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『シャークネード エクストリーム・ミッション』:2015、アメリカ

 フィン・シェパードが嵐を気にしながら走っていると、シークレットサービスのデヴローとアーガイルが車で迎えに来た。フィンは送迎車に乗って妻のエイプリルに電話を掛け、車が故障して遅れていることを告げた。中部大西洋沿岸地域には、注意報が発令されていた。
 渋滞に巻き込まれたフィンは車を降り、走ってホワイトハウスへ向かった。彼は警備員に制止されるが、大統領首席補佐官のヘイズが来て中に入れてくれた。父が来ているかどうかフィンが訊くと、ヘイズは連絡が取れないことを告げた。

 妊娠しているエイプリルは母のメイに付き添ってもらい、オーランド女性健康センターを訪れていた。気象局は大型の嵐がワシントンを直撃すると予想しており、NASA気象衛星センターは市民に避難を呼び掛けた。フィンは式典に出席し、ロビンス大統領から自由勲章を授与された。
 授賞式が終わると、フィンはバック副大統領や小説家のジャッキー・コリンズなど様々な人に話しかけられた。ニューヨーク市長もホワイトハウスに駆け付け、黄金のチェーンソーのトロフィーをフィンに贈った。フィンは義弟のマーティンにも祝福され、妹のエレンが飛行機を嫌って来なかったことを告げた。

 フィンはシャークネードが到来すると確信し、ロビンスに気象局への連絡を進言した。フィンが予想した通りにシャークネードが発生し、ホワイトハウスも襲われる。フィンは邸内に侵入したサメを黄金のチェーンソーで始末し、ロビンスたちと共に危機管理センターへ向かう。しかし地下にもサメが入り込んでおり、護衛の面々は全滅する。
 フィンが「戦うんです」と言うと、ロビンスは武器庫へ案内する。2人は銃を手に取り、次々にサメを始末した。ワシントン記念塔がハワイトハウスに突き刺さって崩壊させるが、フィンとロビンスは間一髪で脱出した。マーティンとバックも逃げ出しており、フィンたちと合流した。

 次の日、エイプリルとメイと共に、娘のクラウディアを伴ってユニバーサル・スタジオ・フロリダを訪れていた。メイはクラウディアに小遣いを渡し、友達のジェスと待ち合わせをしている彼女を見送った。
 フィンはエイプリルに電話を掛け、飛行機が全て欠航になったこと、レンタカーで向かうので到着が明日になることを話した。クローディアは従業員のバブスに声を掛けられ、VIPエクスプレスチケットを受け取った。彼女はバブスに案内してもらい、ジェスと合流した。

 クラウディアがジェットコースターに乗ろうとすると、ジェスは遠慮した。そこでクラウディアの隣には、ビリーという若者が座った。従業員のブルースが元気よく挨拶し、ジェットコースターが発進した。ジェットコースターから去る時、クラウディアは預けた携帯電話を忘れたが気付かなかった。
 フィンは家族の元へ向かう途中、必死で逃げる人々と謎の装甲車両を目撃した。シャークネードに襲われた彼は吹き飛ばされそうになるが、車に戻ってチェーンソーでサメを退治した。

 装甲車両からノヴァが現れ、チェーンソーでサメを殺してフィンに挨拶した。彼女はルーカスという相棒と組み、シャークネードを追って研究していた。「ビースト」と名付けた車内には、調査のための設備と武器が揃っていた。
 協力を要請されたフィンは、「妻がオーランドで待ってる」と断った。するとノヴァは嵐の中心が南へ向かっていることを考え、送っていくと申し出た。ルーカスはフィンとノヴァに、複数の嵐が合流する可能性を語った。

 ユニバーサル・スタジオ・フロリダのプールにサメが落下し、エイプリルは襲われる従業員を救おうとするがメイが引き留めた。フィンは車内でテレビを見て、東海岸沿岸の全域にシャークネード発生の緊急事態宣言が出たことを知る。
 彼はエイプリルに電話を掛け、知り合いの車に乗っていると話す。すぐにエイプリルは、その知り合いがノヴァだと察知した。サメがプールに降って来たと聞かされたフィンは、娘と安全な場所に避難するよう指示した。

 ジェスはビリーの友人であるチャドにナンパされ、一緒にアトラクションへ行く。クラウディアとビリーも同行し、会話を交わす。フィンは橋の崩壊で行く手を塞がれ、ノヴァ&ルーカスと共にチャールストン空軍基地へ行く。彼はゴットリーブ大将に会い、訓練用の戦闘機を貸してもらう。
 ロック軍曹に案内されている最中、シャークネードが基地を襲う。ルーカスはノヴァに別れを告げ、ゴーストに戻る。そこへサメが襲い掛かり、ルーカスは両手足を食い千切られた。彼は最後の力を振り絞ってゴーストの爆破スイッチを押し、何匹ものサメを道連れにして死亡した。

