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今月限りで閉店いたします。


久しぶりの雨と肌寒さを感じる日
雨を避けてアーケードの商店街にある古い書店に立ち寄ったのです
老舗のその書店は、あきらかに商品が品薄な状況が見え
閑散とした店内は外の肌寒い空気をそのまま持ち込んでいるようでした。
入れ替わり立ち代わりに立ち寄る客もあっという間に一回りして店外へと通り抜けていきます。

いつも通る道なのにその案内には気が付かなかった…


初老の男性が閉店を惜しむ言葉を店員に伝えて数冊の本を購入されていました。

待ち合わせ場所であり情報を得る場所、思い出が詰まった場所。
私も思い出の恩返しをと普段なら購入をためらう値段の”山の本”を一冊。
書店の名前の入ったカバーをかけて頂き店を後にしました。

さて、これは思い出を共有する友達に知らせねばとLINE送信
「寂しくなるね…」
「いつも立ち読みしてたわ…」
「待ち合わせ場所だったなぁ…」
そうです。数回もしかすると数十回利用の一回本を買う程度…
一時は、毎日のように通いつめ昼休みの時間つぶしにウロウロ
本を買った金額の合計を思ってもこの書店の経営に貢献できた自信は皆無
なのに当たり前のように本屋さんは無くならないと信じていました。
なんと傲慢な客です…

当時、本屋さんで眺める活字が情報を得る貴重な場所でした
好きな作家の本を探して本屋さんをハシゴしたり
新刊と出会うのも本屋さん…

気が付けば無くなったもの。昔ながらの喫茶店、雑居ビルのミニシアター、レコード店…その後にドラッグストアとコンビニがメイン通りを埋め尽くしています。

大好きな映画「ユー・ガット・メール」。絵本専門店の店主メグ・ライアンと大手ブックセンターの経営者トム・ハンクスのラブストーリーに書店の今が映し出されています。
利益の少ない出版業界で生き残るためには、そこに足を運ばなければ得られない特化した魅力が必要だという事でしょう。
なんでも手の中のスマホで検索し、欲しいものは宅配ボックスに届くばかりでは少し豊かさにかけているように感じます。時短生活の逆を行くのも良いのかもしれません。

この数年後、本棚の”山の本”は、あの日の肌寒さと雨の匂いと寂しげな書店の景色を思い出させてくれると感じます。






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