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世界経済主役の交代

先月までのnoteでは、楽天Gについて書いてきました。今度は世界レベルの企業について書いていきたいと思います。今日本で最も挑戦的な企業が楽天Gだとすると、世界レベルで挑戦的な企業はどこでしょうか。というわけで、まずは現在2024年の世界の技術革新の現在地を分析してみたいと思います。

ここ10~15年の技術革新の主役は、スマートフォンでした。2007年にAppleのスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表し、それは電話とインターネット、音楽プレーヤーをつなげた革新的なデバイスでした。ガラケーが全てスマートフォンに駆逐され、インターネットがより一般人にも身近に感じられるようになり、スマートフォンを使った新たなビジネスモデルの構築、それが2010年代のGAFAという巨大IT大手の躍進につながりました。
しかし、スティーブ・ジョブズは2011年に亡くなり、2020年代に入ると、スマートフォンの進化はカメラの高性能化や、大画面化、カラーバリエーションの豊富さをアピールする程度に留まり、もはやスマートフォン市場は飽和状態となっています。
そこで、2020年代に入ると、ポストスマートフォンの技術革新を多くの企業や起業家が探し始めました。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスが進める宇宙開発や、MetaやAppleが進めるAR・VR事業はその例です。ただ、やはり2024年現在のポストスマートフォンの技術革新の筆頭はAIでしょう。
つい先日ChatGPT-4oがリリースされ、2022年に初めて登場したChatGPTの性能は格段に進歩しました。マルチモーダル化、人間との自然な会話運び、ありとあらゆる部分でAIは加速度的な進化を続けていることが実感できました。
先程述べたようなことは、企業の時価総額ランキングの変化からも見て取れます。2011年初めてAppleが世界時価総額ランキングトップに立ち、その後2023年までの約10年間、一時的に他の企業がトップになることはあったものの、Appleはほとんどその座を譲りませんでした。しかし、2024年になると、時価総額トップはAppleから、OpenAIとの提携などAI分野で他をリードするMicrosoftへと移行します。また、AI開発に欠かせない半導体であるGPUをほぼ独占的に製造しているNVIDIAの時価総額が世界3位に浮上し、先のApple、Microsoftに次いで米企業史上3社目となる時価総額2兆ドルを達成しました。これがここ10~15年の間に起こっている事実をまとめたものです。

ここからは、私の予想を述べます。おそらくこの10~15年の技術革新の主役はAIになるでしょう。そして、Microsoftと、NVIDIAが時価総額世界トップを巡って激しく争う、あるいはNVIDIAがこの10年のAppleのようにトップを取り続ける、このような展開になると考えます。2010年代のスマートフォンシフトに乗って、企業業績を伸ばしてきたGoogle、Amazon、Metaの3社は今度はAIシフトに乗ってまた企業業績を伸ばしていくことになるでしょう。それと同時に、AI時代にはAIを利用して企業業績を伸ばした企業群が、GAFAとは別に出現する可能性があります。

というのも、もっと長い時間軸で見ると、NVIDIA、AIの隆盛は必然のように思えるからです。先程の時価総額を例にして、これを説明してみます。過去19世紀後半頃~現在までの時価総額世界トップに立ち、それを年単位で継続した純粋な民間企業は9社あります。それは、ニューヨークセントラル鉄道(NYC)、USスチール、General motors(GM)、AT&T、IBM、Exxonmobil、General Electric(GE)、Microsoft、Appleです。
(ニューヨークセントラル鉄道は間違っているかもしれません、、。)
※NTTや、PetroChina、SaudiAramcoもトップになっていますが、半官半民のような企業なので除外しています。
※Walmartや、Coca Cola、Amazonも一時的にはトップになっているようですが、その期間が短いため、除外しています。
これらの企業はそれぞれ鉄道、鉄、自動車、電話、メインフレーム、石油、電力、パソコン、スマートフォンという人類の進歩には不可欠な製品やサービスを提供し、時代の流れを作ってきたがゆえに時価総額世界トップの座に立っていると言えます。
また、面白いことにこの9社を分類すると、
NYC、USスチール、GM、GE、Exxonmobilは移動の民主化
AT&T、IBM、Microsoft、Appleは情報の民主化
を推進している企業と言えます。昔は移動の民主化が技術革新の主流でしたが、ここ数十年は専ら情報の民主化が技術革新の主流と言えます。

さらに、ここからはその情報の民主化を深堀していきます。1960~1970年代はIBMのメインフレームの天下でした。しかし、この時代は公権力や大企業しかコンピューティングパワーを使えず、まだまだ情報の民主化とは程遠い状態でした。
ですが、1980年代にパソコンが生まれると、一般の個人でもコンピューティングパワーを身近に利用できるようになります。1980年代はIBMとAppleがこの業界で鎬を削っていましたが、1990年代には、Windows95の登場で、MicrosoftがパソコンOS市場をほぼ独占的に牛耳りました。Microsoftが初めて時価総額世界トップになったのも1990年代です。
2000年代に入ると、2001年にスティーブ・ジョブズがAppleに復帰し、Appleは復活を遂げ、2007年のiPhone登場以降パソコンよりもさらにインターネット、コンピューティングパワーが人々の生活の奥深くに入り込んできました。そして、先程も述べた通り、2010年代のスマートフォンシフトに乗ったGAFAの登場へとつながっていきます。
ここまでが皆さんもよくご存知の現在までの情報の民主化の歴史です。
では、スマートフォンの登場で情報の民主化は終わったのでしょうか?今の状況を整理すると、インターネットへのアクセスはほとんどパソコンとスマートフォンを介して行われます。そして、パソコンとスマートフォンのOSは、現在Microsoft、Apple、Googleの3社にほとんど寡占されています。これは果たして民主的と言えるのでしょうか?
そこで、AIという概念が出てきます。今パソコンとスマートフォンに牛耳られているインターネットやコンピューティングパワーへのアクセスを、ほぼ全てのモノに広げたらどうでしょうか?例えば、自動車や家電、我々が身に着けている衣服など今までアナログと思われていたモノに、コンピューティングパワーを搭載し、AIで最適な処理を行う。これが自動運転、IoTにつながります。
そして、このAIを利用した自動運転、IoTの概念をNVIDIAは急速に進めようとしています。現在はChatGPTといった生成AIに注目が集まり、生成AI開発に必要なGPUを独占的に提供しているNVIDIAということで注目が集まっていますが、NVIDIAはAIを利用したさらに先の未来を切り開こうとしています。もし、競合のAMDやIntel、あるいは新興の半導体メーカーが生成AIのGPUシェアをNVIDIAから数年かけて奪ったとしても、その時にはNVIDIAは自動運転やAIロボットへ自社のビジネスの軸足を移していると考えます。NVIDIAは元々ゲームの画像処理を祖業とする会社ですが、画像処理から仮想通貨のマイニング、そしてAIへ自社の経営資源の集中度合いを時代に合わせて移してきたことからもそれが窺えます。もしかすると、スマートフォンシフトに乗り遅れたIntelを反面教師にしているのかもしれません。
というわけで、情報の民主化の観点から言えば、Apple、スマートフォンの技術革新の次はNVIDIA、AIといっても差し支えないでしょう。

来る日本時間5月23日朝NVIDIAの2024年2~4月期の決算発表があります。世界経済を左右する企業の決算に注目が集まることは間違いないですね。


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