 フィンとノヴァは戦闘機で離陸し、NASCARのレースが開催されているデイトナ・インターナショナル・スピードウェイの上空を飛ぶ。そこへシャークネードが来ると、フィンは外部の燃料タンクを中心に落とすようノヴァに指示した。
 タンク投下でシャークネードは消えたが、一匹のサメが戦闘機に激突して制御不能となってしまう。戦闘機はユニバーサル・スタジオ・フロリダの川に不時着し、フィンとノヴァは脱出した。

 ノヴァはアプリを使ってクラウディアの携帯の場所を突き止め、メイに隠れるよう告げて捜索に向かう。彼女はジェットコースターへ行くが、クラウディアはいなかった。クラウディアたちはアトラクションを楽しんでいる最中、サメに襲われる。観客は慌てて外へ逃げ出すが、ジェスはサメに襲われて死んだ。
 フィンはシャークネードのサメをかわしてジェットコースターに辿り着き、エイプリルを発見した。彼はブルースから携帯電話を受け取るが、コースターに固定されたまま吹き飛ばされた。

 フィン、エイプリル、クラウディア、メイ、ビリー、チャドは合流し、ユニバーサル・グローブに避難してシャークネードをやり過ごした。ノヴァはフィンたちに、複数の嵐が合流すれば東海岸が全滅すると話す。それを防ぐためには、百キロ近い高さで太陽より熱い火柱を作る必要があった。
 NASAの協力が必要だと聞いたフィンは、父のギルバートに連絡を取った。フィン、エイプリル、クラウディア、ビリーは展示してあったレーシングカーに乗り込み、ギルバートの元へ向かった。

 フィンはレストランへ行き、ギルバートと会った。かつてフィンはギルバートはオマリーの店を譲渡され、ファストフード店に改装した。そのことに腹を立てたギルバートは、店を戻して今の状態に改装していた。
 フィンは竜巻の中心部に熱を加えて気圧を安定させ、落ちてもいい場所に誘導する計画をギルバートに説明した。フィンは「ブースターとエンジンで嵐を鎮める火柱を作れる」と言い、軍が所有する極秘シャトルを使わせてほしいと頼んだ。

 ギルバートは大統領に話を通すようフィンに指示し、NASAへ案内して長官のブライアンに会わせた。準備不足だと聞いたギルバートが1人でシャトルに乗ろうとすると、フィンは「シャークネードのことを知らないだろ」と同行を要求した。
 エイプリルは引き留めようとするが、フィンが説得した。シャークネードがシャトルに接近する中、エイプリルは足場から落ちそうになった。エイプリルを助けたフィンは、打ち上げ時間が迫ったので彼女も連れて行くことにした…。

 監督はアンソニー・C・フェランテ、脚本はサンダー・レヴィン、製作はデヴィッド・マイケル・ラット、製作総指揮はデヴィッド・リマゥイー、共同製作はデヴィッド・L・ガーバー、製作協力はクリス・レジーナ、製作監修はディラン・ヴォックス&マキシミリアン・エルフェルト、撮影はベン・デマリー&ローラ・ベス・ラヴ&スコット・ウィーラー、美術はケイトリン・レインジェン&カリーセ・ウォレス、編集はクリストファー・ロス、衣装はタイ・ロンバルディー、視覚効果監修はジョセフ・J・ローソン&エミール・エドウィン・スミス&グレン・キャンベル、音楽はクリス・ライデンハウア&クリストファー・カノ。

 出演はアイアン・ジーリング、タラ・リード、デヴィッド・ハッセルホフ、キャシー・スケルボ、ボー・デレク、マーク・マクグラス、フランキー・ムニッズ、ライアン・ニューマン、マーク・キューバン、ジャック・グリフォ、ブレア・ファウラー、マイケル・ウィンスロー、ミシェル・ビードル、Ne-Yo、クリス・ジェリコ、アン・コールター、メルヴィン・グレッグ、クリストファー・ジャッジ、グラント・イマハラ、ルー・フェリグノ、ロレンツォ・ラマス、キム・リチャーズ、ベンジャミン・ブロンク、ビル・イングヴァル、ジャッキー・コリンズ、シンディー・マーゴリス、ケリータ・スミス他。

