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りんごを「毒」と記憶した体を持つ私

「このままだと40歳まで生きられないかも…」そう他人事のようにつぶやいた。一人暮らし30過ぎ独身OLだった私は、ハードな通常業務や残業の上、社員旅行の企画や幹事、休日出勤も。

体が2つ欲しい、1日48時間あれば、通勤時間短縮のため職場の近くに引越しまでする会社人間。退職時には4人に業務を引き継いだのだからキャパオーバーだったはずだ。時に足が腫れパンプスが履けなくなるも原因不明と診断され、生理も止まり、おたふく風邪にかかったあげく、アレルギー検査ではあらゆる花粉症が散見された。

特に深刻だったのが「しらかば花粉症」由来の「果実アレルギー」。白樺が自生する北海道や長野県に多いとされ、バラ科の植物、特にりんご、桃、梨、さくらんぼ、キウイなどは生(なま)で食べられない。医師からは
「りんごを食べなくても生きていけるから」と言われるも、今まで大好きだった果物が食べられない。「1日1個のりんごで医者いらず」の諺は意味をなさず、その日から私には「毒りんご」になった…。

結婚後、主人の親戚の桃農家から自宅に桃が届けられる。もちろん桃もNG。その甘い香りと柔らかで瑞々しい色の果実の誘惑。一切れ口にし、美味しいと喜んだのもつかの間、喉が腫れ、器官が狭まり呼吸が苦しく、みるみる顔が赤らみ、ぐったりした私を見ていた夫は逆に真っ青。アレルギーとはこういうことかと理解し、家計の食費を占めるエンゲル係数がバカみたいに高い我が家でも、これらの果物を買うことはほぼない。この時も万が一のため病院の診療可能な時間に試していた。

症状はモノや量で個人差があり、その時の体調も影響する。体の反応は正直すぎて負の反応を記憶した体にとっては、ある程度我慢し食べない努力は今後も必要…というわけで、外食の〆のデザートに細心の注意を払う。周りの理解あっての白雪姫。毒りんごの誘惑に負けず家族や仲間たちに協力してもらい過ごしていきたいわ。


リブリオエッセイの元になった作品はこちら↓
伊藤亜紗著 「記憶する体」



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