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『ハッピー・デス・デイ 2U』:2019、アメリカ

 車で目を覚ましたライアンが大学の寮に行くと、ルームメイトのカーターがツリーとキスしていた。カーターに追い払われたライアンは、理学部の仲間であるドレーとサマーから電話で量子力学研究室に呼び出された。ライアンが研究室に行くと、ドレーたちは昨日の深夜に強力なエネルギーが観測されたことを教えた。
 そこへ学部長が来ると、ドレーとサマーは逃げるように去った。学部長は卒論用にライアンたちが作った装置について、「停電を4回も起こし、大学中の電球を割った」と激怒していた。彼は研究の中止を通告し、「ボナー教授に伝えた。6時に没収する」と告げて去った。

 ライアンが落胆していると、今の彼を背後から撮影した写真がスマホに送られて来た。送り主を見つけようとしたライアンは、第2研究室に入った。そこへドレーが来るが、彼は送り主ではなかった。直後に仮面の人物が現れ、ライアンを刺した。
 ライアンは車で目を覚まし、同じことが繰り返されていることに気付いた。困惑しながら寮に到着した彼は、カーターとツリーに事情を話した。ツリーは自身の体験を語り、「ループは閉じたはずなのに、貴方に移った。閉じないと同じ日を繰り返す」と説明した。

 ライアンは信じようとしなかったが、ツリーは殺された場所へ案内するよう要求した。カーターも含めた3人は第2研究室に行くが、犯人の姿は無かった。ツリーはライアンが「シシー」と名付けたシシュポス量子冷却反応器を作成したこと、18日深夜0時1分に有望なデータを得たと証言したことから、「シシーのせいでタイムループが発生した」と確信した。
 ライアンはツリーから何度も死ぬことになることを聞かされ、顔を歪めた。するとカーターは、安全な場所でやり過ごそうと提案した。

 カーターがツリーやライアンたちを連れて行ったのは、バスケットボールの試合会場だった。カーターは「大勢なら安全だ」と告げるが、サイレンと共に避難指示が出た。ライアンは避難の途中でツリーたちと離れてしまい、仮面の犯人に襲われた。
 そこへツリーが駆け付け、犯人を殴り倒して気絶させた。仮面を外したツリーは、犯人がライアンと瓜二つだったので驚いた。ツリーたちは2人目のライアンを縛り、量子力学研究室へ連行した。

 2人目のライアンは目を覚ますと、「ループを閉じるはずが、並行時空に入った。お互いに危険だ。彼が問題を大きくする。早く殺せ」とツリーとカーターにライアンの殺害を指示した。ライアンが「こいつを殺せ」と2人目を始末するよう要求するので、ツリーたちは困惑する。ライアンは「自分でやる」と言い、シシーを起動させようとする。
 2人目のライアンは「止めろ」と叫ぶが、ツリーたちは戸惑うだけだった。研究室に来たドレーとサマーは、2人のライアンを見て思考停止した。そこへ学部長が警備員を引き連れて現れ、シシーを止めるよう要求する。ライアンが警備員に抵抗してシシーを起動させると、ツリーたちは吹き飛ばされた。

 ツリーが目を覚ますとカーターの部屋にいて、18日の朝だと知る。彼女は憤慨し、ライアンに「シシーを動かして問題を解決する方法を考えて」と詰め寄った。ループを閉じる前に殺される問題を処理するため、ツリーはカーターとライアンを伴って女子寮へ戻った。するとダニエルは帰っておらず、ロリはケーキを用意していなかった。
 食堂に移動したツリーから話を聞いたライアンは、並行次元にいるのだと解説した。そこにダニエルが現れ、ツリーは彼女がカーターと付き合っていることを知ってショックを受けた。しかもダニエルはツリーが知っている彼女と違い、チャリティー活動に熱心だった。

 ツリーは父親のデヴィッドから連絡を受け、誕生日を祝ってくれる彼の元へ赴いた。すると母のジュリーが生きていて現れたので、ツリーは感激して抱き付いた。ツリーは量子力学研究室へ行き、シシーで元の次元に戻そうとしているライアンたちに「中止よ。気が変わった」と告げた。
 夜、トゥームズが捕まったニュースを知ったツリーは、病院へ赴いて始末しようとする。しかし見張りの警官に見つかり、手錠を掛けられてしまう。そこへ仮面の人物が現れ、警官を殺害した。

