
ようにします。

当然、
「まとめ」おいても、
同様のことを行います。


7 わかりやすく効果的に伝える

相手の理解・納得に
つなげるためには、
内容をわかりやすく
効果的に伝えることが大事です。

そのためには、
まず
「言葉づかい」
をわかりやすく
前向きなものにします。

つまり、
相手の「知識レベル」に
合わせた言葉づかいと、
相手の気持ちを
前向きする言葉づかい
をします。

特に、
後者については
次の言葉づかいを
比較してみてください。
「○○さんの不平・不満については」と「○○さんの意見については」
「テンポが遅いね」と「慎重にやってるね」
どうでしょう?
後者だと
相手は前向きに
受け止めてくれるはずです。

その他にも、
次のことを意識するようにします。
①数字化によって訴求力を高める
②対比表現によって一方を際立たせる
③比喩でわかりやすく伝える
④第三者を登場させて説得力を高める
⑤視覚情報を使って分かりやすく伝える

まず、
「①数字化によって訴求力を高める」
ですが、
わかりやすく伝えるためには、
可能であれば
内容を数字化することで
訴求力を高めるようにします。

たとえば、
「この○○をすることで、○○さんの○○する時間をかなりカットすることができる」の
「かなりカット」を「2割カット」
と、数字で表現します。

その他にも、
「すごく」
「相当」
といった大雑把な表現も、
数字で表現することで
訴求力を高めることができます。

それに、
内容への注目度・興味度を
上げることもできます。

ただし、
数字で伝える場合には
十分に根拠のある数字を使う
必要があります。

いい加減な数字を使うと、
逆に訴求力を失うといった
数字の持つマイナス効果
が出てきます。

次に、
「②対比表現によって一方を際立たせる」
ですが、
こちらは
他のものと比較をすることで
一方を際立たせます。

たとえば、
「10万円というとずいぶんと高いと思うだろうけど、これは年間だから、1日にすると274円ほどなんで、○○のコーヒー代にもならないよ」
「○○さんは、○○の部分は普通だけど、○○に関しては部内では彼の右に出る人はいないから、○○さんに教えてもらったら。私からも頼んでおくから」
といった表現で
後者を際立たせます。

この対比表現においては、
プラスの部分を
後に持ってくることと、
他者あるいは他社との
比較の場合には
相手方をけなさない
ことが大事です。

まず、
対比した場合には
前よりも後ろのほうが
際立ちます。

また、
他者あるいは他社をけなす
ということは、
自分あるいは自社の評価
を下げることになります。

そして、
「③比喩でわかりやすく伝える」
ですが、
物事を「喩え(たとえ)」で
表現することで
内容への理解度・納得度を
上げるようにします。
 
たとえば、
「年間○○というと、東京ドーム○○杯分」
「○○万円というと、人件費に換算すると○○人分になる」
といった表現をします。

さらに、
「④第三者を登場させて説得力を高める」
ですが、
相手にとって信頼度が高い
次のような第三者を話題に出すことで
説得力を高めるようにします。
・オピニオンリーダー(世論形成をリードする評論家やジャーナリスト、大学教授等)
・ポジションパワーのある人(経営幹部等の決裁権者)
・実績を上げている人

たとえば、
「この案は○○社長の発案だけに、是非○○さんに実現してほしいんだけど」
「この方法は○○で有名な○○さんの方法でね。ご本人から許可を得ているんで、○○さんに我社向きにアレンジしてほしいんだけど」
といった感じにします。

加えて、
「⑤視覚情報を使って分かりやすく伝える」
ですが、
話すことでは
伝わらないものや
伝わりにくいもの、
あるいは話以上の効果が
望めるものについては、
図や表、動画や写真で
表現するようにします。


第3章 気づきを引き出す支援のポイント

1 気づきを引き出す質問を活かす

メンバーを伸ばすためには、
前述の説得とともに、
相手の気づきを引き出して、
その実践を促す支援も大事です。

ここでいう支援とは、
「答えは相手の頭の中にある」
というスタンスから
次の働きかけを行うことを言います。
①質問をメインに
 相手に必要な改善のためになすべきことや
 新たな考え・方法を引き出す
②そこから生まれた気づきの実践を促す

一般的に、
自分の頭の中にあるものを
他者に言語と非言語を使って
表現することには、
次のようなメリットがあります。
①その内容を整理することができる
②改善すべきことへの気づきが生まれる
③新たな考えや方法への気づきが生まれる

