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365日のわたしたち。

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365日。 自分にとってなんでもない1日も、 誰かにとっては、特別な1日だったりする。 反対に、 自分にとって特別な1日は、 誰かにとってどうでもいい1日だったりする。 い…
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2022年2月の記事一覧

【365日のわたしたち。】 2022年2月28日(月)

2月最終日。 一気に冬が過ぎ去ったかのように、今日は日差しがとても暖かい。 窓辺の私の席は、カーテンが風に遊ばれるために、直射日光が机に差し込んでくる。 ルーズリーフが反射してとても眩しい。 そう、もうあと1ヶ月と少しで、私は高校三年生を迎える。 受験一色になってしまうんだろうか...嫌だなぁ... そんな、他人事にみたいに自分の将来に思いを馳せながら、視線を校庭に向ける。 一年生か、二年生か。 ソフトボールをやっている。 グラウンドの奥の方では、男子たちが

【365日のわたしたち。】 2022年2月27日(日)

朝、ふとんからずり起きて、やっとのことでお茶碗にご飯をよそり、卵と醤油をぶち込む。 ボーっと、テレビの特集を眺めながら、スプーンでそれを口へと運ぶ。 食べ終わったら、再びベッドの上へ転げ込む。 もう結構は日は高いようだ。 カーテンの隙間から漏れた陽の光が、一本の眩しい筋で部屋を一刀両断している。 遠くで、子供たちの声がする。 また、急激な重さでまぶたが閉じかかってくる。 映像は、ベッドサイドに置いてあるリラックマを最後に捉えて、切れた。 どこか遠くで、子供の声

【365日のわたしたち。】 2022年2月26日(土)

久しぶりに念入りにファンデーションを肌に叩きつける。 最近流行りのアイラインの引き方も知らないから、 とりあえず、あの若かりし頃に身につけた技術を駆使して、少しだけ目尻を跳ね上げる。 準備にバタバタするのと同時に、 迫ってくるバスの時刻に、心臓がどきどきし始める。 久しぶりに会う友人たちは、どんな風に変わっているのだろうか。 「これ、お昼の離乳食。冷蔵庫の一番下の段に入ってるから。  レンジでチンしたら、冷ましてから、ちゃんと自分の唇で熱くないか確認してからあげてね。

【365日のわたしたち。】 2022年2月25日(金)

ついに始まってしまった。 朝のニュースでは、ロシアがついにウクライナへの侵攻を始めた、とアナウンサーが伝えた。 まさか、と思っていたことが起きてしまった。 つい先週までは、北京オリンピックに沸いて、 金メダルはいくつ、銀と銅はいくつ、と毎日数える幸せなニュースを伝えていたアナウンサーが、 今日は眉間に皺を寄せて、原稿を読み上げている。 ハッと我に返り、白米を持ち上げていた箸を口まで運ぶ。 実は、つい数日前に、なぜロシアがウクライナに侵攻しようとしているのかを、ま

【365日のわたしたち。】 2022年2月24日(木)

今ふと、少し前にテレビで流れていたCMを思い出した。 外回りの途中で、思いついたように海に向かう女性。 上司からかかってきた電話には、 「今日はもう戻らないと思います〜」 と、心ここにあらずな感じで返事する。 結局あれが何のCMだったのかは思い出せないのだが、 妙に羨ましく感じたのを覚えている。 でもそれは、あの15秒か30秒の切り取られた世界だからなんだろうな、と今になって思う。 きっと彼女は、 翌日会社に出勤したら速攻、上司に怒られるだろうし、 昨日やるは

【365日のわたしたち。】 2022年2月23日(水)

「じゃあ、さっき言われたこと確認したうえでもっかい練り直しね。そしたらミーティング設定しておいて。」 ぞろぞろと会議室から出ていく関係者を横目に、私は机の上に残されていった会議資料をかき集めた。 「先輩、これ。」 向こう側のテーブルに残されていた資料を、二年後輩の子が集めて持ってきてくれた。 「あ〜、ありがとう〜。」 会議前には至高の成果物に思えていた資料が、今やただのゴミ切れ。 このあとは、シュレッダー行き。 「私、お手洗い行ってから席戻るね。先帰ってていいよ。

【365日のわたしたち。】 2022年2月22日(火)

「ねぇ。生まれ変わっても私と結婚したい?」 彼の骨張った手をさすりながら、私は問いかけた。 若干乾燥気味の彼の手は、サラサラしていてとっても触り心地が良いのだけれど、きっとそのうち「ささくれ」放題になるだろう。 私は自分のカバンからハンドクリームを取り出して、彼の手の甲に絞り出す。 その手の輪郭を撫でるように、 なぞるように、 何度も何度も彼の手の上を往復する。 「やだよ。俺は絶対やだ。」 彼は窓の外を眺めながら、微かな息とともにそう答えた。 「俺は、お前に

【365日のわたしたち。】 2022年2月21日(月)

ハッと目が覚めた。 それまで、まぶたが重くて重くて、どうにも開けることができなかったのに。 まだ心臓がばくばく言っている。 夢の中で、母が父と離婚した。 キッチンに置かれた、ストッキングに同封されていたであろう厚紙に「裏を見て」と書かれていた。 夢の中の私は、それをひっくり返す。 「泣く泣くこの家を出ていくことになりました。 大丈夫。きっと練習すれば上手くなるよ。 上手くなると、楽しいよ。」 とサインペンで書かれた母からの置き手紙があった。 急いで別室にい

【365日のわたしたち。】 2022年2月20日(日)

薄い壁越しに、赤ちゃんの泣き声が聞こえる。 この世の終わりかと思うほどの叫び泣きに、ちょっとした不安が頭を掠める。 警察とかに、電話すべき...? 大家さんとか? せっかく取った有休の朝が、こんな悩みと動悸でスタートするとは、なんだか虚しい。 でも、自分が出勤したあとに毎日こんな泣き声が響いていたんだと想像したら、もっとやるせなかった。 こんなに不安になるのは、昨日見たニュースのせいだろうか。 一晩かけて自分の体温を染み込ませた布団のなかで、ぎゅっと体を丸める。

【365日のわたしたち。】 2022年2月19日(土)

となりで騒ぐ小学生とその親がうるさい。 スタバで宿題をやらせるって発想、ちょっとおかしくないか? やっと空いてる席を見つけたと思ったら、この席が空いていた理由がすぐに察せられた。 「だからぁ、30個のみかんを3日続けてもらったら、全部でいくつになるのってことじゃん、どういう式になるの!?」 「30個+3+3+3+、あ、途中でおばあちゃんが1個食べちゃったかも。そしたら減っちゃうね〜、わからないね〜。でへへ」 「ふざけてると、お母さん本当に怒るよ」 「やだよ〜ん」 「あん

【365日のわたしたち。】 2022年2月18日(金)

バッグの底で、一片のバラの花びらを見つけた。 あの日、どこかのタイミングで紛れ込んでしまったのだろう。 財布やらファイルやらに押しつぶされたその花びらは、傷つき、萎びて、所どころ茶色く変色していた。 こうなってしまえば、もうただのゴミなのかもしれない。 底にしっとりとへばりついた花片を、破れないようにゆっくりと剥がしていく。 取れた。 数日ぶりに陽の光を受けた花びらは、とても見すぼらしくて、でも、なんだか捨てるに忍びない気持ちにさせる。 家の花瓶に生けてある薔薇の花