 ツリーは手錠のままで逃亡し、エレベーターでロリと遭遇した。ロリはツリーに、トゥームズを手術室へ運んだことを教える。犯人は電源を切ってロリを殺害し、ツリーは逃亡を図るが屋上から墜落死した。
 カーターの部屋で目を覚ました彼女は、前回と同じ次元のままだと知った。ツリーは量子力学研究室にカーター&ライアン&ドレー&サマーを集め、「この次元に残る必要がある」と告げてループを閉じる方法を考えるよう要求した。

 ライアンやドレーたちは、何度も試して正しいアルゴリズムを見つける以外に手は無いが、経過を記憶する方法が無いと告げる。説明を聞いていたカーターは、ツリー自身が動く記憶装置になることを提案した。ツリーが「殺人鬼に何度も殺されろと?」と言うと、ドレーは「自殺すればいい。その方が楽だ」と軽く告げた。
 ツリーは仕方なく自殺によるループを繰り返し、見た出来事を細かく記憶した。しかし時計台から飛び降り自殺してループした彼女は、カーターの部屋で目を覚ました直後に気絶してしまった。

 ツリーが目を覚ますと病室にいて、カーターが心配そうに寄り添っていた。両親も向かっていることを聞かされたツリーは、「ダメ、ここは危険よ」と焦る。数秒の停電が終わると、病室にグレゴリーが現れた。彼は「面会時間は終了だ」と告げ、カーターを帰らせた。
 ツリーはグレゴリーと話し、彼の講義を取っておらず、不倫関係でもないことを悟った。もうすぐ9時半になることを知った彼女は、グレゴリーに「ロリが殺される。手術室に行かせちゃダメ」と話す。「誰のことだ?」とグレゴリーが言うと、ツリーは「奥さんは知ってるわよ」と述べて病室から追い払った。

 ツリーは病室を抜け出し、警官を昏倒させて拳銃を奪う。彼女が手術室へ行くとロリは殺されており、仮面の人物が背後から忍び寄った。ツリーが射殺して仮面を外すと、正体はトゥームズだった。しかし仮面の犯人は別にいて、ツリーは襲われる。
 ツリーは可燃性ガスに発砲し、犯人を道連れにして爆死した。カーターの部屋で目を覚ました彼女は研究室へ行き、難解な方程式を完成させた。ライアンはシシーを準備し、「元の次元に戻るか、ここに残るか」と決断を迫る。ツリーは全く迷わず、「残るわ」と断言した。

 ライアンはシステムを充電するが、すぐにシシーは停止してしまう。ライアンが調べると、ハードにウイルスが混入していると判明した。「手動での再入力に時間が掛かる」とライアンに言われたツリーは、急ぐよう要求して研究室を去った。
 追って来たカーターが「これでいいのか?今夜の犠牲者は?ループを閉じたら、そのままだ」と話すと、ツリーは「私は生き続けないと」と言う。「身勝手すぎるよ」と批判された彼女は、「私だって辛いの。貴方かママか、選びたくない」と自分を擁護した。

 カーターから何のことか訊かれたツリーは、向こうの世界で交際していたことを教えた。そして彼女は、「ここではママが生きてる。ママを失いたくない」と話す。カーターは「一度失っただろ。否定したら全てが嘘になる。他人の人生を生きるのと同じだよ」と諭すが、彼女は考えを変えずに立ち去った。
 両親の元へ赴いたツリーは、出来るだけ病院から離れるよう頼んだ。車で移動している時、ジュリーが昨年の誕生日の思い出を語ると、ツリーは「私じゃない」と漏らした。カーターは仮面の犯人を倒すため、病院に赴いた。ツリーは両親と共に、モーテルにチェックインした。

