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地域の温もりに触れる“鉄道マン”の仕事

樽見鉄道で働く清水さんをもとまるが訪問

樽見鉄道は、岐阜県大垣市の大垣駅から本巣市にある樽見駅までの約35kmをつなぐローカル列車です。1956年の開業以来、地元の人たちの足として、また観光列車としても活躍しています。

鮮やかなブルーに赤のラインがレトロでかわいい樽見鉄道の車両


南部の田園風景を抜け北へ走ると、車窓からは根尾川沿いの渓谷美が広がり、春には国天然記念物の淡墨桜、夏には青々とした柿畑、秋の紅葉、そして冬には山々を白く染める冬景色など鮮やかな四季の美しさが楽しめます。

撮影スポットとしても人気な日当駅


今回は樽見鉄道の本社がある本巣駅をもとまるが訪問し、企画営業課長の清水弘樹さんの仕事を見学しました。



子どもの頃からの夢がつながって

にぎやかな大阪の町で生まれ育った清水さん。21歳の頃、心斎橋のコンビニでアルバイトをしながら、将来について悩んでいた時、幼い頃から好きだった鉄道の仕事が思い浮かびました。鉄道業界で働くのは狭き門と知っていましたが、偶然にもハローワークで樽見鉄道の職員募集が目に止まり「夢を叶えることができる」と思い、2006年に入社しました。
「母方の祖父が本巣市の隣の出身でした。それも不思議な縁だなと思って」。都会で余裕なく働く人たちに違和感を感じていたこともあり、人がやさしく時間の流れがゆったりしている本巣市にすぐに馴染むことができたそうです。

入社当時を懐かしむように振り返る清水さん

初めてハンドルを握った日の緊張感を忘れずに

入社後は駅員として車両の基礎を学び、さらに運転士の資格に挑戦するため猛勉強を始めました。「文系の私にとって物理の問題には苦戦しました」と苦笑いしますが、先輩たちのサポートもあり、無事に合格。初めてハンドルを握った時に感じた「人の命を預かる緊張感」は今も鮮明に残っています。

2018年からは、広報や企画を行う営業企画課での仕事を任されています。出社するとメールをチェックし、取材対応や事務仕事だけでなく、イベント列車の運行時には、運転士としても活躍しています。

企画営業の仕事は事務作業も欠かせない日常業務


乗客の希望に応じてユニークなイベントを実行する樽見鉄道は、自転車を乗せて乗車し、下車後にサイクリングを楽しむ“サイクルトレイン”やD Jブースを設置して音楽を楽しむ“クラブトレイン”などを運行してきました。特に玩具メーカーのタカラトミーとコラボした「プラレール列車」は、子どもたちに喜んでもらおうと内部にまでこだわりが詰め込まれています。

清水さんが企画して実現したプラレール列車

市内外、県外からもこれを目当てに来るお客様も多く、「もっと若い人に樽見鉄道を知ってもらいたい」という清水さんの思いが実りました。コロナ禍で中止になってしまいましたが、この車内で本物のプラレールを走らせるイベントをいつか実現させたいと考えています。

車内までデザインされたプラレール列車


また毎年、地元の薬草やしし鍋を味わうイベント列車を楽しみにしているファンも増えているとか。樽見鉄道オリジナルのグッズ開発にも力を入れていて、車両をプリントしたクリアファイルやユニークなパスケースなどもお土産物として人気を集めています。

清水さんが手掛けるグッズ
車両をデザインしたり、キャラクターにしたり、思わずかわいいと手にするお客さんも多いとか

「小規模な会社だからこそ、計画から実行までのスピードが速く、やりたいことを自由に挑戦させてもらえる」と仕事に向き合う喜びが伝わってきます。

人との距離があったかい 日常と非日常が交わる場所

「入社間もないころは、地名や場所を聞かれても知らないことばかりでしたが、今ではよく利用してくださるお客様の顔を覚え、寝ている高校生を乗降駅で起こすこともあります」と笑い、地元の人たちと近い距離感で温もりに触れる仕事だと実感しています。

運転から乗客対応まで運転士の仕事はたくさんあります


「ローカル線は、学生や高齢者など定期的な利用者の日常と、休日には観光客が全国から訪れる非日常がある場所です。そんな日常と非日常が交わる場所に携われるのは嬉しいです」と清水さんは言います。名古屋からわずか30分足らずで小さな“非日常”の旅を始められる樽見鉄道。最近は、一人旅の女性や親子の鉄道ファンなど旅のスタイルが多様化してきたこともうれしい変化です。


コロナ禍を経て、鉄道マンとしての胸の内

入社以来、「どんなことがあっても時間通りに運行すること」が鉄道マンの役割だと先輩たちから教わってきました。悪天候だからこそ頼られる鉄道。定刻に間に合うように、大雪になれば、始発に備えて深夜にラッセル車を走らせ、危険がないようスコップでホームや階段の雪かき作業をして乗客を安全に迎える。それが当たり前だと思ってきた清水さんにとって、新型コロナウイルスの影響でリモートワークや学校閉鎖が長引き、無人で走る車両を見るのはつらい経験でした。

コロナが落ち着き始めた2022年、団体客は少ないものの、一般のお客様の数が平年近くまで戻り、ようやくいつもの光景が戻ってきました。コロナ禍を経て「ローカル線は観光のお客様だけでなく、地元の人に支えられて成り立っているのです」と気持ちを新たにしています。

樽見鉄道で働き始めて16年。清水さんを取り巻く環境や心境は大きく変化しました。「たまに大阪に帰ると、すぐにここへ戻りたくなります。このゆるさや利便性がいいんです」と笑います。

そんな清水さんが好きな風景は、鍋原駅と日当駅の間を流れる根尾川の眺め。「車からでは見られない景色です。秋の紅葉もいいですが、雪が降り始めると水墨画のようになるんです」。地元の人たちとの距離が近いローカル線だからこそ「鉄道マンとしてできることは何だろう」。そんなことを考えながら今日も笑顔で乗客を見守っています。


お得なフリー乗車券を発売!!
樽見鉄道は、8月1日からもとまる商品券2,000円分をセットにした
1日フリー乗車券を1,600円で発売します。
樽見鉄道大垣駅と本巣駅で購入できます。
1日たっぷり列車に乗って本巣のグルメを味わうお得な旅を楽しんでみませんか。


「もとまるの社会見学 ~みんなのよろこび みつけるも!~」

本巣市公式マスコットキャラクターもとまるが、
本巣市に関わる仕事や産業、それに携わる人々の姿を取材し、
そのあふれる「魅力」や「よろこび」を伝えていきます。

もとまる公式サイト もとまるのへや 

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