僕が夢だった仕事を半年で辞めた時の話。夢を追いかけている人、叶わなかった人に伝えたいこと

 今回の記事では僕がおよそ10年以上前に元々の夢であった宿泊業の仕事を辞めた時のことを書きます。
 およそ中学生ぐらいの時のことでしょうか、僕は当時呼んでいた漫画の影響でいつしかホテルマンとして働きたいと思っていました。今思えば大変失礼な話ではありますが、汗水たらして働く力作業的な職業よりモダンな空間で素敵なサービスを提供する世界に対して憧れを持っていました。

 そこで高校を卒業し宿泊業を学べる専門学校にも進学しました。しかしながら現実は甘くなく就活に差し掛かった際で何度もホテルの採用試験から落選通知を受けました。
 当時の僕は焦りつつどこか良い職場はないものかと探し、広島県宮島のとある旅館の求人に応募しました。今思えばこの時から怪しいと感じる部分はありましたが当時の僕は「一刻も早く内定を取って安心したい」、「面接で親切にして頂いてるこの会社が悪い会社ということはないだろう」と高を括っていました。
 具体的に言うと
・離職率が正直言うとかなり高い、なのでしっかりとした覚悟を持ってきてほしい
・求人の福利厚生欄に「全部」、辞めた社員がHPに飾られている、選べるシフト制(実際には選べない)
・高圧的な面接官(後の悪質上司)
+面接官が求人の内容はおろか初任給等の給料のことを把握していない
・面接後から結果を知らせるのが数か月後でその間に連絡をしても繋がらない
・内定が出ると在学中なのに働くことを求められる
と10年近く前のことでもおかしいことを書き出せるほどの悪質求人でしたが、ようやく夢が叶うかもしれない当時の僕(加えて言うと就職が決まらず焦っていた)にとってこれらのことは目に入りませんでした。そしてそれは大きな間違いなのです。

 内定をもらえた後に僕は会社から言われるがままに会社近くのアパートに引っ越しをすることになりました。
 求人では社員寮ありと書いていましたがその時点では住めなかったので宮島島外にある場所へ引っ越しをして勤務することに、そして初勤務では
「これが仕事ね、うちは8時間勤務の人は休憩時間なしだから」
「着替え場所やロッカーはないからトイレで着替えて」
と無造作に言われた事を覚えています。

 慣れないながらも食事の給仕をやりだす僕でしたが求められる内容がかなりハードでした。
 そして次の日からは朝の始発船で旅館に向かい、朝食の準備や客室セットなどに入ることとなります。

 百聞は一見に如かずという言葉がありますが、聞いていた話よりまずハードだと思ったことは時間があまりにも不規則かつ長時間の拘束と言うことでした
 朝5時に起きて出社し朝食の準備、給仕、片付け、その後は旅館内のカフェや清掃などがあります。もちろん客室の準備まで全てをやらないといけませんでした。
 入って1~2か月の頃でしたか、そのカフェの清掃で窓にホコリがあるのを指ですくって嫌味まで言われました。
(自分なりに頑張ってはいるがまだ頑張りが足りないのであろう)と思うこともありましたが、そういった自責の念すら悪質な会社や上司は利用してきます。

 先の面接官であり上司(仮名・鈴木)はそういう人の気持ちを踏みにじり労働させることを良しとする人間でした。
社員への暴行暴言はもちろん、労基法を無視することなど当たり前のようにやってきます。具体的に書くと
・休憩時間に休むなんて、シフトが終わったからといって帰るなんてありえない。自分から返上して働けと強制する
・僕の昼食を勝手に没収する
・他の社員が見ている中「彼女(当時僕が付き合っていた恋人)の写真を見せろ」「トイレへ行きたいなら大か小かを言え」と数々の理不尽な発言
・「お前なんか辞めればいい」、「本当はお前など心臓発作を起こすぐらい追い詰めることが出来るが手加減してそうしないだけだ」と発言
と氷山の一角ではありますが現代社会では一発で労基署から処罰を受けるようなことが当時起きていました。

 労働環境も劣悪でサービス残業をさせられ、昇給やボーナス等も当然有りませんでしたがここでワンポイント特筆します
 それはブラック企業においては「みんなこうして辛い中我慢して頑張っている」「そうした我慢の姿勢こそ会社員として模範とするべきだ」とされることです。実際に僕もそう言われました。
 これは今(当時もありましたが)でいうところの『やりがい搾取』に該当します。やりがい搾取とはやりがいや働く上での充実感を盾にして従業員に対し長時間勤務や低賃金を強制することを指します。理不尽を押し付ける詭弁とも言えるでしょう。繁忙期にはあまりの多忙さに倒れることもありました。

加えて言うとブラック企業にあることとして洗脳行為があります。劣悪な環境を疑われると会社として困るので一般論と現状の話をすり替えることをしてきます。
例えば「夢、目標のためには努力することも必要だ」「上司の言うことは聞くべきだ」と言いあたかも正論のように見せかけて現状から目を逸らさせることをしてくるのです。
この旅館や鈴木においても「こんなに辛い中お前に対して仕事を教えることの何とありがたいことか、お前には分からないだろう。こんな良い会社は他にないんだぞ」「職場近くに引っ越すのは当然のこと、費用負担は当然自分持ち(事前にそのことは知らせていない)」など、挙げ出していけばキリがありません。