つまり、
支援はこれらのメリットを
意図的かつ効果的に生むための
働きかけです。

そこで、
「支援を実効性の高いものにするためには」
ということですが、
それには次のことを行うようにします。
①改善のためになすべきことや
 新たな考えや方法を引き出す質問をする
②相手の気持ちや考えの背景(ものの見方や価値観)
 まで汲み取りながら聴く
③相手の表現内容をオウム返し的に返すとか、
 あるいは要約をして返したり、
 やってみせることで客観視してもらう
④相手の気持ち前に進める働きかけをする

加えて、
質問の対象としては目的や相手、
内容によって、
相手や他者の言動、事物を対象にします。


2 使える質問

使える質問としては、
次のような質問を活用するします。
①視点を変えて見てもらう質問
②点数化してもらう質問
③気づいたことや感じたことへの質問
④焦点を絞った質問
⑤すぐに効果が実感できる答えを求める質問

まず、
「①視点を変えて見てもらう質問」
ですが、
こちらはできるだけ高い位置や
未来から見てもらうようにします。

たとえば、
「○○さん、あなたが○○長だったら、この現状をどうする?」
「○○さん、2年後のあなただったら、今のあなたに、どんなことを言う?」
といった問いかけです。

次に、
「②点数化してもらう質問」
ですが、
「○○さん、○○について10点満点で評価すると何点つける?」
といった問いかけです。

そして、
「③気づいたことや感じたことへの質問」
ですが、
「○○さん、○○についてどう感じた?」
「○○さん、○○をしていて何か気づいたことがある?」
といった問いかけです。

さらに、「④焦点を絞った質問」ですが、
「○○さん、○○に限って見ると、どう?」
「○○を○○するということでは、どう?」
といった問いかけです。

加えて、
「⑤すぐに効果が実感できる答えを求める質問」
ですが、
「ひとつのことで即、周囲から見て、変わったな、と思われるようにするには何をする?」
といった問いかけです。

この質問は、
相手の気持ちが緩んだところで
行うと効果的です。

たとえば、
「時間をもらってありがとう。(間)ああ、そうだ、あとひとつ訊いていい?」
「えぇ」
「ひとつのことで即、周囲から見て、変わったな、と思われるようにするには何をする?」
「何々をします」
「それいいね。それをやろうよ」
といった感じにします。

いずれにしても、
支援の目的は、
相手の主体的な言動につなげること
です。

「気をつけます」
「注意します」
「考えてみます」
といった気持ちの表明だけでは
まとめないようにします。

ここでは、
相手から引き出した
改善すべき行為・行動や
新たな考え・方法を
主体的に実践してもらう
ことが大事
です。


3 支援の進め方

支援の進め方ですが、
前述第3章の説得と同様に、
支援においても相手は
「自分のためになること」
への気づきを早く得たいのです。

そこで、
まず気軽な支援としては、
前項2(使える質問)をメインに
次のようにします。

たとえば、
「○○さん、○○について10点満点で評価すると何点つける?」
「5点です」
「ほぉ~、5点ね。5点上げたいね。それには何をする?」
「○○をします」
「いいじゃない、じゃあ、今からそれをやってね」
「はい」
とか、

「○○さん、○○をしていて何か感じたことがある?」
「○○については、○○をする必要があると思いました」
「さすが、それは大事な気づきだね。早速、水平展開しようよ」
「ええ」
といった感じのやり取りをします。