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 シリーズ第3作。監督のアンソニー・C・フェランテ、脚本のサンダー・レヴィンは、共に3作連続での参加。フィン役のアイアン・ジーリング、エイプリル役のタラ・リード、ニュースアンカーのマット・ラウアー&お天気キャスターのアル・ローカーは、前作に続いての出演。ノヴァ役のキャシー・スケルボは1作目からの復帰で、マーティン役のマーク・マクグラスは前作からの続投。
 他に、ギルバートをデヴィッド・ハッセルホフ、メイをボー・デレク、ルーカスをフランキー・ムニッズ、クラウディアをライアン・ニューマン、マーカスをマーク・キューバン、ビリーをジャック・グリフォが演じいる。クラウディア役は、1作目ではオーブリー・ピープルズだったが、演者が交代している。

 前2作の高評価でまた予算が上がったのか、出演者の顔触れが前作よりさらに豪華になっている。「アサイラムが作ったテレビ映画のくせに生意気だぞ」と言いたくなるほど、無駄に豪華だ。
 前述の顔触れだけでも、TVドラマ『ナイトライダー』『ベイウォッチ』シリーズのデヴィッド・ハッセルホフ、ラジー賞で1980年代最低女優賞を受賞しているボー・デレク、TVドラマ『マルコム in the Middle』のフランキー・ムニッズ、TVドラマ『グッドラック・チャーリー』のライアン・ニューマン、大物実業家のマーク・キューバン、TVドラマ『超能力ファミリー サンダーマン』のジャック・グリフォという面々だ。

 クロージング・クレジットの表記順に従って、まずは本人役で登場する面々を挙げていこう。小説家のジャッキー・コリンズ、NASCARドライバーのジョーイ・ロガーノ、NASCARドライバーのブラッド・ケセロウスキー、政治家のミシェル・バックマン。小説家のジョージ・R・R・マーティン、ニュースアンカーのナタリー・モラレス、ニュースアンカーのサヴァンナ・ガスリー。
 テレビ司会者のキャシー・リー・ギフォード、テレビ司会者のホダ・コトブ、ラジオ・パーソナリティーのエルヴィス・デュラン。インターネット起業家のアレクシス・オハニアン、サブウェイのスポークスマンのジャレッド・フォーグル、NASA出身コメンテーターのジョージ・H・ディラー。これで全員ではなく、まだ他にもいる。

 続いて、本人役ではない面々の紹介に移ろう。ブライアン役は『ポリスアカデミー』シリーズのマイケル・ウィンスロー、アーガイル役はスポーツ・リポーターのミシェル・ビードル、デヴロー役はグラミー賞歌手のニーヨ。
 ブルース役はプロレスラーのクリス・ジェリコ、バック役は政治解説者のアン・コールター。フィンと写真を撮るシークレットサービスのバナー役は、TVドラマ『超人ハルク』のルー・フェリグノ。ロック役は『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』のロレンツォ・ラマス。

 バブス役はリアリティー番組『The Real Housewives of Beverly Hills』のキム・リチャーズ、基地のゲートを守るウォーレン軍曹役はTVドラマ『Zネーション』のケリータ・スミス、NASAディレクターのレジーナ役は元政治家のアンソニー・ウィーナー。
 ゴットリーブ役は、TVドラマ『スタートレック:ヴォイジャー』のティム・ラス。ホワイトハウスでフィンを制止する警官コンビは、不動産業者のレザ・ファラハンとプロレスラーのマリース・ウエレ。

 他にもテレビ司会者のジェリー・スプリンガー、ラッパーのレイ・J、マジシャンのペン・ジレット、スポーツコメンテーターのマックス・ケラーマン、ラッパーのジェラルド・“スリンク”・ジョンソン、歌手のクリス・カークパトリックなど。様々な分野の著名人が出演している。
 「昔の名前で出ています」って感じのメンツもいるし、ハリウッドの超大作とは月とスッポンぐらいの差があるキャストだけど、「アサイラムのテレビ映画」ってことを考えれば充分に豪華だ。ちなみに、俳優に限らず色んなジャンルから著名人を起用していること、その人選のセンスなど、何となく河崎実監督の作品に通じるモノを感じるね。

 予算の増加は、出演者以外の部分でも感じられる。前半の主な舞台となっているのはユニバーサル・スタジオ・フロリダで、大規模なロケを行っている。戦闘機を使ったスカイアクションが展開されたり、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイのレース風景が写し出されたりする。
 予算が前作から一気にアップしたことが、様々な場所でハッキリと分かるようになっている。ちなみに、宇宙を目指す展開に入ると、本物のNASAのシステム・エンジニアも出演していたりする。

