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パンの内部ってなんて呼ぶ?

「生地」ってなに?

唐突ですが、「生地」(「きじ」です。「せいち」ではありません。)という言葉が何について指すのか記事にします。
ことの発端は自分の記事「鼻毛石の思い出」内の言葉の誤りです。
以下自己引用。

焼きまんじゅうは冷めてしまうと本当に不味いのです。焼き立ては生地がふかふかしていて、甘塩っぱいタレと生地の香りがたまらないのですが、冷めるとゴワゴワとした食感となり、タレもクドく感じます。

「鼻毛石の思い出」
https://note.com/tasty_elk73/n/nebe30d993542

この文を書いた時は全く違和感なく「生地」と使っていました。しかし、「生地」は「生の下地」のことです。私は文中で、生の下地に焼く、煮る、蒸すといった加工をしたものに対して「生地」と言ってしまっています。明らかに誤用です。
一応、辞書を引いて意味を調べます。

き‐じ【生地・素地】‥ヂ
(「木地」とも書いた)

1人工を施さない自然のままの質。生れつきの質。素質。ひとりね「それにしたつるものは―から念の入て、骨ぐみたしかに教ふるにより」。「―が出る」
2化粧を施していない素肌すはだ。素顔。
3布・織物などの地質。また、布・織物。染色などの加工を施すための材料織物。「洋服の―」
4麺やパン・菓子などを作るときの、火を通す前の状態の材料。主に小麦粉を捏こねて製する。
5陶磁器の、まだ釉薬を施さないもの。陶器の骨格。

広辞苑

パン、麺以外にも繊維、陶器についても言えますが、いずれにせよ「加工前の素材」のことと言えます。
これで「生地」の意味がわかりました。

まだ解決じゃない!!

これで終わりではありません。
「生地」の意味を調べただけならわざわざ記事にせず自己完結します。
本当に知りたいのは、「焼いたパンの内部、ふかふかの部分」をなんと呼ぶかです。
パンといっても、表面の焼き色がついた部分と内部のふかふかとした部分に分けられます。食パンをイメージしてもらえれば分かりやすいです。
(メロンパンなんかはクッキー生地を貼り付けて焼きますので、クッキー部分もありますが、これは考慮外にします。際限がなくなるので。)

少し考えましたが、パンの内部を指す言葉は全く思い浮かびません。大人しく調べます。「パン 部位」で調べます。
答えらしきものはすぐ出てきました。
「パン職人の朝は早い」という、パン職人の奥さんをもつ杉原睦弘氏が運営しているサイトです。以下に引用します。

クラム(内相)とは
クラム(crumb)」はパンの身である、スポンジ状のやわらかい部分のことです。
食パンでいえば、パンの耳の内側ですね。白いモチモチした部分です。日本語での正式な名称は「内相(ないそう)」ともいいます。
食パンのように身が詰まったものだけをクラムと呼ぶわけではなく、フランスパンのようにクラムの気泡が大きくスカスカになっていたとしてもクラムと呼びます。

パン職人の朝は早い「パンの耳の正式な名称とは?パンの部位を紹介!クラスト!クラム!すだち!骨格もあるよ!」
https://lifehackdev.com/BakerStreet/archives/42

簡単に解決しました。パン内部のふかふかの部分は「内相」と呼ぶそうです。めでたしめでたし。
とはなりません。なぜなら「内相」はパン職人による業界用語だからです。
誰にでも通じるような既存の一単語で言い表したいものです。

考案してみる

それではパンの内相のことをなんと呼ぶ考えることにします。パンに関する記事を見ましたが、なかなかしっくりくる呼び名は見つかりませんでした。残念。

候補1「中身」

結論から言えば、「中身」では内相の代替語にはなりません。
「中」はまだいいとして、「身」は何か「具」のことを思い浮かべてしまいます。
(厳密に言えば「中」もだめです。「中」は「外部と分け隔てられた空間」を意味します。具のないパンには空間はないので、「内」の方が適当でしょう。」

候補2「内部」

「内部」はいいと思います。焼き目のついた皮、外の部分の内側に内相はあります。内相を表すのにこれ以上なく適した言葉です。
ただし、やや硬い印象があります。

候補3「生地」

「生地」が誤用であることは重々承知です。
ただ、「内部」には軽視できない問題があります。「パンの」という意味を全く含んでいないことです。もちろん、脈絡なく突然「内部」と言って「パンの内部」と伝わらないのはそうですし、パンの話題の途中でも「ん?」となりかねません。試しに、自己引用文の「生地」を「内部」に置き換えてみます。

焼きまんじゅうは冷めてしまうと本当に不味いのです。内部がふかふかしていて、甘塩っぱいタレと内部の香りがたまらないのですが、冷めるとゴワゴワとした食感となり、タレもクドく感じます。

前言撤回です。通じます。
これでは誤用を承知の上でわざわざ使う意味はありません。

結論

大した結論ではありませんが、パンのふかふかした内側の部分は業界用語で「内相」といい、一般に使われている語で表現するなら「内部」が適切(ただしパンのことが話題になっている場合に限る)、ということになりました。
ただ、妙案があれば教えて欲しいものです。おわり。

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