 テレビのニュースを見たツリーは、ロリと警官が犯人に殺されたこと、カーターが犯人と格闘して命を落としたことを知った。ツリーはライアンに電話を掛けてシシーの起動を停止してもらおうとするが、繋がらなかった。ツリーは両親の車を飛ばして変電所に突っ込み、停電を起こしてシシーの起動を阻止した。爆死したツリーはカーターの部屋で目を覚まし、研究室で計算式を完成させた。
 彼女はライアンに、元の世界に戻ることを継げた。そして「やることがあるから少し待ってて」と頼み、寮へ戻った。彼女はロリにグレゴリーとの不倫を終わらせるよう忠告し、「いつでも変われる」と告げる。ツリーはダニエルに謝罪しようとするが、ニックを部屋に連れ込んでいたので立ち去った。そしてツリーは別れを告げるため、母の元へ赴いた…。

 脚本&監督はクリストファー・ランドン、キャラクター創作はスコット・ロブデル、製作はジェイソン・ブラム、製作総指揮はクーパー・サミュエルソン&ジャネット・ヴォルトゥーノ&サムソン・マック&アンジェラ・マンクーゾ&ジョン・バルデッチ、共同製作はベアトリス・セケイラ&ライアン・トゥレク&ジェニファー・スカッダー・トレント、製作協力はエリン・ヴィタリ、撮影はトビー・オリヴァー、美術はビル・ボース、編集はベン・ボードゥイン、衣装はホイットニー・アン・アダムス、音楽はベアー・マクレアリー、音楽監修はンドレア・フォン・フォレスター。

 出演はジェシカ・ローテ、イズラエル・ブルサード、レイチェル・マシューズ、スティーヴ・ジシス、スラージ・シャルマ、チャールズ・エイトキン、フィー・ヴ、ルビー・モディーン、サラ・ヤーキン、ローラ・クリフトン、ミシー・イェーガー、ジェイソン・ベイル、カレブ・スピルヤーズ、ジミー・ゴンザレス、ピーター・ジェイムズJr.、ロブ・メロ、ケネス・イズラエル、ジェームズ・W・エヴァモア、ジョニー・バランス、テネア・イントリアゴ、リンゼイ・スミス、トラン・トラン、ジジ・エルネタ、ブレイン・カーン3世、ブレンダ・カーリン、カレイラ・スミス、ブレイディー・エドウィン・ルイス他。

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 2017年の映画『ハッピー・デス・デイ』の続編。監督は前作に引き続いてクリストファー・ランドンが担当しており、今回は脚本も務めている。
 ツリー役のジェシカ・ローテ、カーター役のイズラエル・ブルサード、ダニエル役のレイチェル・マシューズ、グレゴリー役のチャールズ・エイトキン、ライアン役のフィー・ヴ、ロリ役のルビー・モディーン、ステファニー役のローラ・クリフトン、ジュリー役のミシー・イェーガー、デヴィッド役のデヴィッドらは、前作からの続投。他に、ドレーをサラ・ヤーキン、学部長をスティーヴ・ジシス、サマーをスラージ・シャルマが演じている。

 今回は前作で小さな扱いだったライアンがオープニングに登場し、「彼が寮に赴いたらカーターがツリーとキスしていて追い払われる」というシーンが描かれる。これは前作のラストシーンを、ライアンの立場から描いた形になっている。
 そのままライアンがループする展開に入るので、「まさか今回は彼が主役なのか」と思ってしまう。だが、すぐにツリーも関与し、彼女がチョイ役扱いでないことは明確になる。そして彼女が再び18日の朝に戻されると、ハッキリとした形で主役の座を奪還する。

 ただし、ツリーが別次元に飛ばされると、犯人の目的も犯行動機も大きく変化することになる。そもそもの世界では、犯人がライアンを狙っている。しかし別次元に飛ぶとライアンは殺人事件と全く絡まず、ツリーが標的になる。
 そもそもの世界だと犯人は別次元のライアンだが、もちろんツリーを殺そうとするのは彼じゃない。ここは「ライアンの物語」から始めて「ツリーの物語」に戻すために、ちょっと上手く処理できていないかなと。