 今回は物語が始まった時点で、既に嵐が迫っているという設定だ。前置きのようなモノが全く無いまま、開始から10分も経たない内からシャークネードが襲って来る。
 もうシリーズ3作目なので、どうせシャークネードが何なのかを視聴者は良く分かっている。なので余計な手間を省いて、さっさとメインイベントへ突入しているわけだ。その潔さには、賛同できる。ただ、そんなに早くシャークネードを出現させて最後まで持つのか、途中でガス欠を起こさないかという不安は感じる。

 タイトルバックの映像は、007シリーズのパロディーになっている。ジェームズ・ボンドなら拳銃を構えてポーズを取るが、フィンなので代わりにチェーンソーを構えている。その後も007シリーズのパロディーとして前編を貫くわけではないが、他の作品のネタは幾つか盛り込まれている。
 だけど、パロディー映画としての面白さがあるのかというと、答えはノーだ。パロディー方面での作業を、そんなに丁寧にやっているわけではないからね。ただ、それはアサイラム作品だから仕方が無い。どうせ1作目から見ているファンにしてみれば、このシリーズにパロディーとしての質の高さなんて求めちゃいないだろうしね。

 冒頭からワシントンがシャークネードに襲われ、記念塔やホワイトハウスが崩壊するという大惨事が起きている。だが、そのまま「フィンがシャークネードと戦って云々」という話を進めるのではなく、「シャークネードは過ぎ去って空は晴れ上がった翌日」のシーンに移る。
 ついさっきまで「シャークネードの到来でワシントンに甚大な被害が出た」ってのを描いていたのに、翌日になると「オーランドでは誰もシャークネードのことなんか気にせず楽しく遊んでいる」という様子が写し出される。そりゃあワシントンとオーランドは離れているが、構成としてユルいなあと感じる。でも、まあアサイラムだからね。

 このシリーズの特徴として、回数を追うごとに人間サイドの戦闘能力が上昇していくってことが挙げられる。それも、かなり人間離れした戦闘能力と言っていい。もはやフィンは完全に不死身の男と化しており、彼にとってサメは殺されるために現れる雑魚でしかない。
 一応はホラーというジャンルに分類されているが、フィンがサメに襲われるシーンに恐怖など微塵も無い。そこに感じるのは、ホラーではなくアクションとしてのテイストだ。

 今回は序盤から、フィンだけでなくロビンス大統領も高い戦闘能力を披露する。マシンガンを手に取り、サメを次々に軽く始末する。なぜ大統領がそんな戦闘力を持っているかなんて、真剣に考えちゃいけない。そういう荒唐無稽な描写当たり前のシリーズだし、全面的に歓迎すべきことだ。
 1年ぶりにフィンの前に現れたノヴァが、『マッドマックス2』にでも出て来そうな仮面の戦士になっているのも、華麗なバック宙でビーストの屋根から飛び降りるのも、これまた喜ぶべき描写だ。1作目のノヴァを考えれば、その変貌ぶりは異常と言えるが、その手のバカバカしさは大いに結構だ。

 戦闘機が不時着すると、脱出したフィンはパンツ一丁でムキムキな筋肉を見せ付け、ノヴァはブラと尻が半分見えるパンツだけのセクシーな格好を披露する。それまでは普通の格好をしていたわけだから、不時着した途端に2人の露出度が急に上がるのは、もちろん不自然でしかない。
 でも、わざとやっていることは明らかだし、その手のバカバカしいノリは大歓迎だ。ちなみに2人は露出度の高い格好を見せると、すぐに服を着ている。

 終盤に入ると、シャトルに乗ったフィンたちだけでなく、サメの群れも宇宙に現れる。「どうやってサメが宇宙まで飛来したのか、なぜ生きていられるのか」などと、真面目に考えてはいけない。「そういうバカバカしさに満ちたシリーズだから」ってことで、全面的に歓迎しておこう。そこを真剣に考えたら負けだ。
 で、そんなサメと戦うために、フィンはノヴァが用意してくれた武器を使う。それは御馴染みのチェーンソーだが、ライトセーバーのような光を放つ宇宙仕様になっている。

 フィンは宇宙服を着たままライトセーバー式チェーンソーでサメと戦うが、エイプリルが1匹に飲み込まれる。フィンは彼女を救おうと後を追って宇宙空間に飛び出すが、なぜか別の巨大サメに向かって特攻する。そしてサメの体内に突っ込み、そのまま大気圏に突入して地球へ降下する。
 サメから脱出したフィンは、別のサメの体内で出産したエイプリルと合流する。その直後、シャトルの破片がエイプリルの頭上から落下し、彼女が悲鳴を上げると「fin?」と文字が出て終幕となる。もちろん、4作目へ続くのである。

(観賞日:2019年5月3日)

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