こうした時に考えてほしい、少なくとも僕が気づいたのは
・本当にこの職場や環境じゃないとダメなのか?
・相手の言うことに具体的な根拠や証拠があるのか?
・そもそもそれが理不尽を押し付ける、こちら側が被る理由になるのか?
・コンプライアンスは守られているのか?
・他の会社と比べてどうなのか?
と言う話です。令和現在とはいえ「夢や目標」などのお綺麗な言葉を悪用して若い人達を利用する会社は現在にもあります。もし仮にそうした会社に勤めてしまった場合は一刻も早く離れないといけません。でないと取り返しがつかないことになります。

劣悪な環境で働きながら約4〜5ヶ月ぐらい経った時でしょうか。
その時に「会社近くに(宮島島内)引っ越さないのであれば正社員として雇用しない」という出鱈目も言われ、本格的に辞めるかどうか、会社に対して信用が0の頃に言われたことです。
「アイツなんか○○(僕の名前)なんか早く辞めちまえば良いんだ」と鈴木から目の前で嫌味を言われました。鈴木はおそらく一緒にいた社員とふざけて軽口を言ったつもりなんでしょう、あるいは「この言葉を糧に頑張りなさい」と都合の良い自分勝手をしたかったのかもしれません。
どちらにしても僕はその言葉を聞き、その日の業務終了後で退職する旨を責任者へ伝えました。
心の中で「こんな腐った環境なんかいち早く抜け出さなければならない」という感じです。

退職のことを伝えた後に鈴木からいわゆる引き留めをされました。もっともその内容は「あなたのことが必要だからどうか残ってくれませんか?」というものではなく「育ててやった恩を返さない恥知らずめ、俺は本当はお前に対し目をかけてやったのに、すぐ退職を取り消しなさい」と言う高圧的なものです。
こんなに良い環境なのに、みんな辛い中頑張っているのに、何で楽をしているお前が辞めることができるのか?という話をされました。
ですが当時もう辞めるの一点張りを通して退職まで押し切りました。
書いた内容については本当に氷山の一角でありますがこれが僕が夢だった宿泊業を半年で辞めたことの経緯です。

ここからは夢を追いかけている人や夢が叶わなかった人に対して伝えます。

夢や目標、それらを叶えるのは頑張るだけではとても難しいです。どこかで妥協したり、諦める決断も必要な場合があります。
そしてもし夢を諦めないのであればその勇気すらをも利用しようとする悪魔のような人間もいます。
「仕事が向いてるかというのはな、人生最後になってようやく分かるものなんだ。それを半年近くしか働いてないのに諦めるお前がなんだ?」という鈴木の引き留め言葉がありました。
「それはあなたの勝手な詭弁であり、こちらが従う義務も信じる必要性もない」「そう言う言葉は法律を守った上で、きちんとした証拠と一緒に言いなさい。ブラック企業なんかが耳障りのいい言葉と理不尽の押し付けをすり替えして使っていい言葉ではない」と今の僕であれば反論するでしょう。
ですが社会人経験の少ない方であればそうした理不尽を鵜呑みにする場合があるのです。
もしあなたが夢を追いかける中で苦労や壁を乗り越えないといけない場面に差し掛かったら、その部分を考えてください。
本当にこの理不尽は必要なものなのか?そうまで冷酷な世界を生き抜いて叶えたい夢なのか?と言うことを考えてほしいのです。

このあと僕はきちんと会社を辞めて人生をやり直しました。一年程度、派遣社員としてフリーターをすることもありましたが後に正社員として資格や職歴、経験を得ました。給料は多くありませんでしたがボーナスも貰えて生活レベルも上がりました。
夢を諦めるのはとても辛いことです。僕も仕事を辞める時に何も思わなかった訳ではありませんし、現在でも履歴書に当時のことをわざわざ書いて面接の時に説明する必要もあります。当時の考えの甘い決断が今も尾を引いているのです。さらに言えばどんな悪質企業であっても、仕事の能力不足であればそこを選ぶしかない場合だってあるのです。

会社を今すぐ辞めなさい、少しでも辛ければ逃げてください、と言うことを言っているのではありません。
夢を追いかける中でそうした理不尽、悪質な環境にあればすぐ逃げること。
その前にきちんとよく下調べをして「ここまでやれば大丈夫だろう」と言う段階まで仕事探しをしてほしいということです。アルバイトでもいっぱいして他社と見比べるのも良いことだと思います。
それでもなおブラック企業に入ってしまったと思った時には、起きたことを紙やノートに書いて自分で見直してみてください。それが本当に理不尽なことか、あるいは自分の失敗が故の出来事なのか、判断がつかなければ他の人にも見てもらってください。

人生には取り返しのつかないことがたくさんあります。もちろん職歴やブラック企業に入ったことだってそれに該当します。
ですが取り返しのつく、頑張ればやり直せることだってたくさんあります。夢をあきらめて他の仕事を選ぶ妥協だって立派な決断の一つなのです。もちろんそれでも叶えたい夢のために努力することは素晴らしいこです。

最近では退職代行サービスの流行もあってか会社を辞めたり辛いことから逃げると言う選択肢を取るケースが増えて来ていると感じます。
逃げることは簡単でもやり直すのは難しいです。ですがその内容があからさまに理不尽であったり、悪質なものであれば一刻も早く逃げるべきということですね。

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んだ方の夢や目標に対して少しでも糧になれば幸いです。

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