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家で商いする #空き家の福祉活用

「家で商いする」ことの広まり

郊外の住宅地で、空き家を活用して色々な商売をする職住一体住戸が広まっています。美容室や喫茶に加えて、サロン、ギャラリー、料理教室、小物販売、整体・マッサージ。さまざまな商いがあります。郊外の住宅が寝て、食事をする場所だけだったのが、仕事をする場所にもなってきました。家が街に開かれると、人の動きが見え、風景が変わってきます。

職住一体住戸

たとえば、私たちの郊外住宅地の現地調査(2015年)では戸建て住宅の約3.6%に職住一体住戸がみられました。

コミュニティサービス付き住宅

商いをする家の中でもコミュニティサービス機能(以下、CS)を持つ家は日中の様々な生活の拠点となり、住居専用地域ではあまり表に出ることのなかった「まちの生活」が見えるようになっています。生活が見える化した住宅地を歩くと、いろいろな発見があり楽しい出会いがあります。

コミュニティサービス機能の分類

コミュニティサービス(CS)は厚生労働省の資料 からみると、学び、余暇、生活、医療、福祉など様々な用途に使われています。整理すると上図のように1居場所、2カフェ/レストラン、3ガーデン・菜園、4趣味・楽しみ、5ワーキングスペース、6スタジオ/ギャラリー、7運動・介護予防、8理容・美容、9リハビリ/マッサージ、10外出支援、11店/コンビニ、12デイサービス/ショートステイ、13シェアハウス、14介護相談・介護者支援、15見守り、16家事生活支援など多種あり、それらが組み合わされて事業が展開されています。担い手は退職後のアクティブシニアだけでなく、30代後半〜50代の単身や子育て世帯も多く、多様な世帯の受け皿になっていることもCS住宅の特徴です。空き家の用途変更の事例から、草の根的に様々なコミュニティ機能を持つ「新しいまち家」が生まれつつあることが分かります。

ギャラリーショップ付き住宅

庭からのアクセスできるギャラリーショップ付き住宅

この事例は夫の退職を機に築16年の中古物件を購入し、リビングを店舗に使用したCS住宅である。転居前は隣接地区のマンション居住しており、喧騒を避けて静かな場所で暮らしたい、叔母の介護に通える圏内で、犬を飼いたい、二人とも車の運転ができるので駅周辺でなくてもよいなどの条件が揃ったことが転居の理由であります。角地であるメリットを生かして、外周工事によって客用駐車場と庭へのアクセスを確保し、ベランダを専用玄関にしてリビングに入るようにして生活と仕事の活動動線を分けています。外部より店内の様子が覗け、ふつうの住宅とは違う雰囲気となっている。店内も「生活感を出さない」ことを重視した作家によるうつわ・食器の販売スペースになっています。既存の洗面台付のトイレをそのままにして店舗と住まいとの兼用としています。 

住宅改修型のデイサービス

駐車場にEVを設けて車椅子でもアクセスできる住宅改修型デイサービス

この事例は、親の在宅介護を機会に住宅用エレベータの設置やトイレ・浴室の改修を施した住宅を生かして、在宅介護センターと認知症デイサービスに活用した事例です。玄関の段差はそのままにして、隣接する駐車場に設置したE Vを活用して、駐車場レベル、1階レベル、2階レベルをつなぎ、車椅子利用者も雨に濡れることなく入室し上下移動できる環境を作っています。室内は既存の和室やキッチンダイニングを活用して、日常的に馴染みのある生活空間となっているため認知症高齢者に安心感と落ち着きをもたらしています。

住宅改修型のグループホーム


門からリビングまでスロープでつないで車椅子でもアクセスできる住宅改修型グループホーム

この事例は、転勤で長年空き家であった物件を賃貸し、それを改修して障害者グループホームに用途変更したCS住宅です。泉北ニュータウンのある堺市では障害者グループホームに入居したい待機者が600名程度おり、グループホームが不足しています。泉北ニュータウンは緑豊かな良好な住環境があり、比較的規模の大きい家が多いので、グループホームが継続的に開設できる可能性があり、今回がそのプロトタイプになります。住宅から障害者グループホームへの用途変更は確認申請を必要としました。改修工事は6つの個室と管理人室、浴室、スプリンクラー設備、構造補強、バリアフリー工事、リビングアクセスのスロープ設置など大規模になりました。庭に面してオープンなリビング・ダイニング・キッチンを設け、入居者は主に既存の玄関でなく、庭から車椅子のまま出入りできます。日中はバスの送り迎えのある作業所へ通っています。

ワーク 「家で商いする」について自分で調べてみよう

あなたの住む身近な近隣では「家で商いする」はどんな状況か調べてみてください。やってみると、色々な気づきがあります。
まず表札をみます。家の表札に店や事務所の名前があるものを食住一体住戸とします。また表札が剥がされてないものや、庭や郵便物が荒れて住まわれていないように思われるものは空き家とします。

①ネットから概ね100m四方の地図をダウンロードする。
②歩きながら外から家を見て、ひとつづつ分類する。
・職住一体住戸「家で商い」
・店舗
・一般住戸
・空き家
・空き地
③地図上にその内容を記号か色でマークする
④出来上がった地図を見て、この地区の特徴や気づいたことを100字程度でまとめる。

❺最後に、市役所のホームページから「用途地域」を検索し、その地区の都市計画上の用途指定を確認してください。現状と都市計画との一致・不一致からまちの課題が見えてきます。

【参考文献】福祉環境デザイン原論〜居住のブリューイング、森一彦、2022


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