 前作を見た人なら百も承知だろうが、クソビッチだったツリーは、すっかり変身している。しかしシシーのせいで18日の朝に戻されたことを知った途端に、ツリーは前作の前半を遥かに上回るクソビッチになる。
 温暖化防止の署名を求められると、ボードごと奪って投げ捨てる。男子学生たちに向かって、狂ったように絶叫する。ティムを見つけると、向こうが話し掛ける前に「ゲイよね」と冷たく言い放つ。酷い女だけど、素直に笑えるギャグシーンになっている。

 1作目では、「ツリーが犯人を見つけるために何度も殺されてタイムリープを繰り返す」という手順が、ギャグとして描かれていた。今回は「ツリーが見た出来事を記憶するために自殺を繰り返す」という手順が、同じような演出になっている。
 1作目では様々な殺され方をネタにしていたが、今回は自殺の方法を笑いにしているわけだ。前作と同様に、「どうせループするから」ってことで、ツリーが水着姿のままパラシュート無しで飛行機から飛び降りるシーンもある。

 前作では停電の原因が解明されないまま終わっていたが、今回はシシーが理由だったことが描かれ、そこを利用して話を作っている。前作をフリのように使い、同じパターンを使ったり違いを付けたりすることで、ギャグを作ったりストーリーを積み上げたりしている。
 前作で本筋には大きく絡まなかった要素が、今回は大きく扱われているケースもある。その最たる物が、「ツリーが母と死別している」という要素だ。前作ではループや殺人と直接の関係が無かったので、極端に言えば別に無くても成立する要素だった。しかし今回は、そのことがツリーの行動に大きな影響を与えている。

 前作はB級スラッシャーかと思いきや、タイムリープ物の要素が組み合わされていた。コメディーの要素もあり、ツリーとカーターの恋もあった。そこに今回は、パラレルワールドの要素が追加されている。
 主人公がライアンに交代するのかと思いきや早い段階でツリーに戻るが、それだと前作と同じことの繰り返しになってしまう。そこで、同じSFの中でジャンルを変えているのだ。そしてパラレルワールドに入ることによって前作の展開は踏襲されないことが確定するので、まるで先が読めなくなっている。

 さらに本作品は、「前作の要素にパラレルワールドが追加される」というだけでは終わらない。なんと「ツリーと母との別れ」という要素を使い、「感動の家族ドラマ」にまで発展している。
 ツリーがループを閉じて今の次元に留まると決めた時、カーターは犠牲者が出ることを指摘して無責任だと批判する。ツリーが「ママを失いたくない」と主張すると、カーターは「苦しみや悲しみがあって、今の君がある。人には無いチャンスもある。別れを言える」と語る。

 モーテルのシーンでは、ツリーが「パパのいない人生を想像したことがある?パパといることで誰かを失うとしたら?」と問い掛けて、ジュリーが「辛い決断を迫られる。そんな人生よ。過去に引きずられても、未来が呼んでくれる」と話す。母との生活を続けたいツリーは、別次元に留まることを選ぼうとする。しかし自分が別次元の母との思い出を共有していないと気付き、その考えは変化する。
 そして彼女は元の次元に戻ることを決め、別れを告げるために両親が待つカフェに向かう。彼女は真実を言わずにジュリーへの愛を告げ、誕生日を祝ってもらう。このシーンは、普通に家族ドラマとしての感動的なシーンになっている。だからこそ、その直後の「学部長がシシーを没収する」という形でツリーが別次元へ戻れなくなる手順は、ややテンポが悪くて残念。

 どうせ前作を見ている人が大半だろうからネタバレを書いても平気だろうとは思うが、前作の犯人はロリだった。そんなロリが、別次元ではツリーを助けて命を落とす。そしてツリーはロリを救うために病院へ駆け付け、犯人と戦う。ここは前作を利用した上手いシナリオになっている。犯人の動機は今回も弱いけど、そこはまあ良しとしておこう。
 ただ、最後に「政府機関がループの実験を始めることになり、ツリーがダニエルを使うよう提案する」ってのは、ちょっとなあ。ダニエルは問題もある女性だけど、そこで生贄にするほど悪い奴でもないので、ちょっと可哀想に思えるなあ。

(観賞日:2022年10月2日)

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