さらに、
深く入り込む支援での展開は
次のようにします。
「案内」→「客観」→「改善・発展」→「実行」

まず、
「案内」ですが、
ここは相手を支援に誘う部分です。
ここではテーマをハッキリと示します。

テーマへのつなぎとしては、
目的や相手に合わせて
第2章の2(関心を伝える)の
部下のモチベーションを高める
ポイントを活用します。 

次に、「客観」ですが、
こちらは改善すべき点や
論理的に不十分な点に
気づいてもらう部分です。

ここでは、
質問をメインに
相手の気持ちや考え・方法など
を客観視してもらいます。

それには、
相手が表現する内容に対して
次のようなことを行います。
①オウム返し的に返す
②要約をして返す
③やって見せる

この客観視を
効果的なものにするためには、
的確な質問をする必要があります。

それには、
相手が表現している内容の背景まで
汲み取ることが大事です。

支援の根幹は、
相手に自身の気持ちや考え・方法などを
客観視してもらうこと、
と言えます。

そして、「改善・発展」ですが、
ここは改善のための行為・行動や
新しい考え・方法を引き出す部分です。

ここでは、
「どういう行為・行動を習慣にしていく?」
「○○の視点からすると、何か見えてこないかな?」
といった質問によって、
実践すべきことを引き出します。

さらに、「実行」ですが、
こちらは前述の「改善・発展」
での気づきの実践を促す部分です。

ここでは、相手をほめるとか、
励ますことによって実践を促します。

目的や状況によっては、
改善のための行為・行動や
新しい考え・方法のポイントなど
を再度話してもらいます。

加えて、
この支援を効果的なものにするためには、
プロセスにおいて、
相手の気持ちを前に進める
次のことを心がけるようにします。
・適当なうなずきやあいづちを入れて聴く
・ほめたり励ましたりする

以上の展開は、
基本として活用していただくためのものです。

実際には、目的や内容によって、
じっくりと働きかけることもあれば、
働きかけをほとんど行うこともなく
相手のペースで
スッと「実行」の部分まで
いくことも「あり」です。

また、
深く入り込む支援を
効果的なものにするためには、
日常の気軽な支援を大事にします。


4 改善を求める事例

ここでは、改善を求める事例を紹介します。

「(雰囲気づくり・了承の言葉をもらう)。○○さん、あなたの○○についてだけど(ここまでが「案内」)、10点満点で評価すると何点つける?」
「8点です」
「ほぉ~、というと?」
「それは、…(説明)…」
「ということは、○○さんの10点満点の状態は○○だということ?」
「そうです」
「○○さん、いい?」
「はい」
「私は、○○さんは○○のレベルをクリアできる人だと思ってる。○○と○○の部分にも視点を向けて評価すると、どう?」
「ええ、改善する必要があると思います。ということは、かなり評価が甘かったんですね。○○とか、○○について、○○する必要があると思いますね」
「いい気づきだと思うよ。そこでだけど、今後につなげるために今の10点満点の状態を整理してみてくれる」
「ええ、それは…(説明)…」
「いやぁ~、そうだね。私もそう思う。じゃ、その状態からすると、どこを改善する必要がある?」
「そうですね。○○と○○、それに○○を○○のレベルにする必要があると思います」(ここまでが「客観」)
「そうだね。いい整理ができていると思うよ。とすると、そこを改善するためには何をする? 『気をつけます』や『注意します』ではなく、行為・行動ということでは、どう?」
「○○についてはですね、…。そして、○○についてはですね…」
「なるほど。いい感じになっていると思うんだけど、○○についてはもっと具体的な行為・行動にしたいね。○○の視点から見ると、どうだろう?」
「そうですね、○○をしていきます」(ここまでが「改善・発展」)
「いいじゃない。あとはそれらをやり続けることだね。さあ、そこで、今いろいろと話してくれたことを整理してみて」
「ええ、○○についてはですね、…」
「いいね。○○の感じになると思うな。私で役に立つことがあったら言ってね。協力するから。お疲れさま。ありがとう」(ここまでが「実行」)
といった感じです。


5 説得と支援の違い

これまでのところから
気づかれたと思いますが、
説得と支援の違いを
簡単に整理すると次のようになります。
①説得の内容は説得者の頭の中にあり、
 支援での答えは相手の頭の中にある
②説得は説得者の表現がメインになり、
 支援は相手の表現がメインになる

こうして説得と支援の違いを見ると、
支援は自身の頭の中にあった答えに気づき、
それを実践するわけですから、
支援の方が説得よりも
相手の主体的な言動度が高く
有効な方法であると思われがちですが、
そうとは限りません。

たとえば、
こちらの意向どおりに
実践してほしい内容に関する
知識や経験のない人、
足らない人に対しては、
やるべきことを教える必要があります。

説得も支援も、
相手の主体的言動につなげる
有効な方法
なのです。
どちらが云々というもの
ではありません。

相手に合わせて、
どちらかをメインにするか、
組み合わせて活用する
ようにします。

大事なことは、
「相手のためをつくる」
というスタンス
です。




著者プロフィール
田中義樹(たなか・よしき)
旧郵政省に8年勤務後、テレビ番組の司会等を10年経験。
その後、日本能率協会マネジメントセンター専任講師等を経て、
現在は人財育成コンサルタントとして活動中。
管理職研修や職場活性化研修、クレーム対応研修等
ビジネスコミュニケーションに関する研修・講演を行っています。
著書には「一番つかえるクレーム対応のやり方がわかる本」
(日本実業出版社)等があります。

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