熊を殺す図

1997年9月22日(月)
くねくね曲がった道をひとり歩いていた。だあれもいない。昼間。黄色っぽくて乾いた感じだったから、秋か。
両手で杖に掴まっているおじいさんと会った。何か話したかもしれない、話さなかったかもしれない。サングラスを、おじいさんはかけていたように思う。フェンスを隔ててずっと顔を見合っていた気がする。

ある家に案内された。わたしの後ろにはピンクのスーツの若い女と、もうひとり、女の子がいたようだった。
わたしは喪服を着ていたようだ。

けっこうな段差を下りた。振り返ると、押入れの襖が半分くらいあいていた。わたしたち三人は押入の上の段から出てきたらしかった。
戸がちゃんと閉まってないのは嫌なことだと思った。自分で閉めたのか、戸は閉まった。

襖には面白くない絵が描いてあった。
鉄兜の兵隊たちが、吹雪の中で熊を撃ち殺す図。
胸から赤い血を飛び散らせ、両手が上がった形でのけ反る熊。

襖の部屋から雑然とした廊下─学校？─に出た。左側の壁にポスターが貼ってあった。描かれているのは戦前の列車内のようで、ほとんどの人が着物、ちらほら洋服の人もいたろうか。
その人たちはみな席から投げ出されていた、抱っこされていた赤ちゃんも。どの人も目が丸く見開いていた。
ただひとり、異次元にいるかのように本を読んでいるおじさんがいた。恐い顔。
大地震で滅茶苦茶に揺れている列車なのか？と思った。

廊下を過ぎると事務所のような部屋。
ここでわたしの後ろのふたりが急に元気になって、逆にわたしの影が薄くなった。